FC2ブログ

一兆年の夜 第百三十五話 終わりの始まり 最後の一名に成っても(終)

 午前零時三十一分零秒。
 戦いは幕を開ける。ライデンとレットは其々正反対に向かって走り始める!
(今度こそ道は分かたれた。レットは生きる道を、俺は……死ぬ道を!
 けれども、此の腕であろうとも俺はハイラ道の遺志を継いで喰われたりはしないぞおおお!)
 最初から革仙者の力を行使して指揮官型が本格的に動く前に決着を付けようと仕掛ける。だが--
(指揮官型と呼ばれるだけあって面倒な作業は全て下部に任せる訳だろうな。通常の銀河連合で何とかしようと思ったら出来る物と踏まえて適当に指揮を執ってやがる。完全に俺は楽な相手だと指揮官型共は思ってやがる。何て奴等だ……だが、事実だ!
 其の事実があるからこそ俺は敢えて全力で応えて貰う!)
 今のライデンに守るべき者はもうない。唯一の宝である天同相武を守る事? 親友でもあり、天同家の血を引くレットを守る事? 何方も最早違う。
 ライデンに取って守るべきモノとは家族である。家族とは父ライゼルだったり、祖父ラディル。だが、何方もライデンは守る事が出来なかった。そんな思いや空っぽを残した侭に五武将土の将と成って真古天神武の王である相武を命懸けで御守りする為に戦い続ける。時には自らの中にある銀河連合に依って我を忘れる事もあった。其れでもライデンが魅羅と結ばれる迄は空白と家族の代わりだけを残した侭戦い続けた。其れは決して強さと直接結び付かない程にライデンは空白期間が長過ぎた。そして五武将全てを受け継いだライデンに訪れるのが愛する者との出会いと結び、そして幸せな家庭。そうして空白は埋められ、家族を取り戻した!
 だが……そんな家族は一瞬の内に失った。最早何の為に戦えば良いのかを彷徨う菅原ライデン。再び開いた空白は最早埋める事が出来ない。けれども空白が時としてライデンに決死の戦いを獲得し、今以上の強さを発揮させてゆく--僅か十四の分の内に錆び付いた雄略包丁と体術だけで三十八体の通常型を血の海に沈めた!
「次はお前等だ、指揮官型」
 だが、指揮官型は動かない。代わりに百獣型、医者型、参謀型が総勢五十八体で押し寄せる。流石のライデンも此の種類と先程よりも多い数の前に一旦、レットとの合流を図ろうと考えを過らせる。
(いや、待て。下がって如何する? 下がっても背中越しにはもう何もない。良く背中に水が押し寄せる陣地内で戦うって言うじゃないか。此処で相手が戦術的にも厄介な連中であっても俺達は既に戦略的な勝利を見込めないからな。勿論、戦術面でも俺達に勝ち目はない。革仙者の能力は此れ以上行使するには体力の消耗が著しい。言わば全速力を継続させるようなモノだろう。そんな直線的な力では攻略するのは早いのが普通だ……寧ろ、今が攻略の時だと俺は踏んでいる。余りにも能力を相手に見せ過ぎたもんでな……此れからは此奴に頼らずに命尽き果てる迄戦おう。
 なので……下がるのは止めだ!)
 革仙者の能力を閉じて自らの力を以って戦う事を決意。其の際には錆び付いた雄略包丁は足下に転がす。最早持っていても使い物に成らない。今迄使えたのが不思議な物だった……革仙者の能力も同じ。そう思ったからこそライデンは頼り過ぎるモノを捨てた。そして自らの力で勝てない戦いに挑む!
「さあ、来い!」

 午前三時零分十八秒。
 右腕を失っただけじゃなく、左腕さえも全く動けない程に血を垂れ流して尚も経つライデンが其処にある。足下には指揮官型一体も含めた計百五十七体の銀河連合の死体が転がる。
「逃げるのかよ、怖気付いたのかよ。如何だい、死ぬ気に成れば生命体だって此れだけの事は出来るんだよ!」声を発する度にライデンの喉から血が噴き出し、音量が下がってゆく。「お前等だって俺みたいにやれるぞ……来いよ、もう一体の指揮官型も!」
 だが、指揮官型の表情は笑っていた。ライデンは其れが何よりも腹立たしく思う。自分が倒れる事がわかり切っていて上から其れを眺めんと見下ろしていると知るから腹立たしく思うライデンではない。
「其の笑いは、未だ……其処迄俺達を心底倒す為にやるつもりか?」徐々に音量は手の届く所迄しか聞こえなく成ろうともライデンは喉を重くしながらも喋る。「此れ以上苦しめる方法が何処にあるんだよ、ええ……銀河連合!」
 其れから背を向ける。辱めに屈するには十分過ぎる意思表示。だが、ライデンは其れに辱めを感じるのではない。既に膝が地面に就く事を心より辱めに屈していると感じる!
(最早立つ事さえも出来ない。おまけに舌を噛んで死ぬ権利さえも俺は行使出来ない。ああして指揮官型は俺の前から去ってゆく。食べる価値無しだと判断するとかそうゆう物じゃない。迷宮の洞窟ごと俺達を喰らう為なら……巻き込まれない範囲に避難して様子を眺めようとするに決まっている。いっそ一思いに俺に死を与えて於けばこんな光景を目の当たりにしなくて済むのに!
 幸いなのは喉を酷く使い続けたせいで首にも力が入らなくなって上を眺める必要がないという点だな。何か巨大な影が俺達を押し潰さんと迫っているのがわかる。そうゆう意味で眺めずに済むなら……此の首の状態は歓迎する!)
 そして目を閉じ、全てが終わるのを受け入れて行くライデン……「いけにゃせん、菅原ライデンさん……思い出して下さい、全てを!」

(そして俺は全てを思い出し、此処迄辿り着いた。此れが最後の戦いに関する短い話の全てだ。其処でわかると思うが、辻褄が合わない事が発生する。其れが俺の右腕の事。其れから俺が死んだ時の年齢……更には如何して俺が此処に居るのか? 其れが最後の話と成る此れからの俺の物語だ。俺は一体如何してしまったんだ?
 どうしてこうも食い違いが発生したんだ? いや、其れは永遠に解明出来ない話だとしても今の俺が如何して此処に至る迄、死んだ時の歳が二の年以上も異なるかについてだろう。其処で俺の終着点は語られる。其処で俺は--)

 ICイマジナリーセンチュリー三百十四年九月百二十二日午前三時〇分五十一秒。

 第百三十五話 終わりの始まり 最後の一名に成っても 完

 第百三十六話 終わりの始まり ライデンの終着点は始まる に続く……

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
FC2カウンター
リアルタイムカウンター
現在の閲覧者数:
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
Powered By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR