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格付けの旅 デュアンは浮力の宇宙を体験する 天地戦争より前の世界にて

 龍道……其れは数学を攻撃に応用した最新の術式。数科学の世界だから可能にした正しく画期的な魔法術。いや、魔法じゃないな。魔法に比べて九属性のどれかを選ばなくて済むし、尚且つ詠唱時間を気にする必要もない。だが、弱点は其の公式に少しでも誤りが在ると発動しない点だろう。数学は知っていても計算式を操る能力を持たない俺には使えない技術だな。だが、体験してわかったのは此れが数科学世界を支えていると思うと益々好奇心が湧く。未だ未だ俺は強く成れる!
 俺は何故かミレイユ・ラファエ(ミルゥ)の家に戻って様々な公式の勉強をやり直す羽目に。龍道習うには先ずは四則演算から始め、筆算、九九、分数、円周率……と言った小学生なら習って当たり前の事をしている。
「あ、其処……二掛ける一と一掛ける二は違うぞ!」
「文章をちゃんと読めって? 国語の授業は国語でやれよ」
「其れはお前の教師が科目を分けて教えるのがいけない。本当は全ての教科は切っても切り離せないという事を徹底しないと駄目なのだ。賢しいお前ならわかるだろ、其の意味が!」
 俺が思っていた事をお前が言うとはな……確かに其の通りだ--此奴の言い分からして質の低い教師が蔓延する事態はどの世界でも共通するかも知れない。
 だが、算数の復習をする上で俺は少しだけ質の低い教師を招く大きな理由とやらを考察してみる。格付師の俺が此れを考察するのは意味が在る。先ずは実践的な教師育成は状況に合わせて生徒に適切な授業を教える。此れは非常に効率が悪い。何故なら教師は一クラスに二回以上分けて尚且つ二回も同じ授業をする羽目に成る。当然、そんなのはやる気が続かない。此れだと間違いなく離職率の増加を招いて小粒しか続けられなくなる。要は一誌しか連載を持たない奴が無理して二誌以上も然も全く同じ内容の話を二連続で載せる程だ。幾らコピーアンドペーストが発展しても欠伸が出て作業効率の低下を招くような物さ。
「デュアン、何か考えているな。其れはお前の悪い癖だぞ」
「気付かれたか」
 え、何かお悩みですか……デュアンさん--ミルゥは何か勘違いをしている様子……俺は教師について考え事をしているので在って悩み事を考えてはいない。
「頼むぞ、デュアン。少なくともお前は羽無しという珍しい存在の中で最も龍道の才能に恵まれている。其の莫大なエーギルだって立派な宝だ。其れを上手く使い熟せていない。如何も持ち腐れにしているのがいけないな」
「んな事言っても数学の公式は幾つか知っていても使い熟すのは又別じゃないか。俺が使いたいのは魔法だよ……如何も此の世界じゃあ魔法を唱えようにも上手く行かない」
「魔法? 『ファンタジー』は他所でしろ!」
 お前等にだけは言われたくない--俺からすればお前等は『ファンタジー』其の物だろうが……クソウ、世界が違うと俺が『ファンタジー』呼ばわりされる羽目に陥るのか!
 ファンタジー……其れは俺の常識で言えば背中に羽が生えた人間共が魔法を使わず自由自在に空を飛んでいる世界観の事。其処には『エルフ』族とか『ゴブリン』族とかそんな類は居ないが羽毛を散らしながら戦う其の様にファンタジー愛好家は口々で語り合ったとか。因みに俺の世界で有名なMFじゃあ羽は『電波』を媒介する代物でと在る有名な理論魔科学者が発表したかきてきな理論に依り『電波』が否定されると天使や悪魔が存在しない事も公式の物と成ったそうだ。だが、此処に天使も堕天使も居る現実が在る。其の理由は次に俺が尋ねる事で証明されるだろう。
「何、『ヒッグス粒子』? どんな粒子だ?」
「物に質量を与える其れを知らんのか?」
「ああ、『バール粒子』の事か……あんな物とっくの昔に理論数科学の世界じゃあ否定されているぞ」
「そうか、ヒッグスは否定されたのか」
「良くわかりませんけど、取り敢えずおやつが出来ましたので如何ぞ召し上がってね」
「ああ、ありが--」
 突然、銃声のような音が二回も俺達の耳に鳴り響く。俺だけじゃなくウィゾーもミルゥも立ち上がって窓の外へと駆け寄る事に!
「こ、此れは何なんだああ!」
 窓の方を見ると其処には百、千、万にも成るバットの羽を広げた禍々しい奴等が大挙を為して町中を襲っているじゃないか。然も窓を見上げるのではなく、此の世界の用語で言う窓を見下げた状態でな!
「デュアンと言ったか、手を出すなよ!」
「うん、此れは私達の問題なんだよ」
「俺を足手纏いと考えている……訳じゃないな」
「ああ、そうだ。余所者が他の世界で全てを解決するとすれば其れは現地の人間共が情けない事を証明してしまうからな。逆に言うと現地の力が正義を行使するには余りにも貧しいから余所者の翼を借りたいと言える」
 『キャットの手を借りる』に少し用法が似ているな--と俺は向こうの諺に似たような物を見出す。
 キャットの手を借りる……此の世界だと後で聞いた話に依るとダビデの翼を借りるという意味らしい。何故、ダビデなのかはさて置き……此れは多忙の極で人手不足を暗に表す諺で兎に角キャットでも何でも手を借りれたら此の状況を打破出来るのに、そんな苦痛を表す物さ。俺にはさっぱりわからん苦痛では在るが。
「デュアンさん、貴方はきっと私達が思っている以上に強いと思います。ですが、貴方の力に少しでも頼ると此の世界をどうにもできない……そんな予感がします!」
「そうゆう事だ。だから此処から先は俺達が何とかする。いや、何とかしないといけないんだ。お前は頼むから……俺達の戦いぶりを見て其処から『技術を盗んでみろ』!」
 言われなくとも『技術は盗む』さ--と言って俺はウィゾー・ゾフィエールとミレイユ・ラファエを見送った。
 さ、俺は如何するのか? 何でも雲海より上昇して来た悪魔の艦隊に対して天界は何でも兵を寄越そうと躍起に成る。俺みたいな余所者にも目を付ける可能性は低くない。ウィゾーが何とか隠し通しているとはいえ……天界かあ、子供の頃に聞いた天使のイメージと全然掛け離れている気がする。皆清く温かい心根を持つという話は何処に行ったのか? いや、勝手な思い込みだな。今はミルゥとウィゾー以外の天使族を見ていない以上は勝手を想像するのは早計だな。そうゆう訳で俺は戦いぶりを観察するというあいつ等の約束を反故にする形で其の場を後にしようと思う。
 未だに苦しめる浮力の嵐。上に持ってゆくエネルギーに苦しみつつも無重力状態での動作を応用して点から点へと線を繋げるように跳ぶ。其れと運動エネルギーを削ぐ為に幾つか蹴り付けて位置エネルギーを高めて両者を均衡させるように点の上に着地。其れから次に周りを確認する。
「其処? 貴様、背筋周りに翼力筋を備えていないなあ」
 振り返ると其処には天使とは思えない筋肉隆々な男が聳えていた--大きい、天使は小柄なイメージじゃなかったのか!
「いやあ、何処かで翼が取れまして」
「取れんなあ、翼は翼力筋にとって無くては成らない骨格だ。貴様、悪魔……ではないな、何者だ!」
 そ、そうなのか--嘘が吐けんなあ、嘘がこんなに難しい物だったなんて!
「まあ良い、身体『障害者』は何処に行っても必ず存在する。お前みたいに翼をもがれて一生を義翼で生活したり敢えて翼無しで生活する事だって多々在るしな。付いて来い……俺はヴァーチュズの『テロン・マーリク』という者だ。お前は何奴だ?」
「俺はデュアン・マイッダーとだけ名乗ろう」
「デュアン? 其れにマイッダー? フムフム、訳在りな名前をしているな。まあ良い、案内するぞ。『障害者』施設とやらに」
 障害者……わかる通り心身の片方及び両方に何処か欠損している者達の事を指す。例えば身体なら手足のどれかがないとかそんな形で障害者として認定される。心なら生まれつき独り言が授業中で在っても止まらなかったり或は訳もなく叫んで迷惑かける……其れで十分精神障害者として認定される。前者は極めて明確で認定は容易い。問題は後者だな。此方はカウンセリングとか色々やって初めて障害を持つ事を証明出来るのだが……此れは例え俺でも易々と認定するのは難しい代物だな。無論この世界限定じゃない、俺が居た世界でも生まれつき魔術回路の過重搭載に悩まされる者や詠唱する訳じゃないのに詠唱し続ける事を止めない者達が障害者として認定されるそうだ。如何やら俺の世界だけが障害に悩む物達が一定量居るという訳じゃないな。其れは良かった良かった。
「独り言を呟いてかまってちゃんに成りたいのか?」
 初めからかまってちゃんだ、気にするな--俺は生活保護を求める訳じゃない……なので楽は出来る限り控えたい。
「まあ良い、デュアン・マイッダー。お前が何者で在れ、俺と出会ったのは幸運だ。若しもそれ以外に出会うとすればそう簡単には行かない。未だ世間は障害者に厳しいのだからな」
「天使なのに障害者様がお好きじゃないのか?」
「如何ゆうイメージか知らんが、余り自分の先入観で何かを捉えるのは危険過ぎるぞ……俺も人の事は言えないが」
 確かにそうかも知れない。だが、自己弁護すると俺は天使が聖人君子のような広い器を持った者達ばかりで反対に悪魔はみんな狭量で人が苦しむのが大好きな性悪だというイメージには賛同している。でないと『不良の神聖化』を招いてしまう怖れが在るからな。
 と解説する前に爆音が徐々に激しさを増して来る。耳障りは余計に聴き手の鼓膜を容赦なく破りに来るだろう。此れだから戦争は非効率なんだな。作業現場よりも余程耳を悪くさせてくれると俺は思う程に!
「遮音の龍道は出来るか?」
「--龍道は出来ないが……魔法は出来る」
「魔法?」如何な、尻尾を出してしまった。「ヒッグスが否定された世界でそんな物を扱えるとは思い難いな」
「何でもない、兎に角避難場所に案内してくれ!」
 わかった、俺は平等だから素性が如何在れ……お前に其の意思がないと信じる--平等思想と信奉思想は又別、だと俺は思うのだがな。
 とはいえ、話の分かる相手で助かった。確かに此の男以外と出会っていたら如何ゆう目に遭うのかわかった物じゃないな。兎に角、俺は其のテロンに案内される形で保護区へと足を踏み入れる。
「外に出るなよ、どの世界だろうと差別は確かに存在するからな。俺が出来る事は此処迄だ。俺の眼に狂いは無い筈、其の後に対しての責任は全部俺が引き受ける!」
 あんた、俺の想像する天使像に近いぞ--と言って俺はテロンと別れる事に成ったな。
 とはいえ、大人しくする程俺は落ち着いてはいない。だから隙さえ見付ければ直ぐに行動を開始する。と其の前に何故か置かれて在る本棚に興味が湧いた。文字は現地の其れで一杯だろうが関係ない。翻訳魔法を掛ければ羅列された文字のパターン解析され、確実に読める物と成る。数学の応用にも言語学が在る事位は俺も知っている。という訳で言語魔法にて俺は手にした一冊の二百ページ程度の書籍を少しずつ捲る。少しずつ、少しずつ、少しずつ……何、題名は記されていても全部白紙じゃないか!
「テロンさんも人が悪いですね、こんな所に珍しい異邦人が罠に掛かっていたとはな」
「残念だったな、異邦人のあんちゃん」
「ヘヘヘ、テロンさんを良い人だと思った? 残念、あの方は誰よりも異邦人を許さない天使様なのさ!」
 ほう、白紙の書籍を俺に取らせたのも其の為か--本当はきっとノート類か何かだと想像する俺が居た。
「おっと、テロンさんは此処には居ないな。取り敢えずお前には龍道は使えない。だが、異邦人の持つ其の力だけは天国『枢密院』には必要な代物さ。仮にこの世界で使い物に成らないと知っても飽くなき人の好奇心は止まらないんだよ」
「其れは俺の台詞だろうが、雑魚共が」
「俺達完全に舐められてまっせ」
「まああいつにとってかなりの格下だから仕方ないっすね」
「だが、本気を出す前に抑えれば十分だ!」
「だな」
 何……書籍が、俺を巻き付け始めるだって--既に龍道を仕掛けていたのか……いや、『天使術』という龍道の派生系か?
「確か紙はどの世界だろうと一枚だけなら直ぐに破れても何枚も重ねれば簡単に破れない強固な代物と化すってな」
「まあ火が付けば直ぐに燃え広がって黒焦げなんだがな、ヘヘヘ」
「とはいえ、空中に放った紙に打撃を与えても暖簾に一押しって言葉通りに打撃が通じないんだけどな」
「ウィップなら破る事出来るのは不思議だがな」
 俺とした事が--奴等が余裕でお喋り出来る程に今の俺は此の世界に於ける法則を理解出来ていない。
 こうして俺は囚われの身と成った。人間を簡単に信じる事の無謀さを理解しつつも其の轍を再び踏んでしまうとはな。未だ未だ俺も修行が足りないと痛感する今日此の頃。果たして俺は数が科学を支配する此の数科学の世界から無事に脱出出来るのだろうか?


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tag : 小説 SF ファンタジー 冒険

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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