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格付けの旅 デュアンは浮力の宇宙を体験する デュアン、龍道を味わう

 龍道……初めて聞く名称だな。詳しく知らないので此処で止めておこう。
 俺だが、此の感覚が如何も気に入らんな。何だか上に引っ張られている感覚は何か宇宙空間に居る時や水中に居る時よりも変な物だ。何なんだ……まるで俺の体が羽の如く浮いている気がする!
「だ、駄目です。其処の方……変にベッドから起き下がると--」
 うおああああ--俺は初めて転げ上がるという自分で説明しても訳わからない目に遭って頭を天井にぶつけて再び気を失うのだった!
「翼も持たない上に上下感覚が私達と大きく違います。『浮重』は凡そ60の痩せ型なのに体内に蓄えられている『エーギル』は常人の数百……いいえ、若しかすると桁が億を超えているかも知れません。人間が保有出来る『エーギル』の量を超過しております。其れと彼の持つ三つ折りのロールは少しだけ破れております。余りにも此の方の『エーギル』が尋常じゃない量を保有する為ですね。あわわ……でも、如何しよう?」

 彼女の懸命な看護で僅か十分余りで目覚めた俺は見下げる。其処には金髪ショートカットの天使が白い翼をはためかせながら俺を見つめている。
「目覚めましたか、えっとデュアン・マイッダーさん」
「ああ……時計は、くう」十分も眠っちまうとはな。「お嬢さんが敵じゃなくて良かった。敵だったら百回は息の根を止められるぞ」
 息の根を止めるとか言わないで下さい--此の天使のお嬢さんは加減を知らないのか、鳩尾にクラッシュを叩き込んで今日二度目の気絶をする所だった俺。
「ゲホゲホ……言葉が悪かったな。其れよりも名前をもう一度紹介してくれないか?」
「はい、私の名前はミレイユ・ラファエと申します。私の事はミルゥと呼んで下さい」
「そうだったな、宜しくな……、ミルゥ」
 はい、デュアンさんも宜しくお願いします--今日で二度目の握手を交わす俺達。
 浮重……其れは何でも此の世界に於ける体重の事らしい。詳しくはわからないが、此の数値が大きい程真上に引っ張られやすいって事かな?
 エーギル……其れは此の世界におけるマナの事。如何やら俺の膨大なマナの量にはミルゥも驚いている様子らしい。うーん、良くわからんがそうゆう事だろうな。
 ミルゥ曰く俺のデュアンロールは既に壊れているそうだ。何でも膨大なエーギル……えっと、マナに耐え切れずに彼方此方破けているそうだ。其れを指摘される迄俺はデュアンロールの整備を怠っていたと反省。如何やら俺の無茶な使用と長い時を生きる俺と同じような耐久年数を持っていないとわかった。或は此の世界の構造にも対応出来ていないとみても良いだろう。此のデュアンロールはヒッグスが認められる世界なら難なく活動出来るだろうが、此処には物質に質量を与える代物がエーテルしかない。いや、エーテルのような光の速度を遅らせる代物では重力の代わりと呼ぶには余りにも何か決定的に欠けているな。恐らく俺の産まれた世界で否定された電波とやらと繋げて無理矢理物質に質量を齎したのだろうか? 故に物質が四方八方に分散される筈だと理論上は説明されるのに其れが起こらないのはきっとヨーイチ・ナンブーの主張する自発的対称性の破れが此の世界でも左右するからだろう。其れが此の世界に於ける電波を繋ぐエーテルに依る保護作用とみて間違いはない。
「あれ、デュアンさん。何か考え事ですか?」
 気にするな、俺は何かを格付けするのが大好きな性分でな--そういや、最近は格付けらしい格付けをしているか謎だな。
 とはいえ、格付しておくと今の俺は神々と渡り合える能力は有して在る。其の証拠にワイズマン、アンダーモルゲッソヨ、其れと不完全とはいえ波旬と戦った経験が在り共にこうして五体満足で無事で居る事が其の証拠だろう。他には……そうだ、あの黒レイピアの使い手ともやり合ったな。結果は散々だったが、こうして生きているのは奴の気紛れに依る処が大きい。未だ未だ俺は井の中の蛙で居られる……孤独を感じる事はないな。
「其れにしましても不思議です」
「何がだ、ミルゥ?」
「デュアンさんは羽を一切持たないのに満足に立っていられるのですよ。こんなの奇跡以外の何物でも在りません」
「何でも奇跡呼ばわりするな。奇跡は希少だから奇跡なんだよ。市販されたら最早必然と如何違うんだか」
「御免為さい、そうですよね……でもやっぱり変です」
「何が変だ、ミルゥ?」
「だって人間は背中に翼を生やさないと垂直に立っていられません。寧ろ、真上に上昇し続けます。そう教科書で習いました」
 教科書かよ……授業じゃないんだ--天然気味なミルゥに少しだけ戸惑う俺が居た。
 そんな時に戸を何回も叩く音を俺と彼女は耳にする。如何やら音はやや斜め下に落ちるのではなく、やや斜め上に届くように出来ているみたいだな。えっと音に関しては俺の世界だと『トップマン効果』と呼ぶそうだな。
 トップマン効果……其れはクリスチール・トップマンが発見した音に関する証明。流れるような音は近付くに連れ、大きく成り過ぎ去った後は徐々に遠ざかって行くような其れが正にそう。数式を此処で表したいが、何でも数式一つにつき売り上げが減少する『数式足枷論』が在る以上は俺も其れに従って載せないとする。何が言いたいのか……要するに何故近付くと音が大きく成って遠ざかると小さく成ってゆくかは周波数が齎す現象だからな。近付く場合は因り濃い周波数に晒されているから音が大きく成って行くのに対して遠ざかる場合は薄い周波数迄遠ざかるから音が小さく成って行くんだ。まあ詳しい話は専門家に聞け……兎に角、此の世界でもトップマン効果が在る事が良くわかった。如何やらどの世界でもトップマン効果の公式に変わり映えはないんだな。
 其のトップマン効果の公式に従って俺達は叩かれた戸に近付いて大きな音に導かれる。其れから家の主ミルゥは「開いていますよ」と言ってノブを回しながら戸を内側に回してゆく。すると戸が在った先に見えるのが右に黒、左に白の翼をはためかせる黒髪でローブを纏った身長凡そ百六十未満の男だった。
「やあ、先程の異邦人は……おや、もう元気な姿か?」
「誰だ、お前は?」
「最近に成ってユーザータグを使い出したな」と誰に向かって話しているのかわからん俺は其れを言い出した後にこんな風に自己紹介をする。「俺はデュアン・マイッダー……御覧の通り余所者だ」
「下手すると自らの身を危険に晒す告白じゃないか……だが、其れを承知でそう自己紹介するという事は即ちお前は自分の強さを過信している馬鹿野郎と見た」
「自己紹介したんだからそっちの方を済ませろ。俺にだけさせて自分はしないってのは卑怯者のやる事だぞ」
「其れは一理在る。異邦人を差別する俺がそうゆう正論を言われれば認めるしかない」此の男は俺の事が言えるのか、随分と反骨心に満ちた皮肉屋だと分析する。「俺の名前はウィゾー・ゾフィエール様だ。まあ、此の翼を見てもわかる通り近々小綺麗な連中から追放処分されるかも知れないな」
「成程な」
「こら、ウィゾー君。余りデュアンさんに攻撃的な態度を取らないで下さい!」
「あのな、ミルゥ。此の男は危険過ぎる。羽が無いのに平然と出来るのは余りにも物理法則に違反する」
 お前等の世界の物理法則を出されても、なあ--そうかあ、此処では羽の有無一つで物理法則の全てが決まるのか……良くわかったぜ。
「そ、其れよりもデュアン君。如何する? 外に出るとみんな私達みたいに扱うとは思えませんけど」
「だったら俺は籠るな……と」前言を翻すように俺は次のような返答をする。「言うのは臆病者だけで俺は堂々と外に出て此の世界の物理法則を学んで来る!」
「待て、デュアン・マイッダーだったな? お前如きが此の俺を無視して外に出るのは百年早い」
「たったの百年、か。俺には短い時間にしか思えんな」
「神を気取るか?」
「神? 違うな、俺は神なんてちっさい存在よりも強いと自負するぞ」
 違うな、身の程知らず……と断言しよう--ウィゾーの闘志に火を点けてしまったな、俺の後先考えない悪い癖は治らんもんかな?
 とはビッグマウスで身の程知らずを演じる俺だったが、いざ果し合いをしようと体内のマナを安定させようと思うと……何故か、昂らない。
「顔に出ているぞ、デュアン・マイッダー」
「フルネームは良いだろう、ウィゾー」
「顔に? 元気ですけど?」
「其の顔じゃない」ミルゥの天然ぶりに少し困惑するウィゾー。「オホン……奴は自慢の武器が使えないと俺は睨んでいる」
「武器、かあ」読まれている、俺が魔法を使えない事を。「其れは『先読み』への思い込みじゃないか?」
「『先読み』の思い込みか如何かは今から俺とミルゥがバトルフィールドに案内するから其処で思い込みを証明して見やがれ!」
 そうゆう訳で俺はウィゾーとミルゥに目隠しされた状態で雲の上を渡ってゆく。確かにウィゾーの言う通り、羽が無いと雲の下に落っこちかねない。或は羽で浮力を安定させないと永遠に上昇しかねない。其れだけ上下に引っ張る力が安定しない!
 先読み……其れは武の極意とされる趙高等技術の事。或は超常現象の一つとして未来を予知する能力。俺の世界じゃあこうゆう先読みの術はアナライズ或はタングラムと称される。アナライズは云わば使用する術技を解析し、タングラムは行動パターンをグラフ化する物。だが、此れだけでもアナライズ通りに行く訳でもなければタングラム通りに相手が行動するかと言えばそうではない。其処で使用されるのが『時飛ばし』或は『巻き戻し』を使った先読み術。『巻き戻し』は此れから如何ゆう行動を取るのかを知るのに便利。最も巻き戻す前にやられなければ、の話。一方で『時飛ばし』は文字通り時を飛ばす副産物として飛ばした先の状況を見る事が可能。此の様に先読みと言えども様々な種類が存在する。だが、何方にせよ高等技術に変わりは……無い。
 とは思った物の、まさか雲の上が戦場とはな。
「信じられない、徐々に環境適応をしている。有り得んな、理論上不可能な体型をしているのに!」
「付属品がない俺がこうやって雲の上に乗っかれるのは魔法の御蔭だ」外に出せないなら中に出せば良い……「魔法は説明すると詠唱が必要な『龍道』で良いか?」尤も此れは下ネタではなく、本当に体内で発動させる事に依って何とか俺は浮力に支配されてみるんだよ。「正直、『龍道』が何なのか俺にはわからん」
 だろうな、だから此れから其れを体験して貰う……死んだって知らんがな--ウィゾーの奴は本気で俺を始末する気だ……大丈夫か、俺は?
「では行くぞ……此れが三平方の定理!」
「何……数学だとっ!」其れは人生の上では役に立たないと思われた数学が牙を剥いた瞬間。「グウウウウウ……たった其れだけで俺を、ウガアアア!」
「何ッ、俺の龍道を……浴びて平然として居られるだとお!」
 凄い、普通なら『数字分解』されるのに……デュアンさんは凄い『証明式』の持ち主だったのですね--如何やら俺が数式の塊だと思われるみたいだが……初めてだよ、数学が人を傷付ける事を証明するのは!
 何とか右膝を付くだけで済んだ。何て威力だ……此れが数学の公式かよ。三平方の定理は俺も習った事が在る。縦の二乗掛ける横の二乗イコール斜めの二乗って基本の中の基本を……其れが俺に向けられたか。何て事だ、少しでも辺が二乗に成るだけで全体のダメージが此処迄上昇するとは思わなんだ。
「ハアハア、龍道の正体は数学だな。道理で俺には理解し難いもんだ」
「満身創痍なのにもう俺の技が数学の塊だと気付くか……観察力が尋常じゃない!」
「だ、大丈夫なの? ウィゾー君の龍道を真面に受けて死にそうだよ」
 俺は死なねえ、唯少し……噛み間違いをしただけだ--体内から出血したとは認めない俺だった。
 こうして俺は初めて龍道を体験。世界はこんなにも広い事を実感していく……


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tag : 小説 ファンタジー SF 冒険

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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