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一兆年の夜 第二十一話 二つの星 進撃篇(終)

 午後十一時零分五十一秒。
 参花はリアクターの傷を手当てするものの、傷口は赦しを容れる事は叶わない。
「もう、いい。こ、れいじょうは、じ、かんの--」
「喋らないでくれないか、リアクターさん!
 僕が必ずリアクターさんを--」
「諦める事も大事でございますよ、弟君!」
「でも--」
 リアクターは僅かな力で参花の左手を右手で掴んだ。
「りかちゃん、のい、うと、おりよ。あきら、めて。
 わたしは、もう、つかれ、た」
「リアクターさん! こんな傷! こんな傷ウウ!」
 参花は必死に傷口を強く抑えるが、血は激流のように外へ流れてゆく!
「さ、いご、に、ゆき、ちゃん、としあ、わ、せに。
 わた、しは、いく、ね。む、ね、い、ちさ、ぁ、ぉ、ぉ……」
 その言葉と共にリアクターをゆっくりと眼を閉じた。永遠に。
「う、う、うわあああああああ!」
 参花は絶叫する--町中に響き渡るように!

 七月十二日午前十時五分四秒。
 場所は廃マンドロス町中央地区開化聖堂天同棟一の間。
 参花は塩蒔きを行っていた。
「わかったよ、エリオットさん!
 仲間に頼る事は自分に自信が持てない事を意味すると。
 だからこそ七と八の教えは仲間を死なせない為にはどれだけ自分を頼れるかということを示すんだね!」
「なあに独り言言ってるの?」
 出入り口には何時の間にか中条里香らしき女性が背中をつけて立っていた!
「あ、あなたは確か--」
「中条隊の隊長、里香よ!
 あーあ、これが狭間が楽しみにしてる弟君なのね!」
「そうだけどいまは塩蒔きで忙しいから帰ってくれない?」
「そうする!
 でも、これだけ置いて去るわ!」
 里香は手紙らしき物を床に置いて出て行く!
「狭間姉さんはよく放浪してたけど、あんなに礼を欠くのを友達に持ってるなんて!
 そんな事よりも手紙の続きを読まないと!」
 参花は手紙を取り出すが--
「これは……リアクターさんが吐いた血と昨日まで獅子型や姉さん達を死なせた獅子型との戦いでこんなに!」
 手紙は原形を留めず、内容さえ読めない状態だ!
(こんなのは罪深い! きっと棟一兄さんは僕に怒ってるよ!
 エリオットさんが命がけで考えた物を僕は無下にしたんだ!
 こんなの、こんなの!)
 参花は後悔する!
「心を強くしろとエリオットさんがいくら教えてくれても僕にはやっぱり無理だよ!
 僕はなんて弱い生命体なんだ! 天同を名乗る資格さえないよ!」
『それは思い込みだ! 俺に申し訳ないと思うなら里香が置いていった手紙を拾え!』
「え?」
 悲観的に考え込む参花に幻聴が聞こえた!
「誰の声? そ、それよりも床に置いた手紙って?」
 参花は畏れるようにその手紙を拾い、中を開けた!
「これは!」
 それは正にエリオットが渡した参花の手紙と瓜二つの手紙だった!
「まさか拾ってくれたんだね、里香さんは!」
 参花は出だしこそ異なるが、それ以降の内容は参花が持っていた物と同様だ!
『--それが出来たら次は破の教えに入ります。

 破の教え
 一・指揮官は常に強くあれ。
 二・仲間を元気づけろ。
 三・多数の銀河連合に勝負するな。
 四・天候を観察するべし。
 五・頭を狙え。
 六・全体を観察するべし。
 七・銀河連合の行動を観察するべし。
 八・働くな。
 九・考えを怠るのなら守の教えに戻って復習するべし。
 十・一の方に戻り順を追って繰り返す。

 以上の十を突き詰めよう。
 それが出来たら次は--』
 参花はそれ以降も読み続ける。
(エリオットさんの言いたい事の全体像は掴めない!
 でもこれだけは僕にもわかる!
 心を強くする事はどんなに無理な事にぶつかっても心さえ無事ならまだまだ強くなれる!
 そう僕に言いたいんだね!
 僕は弱い! 弱すぎて心まで弱くなってしまうよ!
 でも、そうじゃない! 僕は心だけは誰よりも強い!
 そう思い込んでやらないと死んでいった者達の魂を背負っていけない!
 そして--)
 参花は天井を見上げた!
「今でも僕を待つ雪を助ける事だって叶わない!
 僕は信じる! ユキはどこかで生き続けている事を!」
 参花の迷走する三日に終りを告げ、新たなる三日が始まる。







 未明。
「んん、ここは?」
 ユキが目覚めるとそこは血管が木が根を張るように乱雑した赤黒き場所。
「うう、に、匂う!
 頭が痛くなる匂い!」
 ユキは鼻を押さえようとするも手足は何かで縛られており、自由が利かない!
「コ、コノ! き、きつく縛っているわね!
 し、しかも裸にさせるなんて! 銀河連合はあたしと交尾する気?」
 腰砕けな事を混じりながらユキは必死で匂いから自らを防衛する!
「そ、それにしても無事かな? またみんなを心配させてるかな?
 早く会いたいよ! あたしはあの方の良くない部分を好んでるんだから!
 だから万物の神々よ! どうか参花様をあたしの所まで連れてってよ!」
 ユキは誰かが居なくなって始めて自分の中にある思いを打ち明ける!
 星を追い求める星と星に構いたがる星がやがて結ばれてゆくかのように……。


 ICイマジナリーセンチュリー六十三年七月十二日午前十一時零分零秒。

 第二十一話 二つの星 進撃篇 完

 第二十二話 二つの星 覚醒篇 に続く……

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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