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一兆年の夜 第二十一話 二つの星 進撃篇(三)

 午後六時零分零秒。
 場所はマンドロス山北出入り口。
 マンドロス山を下りた十名はそれぞれ晩御飯と仮設民家作りに勤しむ。その中でただ一名は迷いを払拭すべくある行動に出ようとしていた。
(マンドロス山は下りたのは良いけど、このまま僕はマンドロス町奪還に足を踏み出していいのかな?
 みんなの足手まといになってばかりじゃ門忍姉さん、狭間はざま姉さん、それに弐高にたか姉さんにも申しわけがない。
 だからってこんなに迷ってばかりじゃいつユキに怒鳴られるかわかんないよ!
 そんなのを避ける為にも真夜中にもう一度この山を登ろう! ここから確か南西に
向かって上れば僕が姉さん達と一緒に住んでいた建物に着くかな?
 いや着くよ! 必ず--)
「参花様!」
 ユキに話しかけられたのか、参花は全ての毛を逆立てた!
「お、お、脅かさないでくれない? 思わず心の臟が口から出そうだったよ!」
「まあた悩んでいたでしょう! 良くないですよ!
 参花様はもっと胸を張ってもらわないとみんなに示しが付かないよ!」
「そうは言われても困るよ」
「困ってる暇があるなら行動あるのみ! この言葉はあたしの母が生前耳の中が蜂
の巣になるくらい言われて辛かったわ!」
「母って?」
「母はイチゴ・ライダル! 元々あたしの家系は雌系なの!
 代々ライダル家は良家に使える一族故、雌が当主になるしきたりがあるのよ!
 まあそこの所は他の一族と異なるわ」
「それじゃあ君の父親は誰なの?」
「父は飛遊家から婿養子としてきたわ。名前はもうわからない。あたしが物心着く前
に亡くなったから」
「そうなんだ」
「何よ! 同情しないでよ! こう見えてあたしはしっかりしてるんだから同情される
と却って頼ってしまうわ!」
「むしろ僕は君に頼られるようになってないけど」
「頼りになるくらい胸を張ったらどうなの?」
「それは明日の朝になったらするよ!」
 はあ--とユキは溜息をつく。
「そんなに呆れなくても」
「そんな言葉を言う方は明日になっても言葉通りの事は出来ないのよ!
 だから溜息をついたのよ」
「うう! 僕ってそんなに期待されないんだ!」
「そうよ!」
 参花は落ち込んだ!
(辛いよ! やっぱりエリオットさんみたいになるにはまだまだかかるのかな?
 それにしてもユキを見ていると弐高姉さんとお話をしてるみたいで困るよ。
 ああ、登るべきかな? 銀河連合がいつ現われるかも知れないこの山に)
 迷いを抱えながら五の時が経過。

 午後十一時十分八秒。
 ユキは寝る前に参花の様子を見に彼のいる仮設民家へと足を運ぶ。
「はあ、あの方の作った仮設民家は良くない出来!
 それよりも中を!
 ええ、と。ユキ・ライダルです! 中に入って良いでしょうか?」
 ユキが小さな声で参花を呼ぶがうんともすんとも言わない。
「もう一度。ユキ・ライダルです。起こして申しわけありませんが、中をよろしいでしょう
か?」
 それでも反応しない。
「三度目の正直! ユキ・ライダルです。いい加減--」
「参花様はここにはおりませんだ」
 え--とユキは突如話しかけてきたアラウンに驚く!
「参花様ならだいたい二十の分より前にマンドロス山に登ったよだ」
「本当ですか?」
 疑いながらユキは仮設民家の中へ入るとそこに参花が居ない事に気付く。
「もうどうしてこんなに手間がかかるのよ!」
「仕方がないだろだ! これも生子様より続く天同家の伝統だ!」
「天同家は関係ないと思う!」
 そう言ってユキは自分の仮設民家に戻るなり、補充し終えたばかりの物部刃の
入った籠と手入れが完了したての望遠刀を背負ってマンドロス山へ登り始めた!
「やれやれだなだ。ただ、二名ばかりに勝手な行動をされては折角の報奨金である
五万マンドロン硬貨がただの金属になるだ! 誰か二名だけでも様子見に派遣しな
いとなだ!」

 午後十一時五十分八秒。
 場所はマンドロス山標高成人体型百八付近。
「イデ! いたた。どうして僕がこんな事してるんだろう?」
 参花は登り始めて五度も躓く。
(そもそもエリオットと会う前、どうして僕はマンドロス山を目指したんだ? 忘れたよ。
どうして目指したんだろう? あっ! そうだ!
 僕は港の者達から逃げたくてここまで来たんだ! いつまでも天同という名字から
離れたくて!
 でも無理だった! 今度はマンドロス町を奪還する為にこんな所まで!
 やっぱり僕には無理なんだ! 天同の家を継ぐなんて! 無理な事をどうして出来
るか!)
 悩みながらも参花は自分がかつて暮らしていた聖堂に戻ろうとまた走り出す!
 それから二の時が経過。

 七月十一日午前二時零分四十四秒。
 場所は廃崇神聖堂。正門より一番奥にある天同門忍の間。
「骨がまだある」
 そこには天同門忍の亡骸と思われる首だけの骨があった。
「えっと、ちゃんと二式雄略包丁はあるよな」
 彼は昨日とは異なり、鞘から包丁を抜けるようになった。
「いるんだろ!
 いるなら返事をしろ、銀河連合!」
「返事をしないわよ!」
 うわ--と参花は叫んだ!
「だから脅かさないでよ、ユキ!」
「勝手にここに来た参花様が良くないんでしょ!」
 参花の下半身はあまりに驚いた為、湿っていた。
「参花様。この件は報告しませんのでどうかここから戻りましょう!」
「また漏らした! こんな状態でそうやって戻れば良いんだ!」
「だからあたしが秘密にしますのでどうか--」
 参花は気付いた--ユキの背後に獅子型らしき影が襲いかかるのを!
「危ない、ユキ!」
「え?」
 ユキは振り返った!
 すると--
「あああああ!」
「させるかあああ!」
 食われる寸前で参花はユキを後ろに吹き飛ばす--同時に口から肛門まで貫く
ように二式雄略包丁を刺した!
「やらせてたまるか!」
 さっきまでお漏らしをしていた少年とは思えない行動と息遣い。
「ど、どうしてそんなに速く動けたの?」
 さっきまで二名との距離は成人体型およそ二十。そこから間に合うには遠すぎる
距離。
「あ、あ、危なかった……」
「参花様?」
 元の参花に戻った。
「ありがとう。お陰で助かったわ」
「ごめん。何だか恐怖のあまりまた漏れそうだよ!」
「はあ。見直した途端これだもん!
 さっさとここから出ま……え?」
「どうし……何でまた獅子型が!」
 唯一の出入り口よりさっき倒したモノと同じ体型の獅子型が五体、入ってきた!
「構えて、参花様!」
「あっ! そう言えば雄略包丁はさっき死なせた銀河連合に刺さったままだったよ!」
 参花はゆっくりと抜く。
「あんまり血に付けないで! 刃毀れが激しくなるんだから!」
「ごめん」
 二名は五体の獅子型と対峙する!

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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