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一兆年の夜 第百三十四話 終わりの始まり 魅羅と生きる水の惑星(終)

 五月百十日午前七時一分一秒。
 ライデンは出発する四分前。其処で彼は齢二十一にして二十八日目に成る今は菅原魅羅と長話をする。
「そう、銀河連合が流れ星に依る攻勢を止んだのは此れが狙いだったの」
「俺達は安心し切っていた。奴等はそう簡単な存在じゃない事を何故頭で理解しても本能で理解し切れないんだよ!」
「何回目なの、そうゆう悔いは?」
「……だよな」
「でもそうして理解を深めている証拠じゃないの?」
「何だよ、お前は俺達と銀河連合が何時か分かり合えると本気で信じているのか!」
「其れは絶対に信じない」魅羅も其れは理解していた。「何故なら私達全生命体と銀河連合は根本からもう既に分かたれるから」
「だったらそうゆう事を言うなよ、お腹の子供の為に成らない」
「こんなに膨らんでいるのに未だ出ないのは如何してかなあ?」魅羅は膨らんだお腹を摩って呼び掛ける。「若しかして私達と同じく恥ずかしがり屋かしらあ?」
「すっかり母親みたいな振る舞いをするように成ったな」
「うん、今迄の貴方に苦労されるような雌じゃないんですから」やはり結婚生活に満足しない魅羅。「全く貴方には何時も苛立ちが募るばかりですよ」
「何だよ、隙があれば直ぐに其れだ!」
「当たり前です、貴方。一体どれだけ私は満足出来ない事が溜まったかわかっていますか。洗濯物を放ったらかしにするのは日常茶飯事。帰って来ては『飯』や『何でこんな献立だよ』とか『何だよ、俺は休みたいんだ』とか何時も自分の事ばっかり!」
「仕方ないだろ、今の此の御時世……最早何処に安息の血があるかわからないんだよ。新天地だって希望があるかどうかさえも見えないんだぞ。お前には見えている世界が狭過ぎる!」
「広い世界の為に家庭を疎かにする事が家族の長の務めですか!」
 其の分だけお前達は帰るべき場所で安穏と暮らしているだろうが--結局喧嘩は始まる……其れでも自らの主張を抑え込む我慢をしたくないライデン!
「全く信じられない。何時もそう、広い世界だの大局を見ろだの……そうゆうのが雌心を余計に弄ぶのを知らないのですか!」
「……止めだ、結局感情の赴く侭に出来てしまった関係ってのは後に成って何時も苛立ちだけが募るんだな」
「二の時も私の体を弄んだ結果がお腹の赤ちゃんです。赤ちゃんの父親として格好付けるのは構いませんが、母親の気持ちも理解して欲しいです!」
「だから止めだ。今からこうして争っても埒が明かない。わかっているだろう、俺が命懸けで戦わないとお腹の子供も魅羅も幸せは享受出来ない事位は。其れは俺達家庭の話だけで完結出来ない。他の家庭だってそうだ……俺達みたいに緊張感のある仲だとは思わない。其れでも俺達に比べれば円満に過ごしていても不思議じゃない。そんな家庭も含めて俺達は銀河連合に立ち向かわないといけない。お前だってわかる筈だ、幾ら満足出来ない事を並べ立てても結局は戦う雄達が戦場に出て生還したり下手したら死んでしまう事に成っても彼等が前線に出るからこそ魅羅は、魅羅のお腹の子供は明日を掴めるんだって!」
「何でよ、いっつも満足出来ない事ばっかりなのに!」普段はライデンに苛立ちを募らせる魅羅も今度こそ帰れないという本当の音を出すかのように震えだし、涙を流し……「何で貴方が、貴方が離れるのがこんなに胸が引き裂かれそうに成るのよ!」そして胸元に飛び込んで思いの丈をぶつける。「いっそ銀河連合の心で在ったら貴方の事を素直に喜んで差し出す事が出来るのに!」
「魅羅、俺もだ。俺もお前と離れたくないという気持ちが強い」抱き締めるライデン……「何でこんなにお前を離したくないというという思いが強いんだよ」其れは思わず加減を間違えそうな位に強く。「離れたくない、ずっとずっとお前が傍に居て欲しい!」
「私もよ、貴方。如何して見付けた光がこんなに離れるのが早いのよ。何時も悔しいのよ、何時も空しいのよ。こんな感情さえなければ私達は安心して貴方を……ううう、うううう!」
「悲しみさえも生み出す全生命体の心は銀河連合に比べれば無くしてやりたい感情…・・・でも、此れが俺達と銀河連合の違いなんだ。此れが俺達の強さだよ。悲しみがあるから前に進める。苦しみに繋がるからこそ強く羽ばたける。強く羽ばたく事は即ち誰よりも優位な事なんだ!」
「其れでも、捨てたい!」
「いや、捨てられない。捨ててしまったら俺達は如何やって銀河連合に勝つんだ。だから……此処迄だ」其れから抱き締めた両腕は魅羅から離す。「続きは全てが終わってからにしよう」
「うん、待ってる。そして苛立ち募る日常に帰りましょう」
「ああ、行ってきます!」
「行ってらっしゃい!」
 其れが二名の最後の会話と成った--

(そして俺は漸く我に返り、号泣。最早何も取り戻せない。最早何も生み出せない。最早……俺には帰るべき場所はもう何処にもない。其れ位に彼女の死は俺の魂に刻み込まれた。此れが俺と彼女のお話。魅羅との生り初めから別離を大いにいや大袈裟に描いた恋愛物語は此れにて幕を閉じる。そして次回からは俺の最後を描く物語が始まる。其れは短いが、長い。何しろ其処で漸く明日からやって来た謎の猫族と出会うのだから不思議で仕方ない。相武様の話を聞いただけでは其の猫族が如何してやって来るのかを俺は知らないからな。そうゆう意味では短い話の中で彼女との出会いは俺の最後をより彩を与えてくれるだろう。
 とはいえ、疑問に思った事が一つある。今回の話で俺は確かに右腕を失った筈。なのに俺の右腕は何故無事なんだ?)

 ICイマジナリーセンチュリー三百十五年五月百十九日午前一時零分零秒。

 第百三十四話 終わりの始まり 魅羅と生きる水の惑星 完

 第百三十五話 終わりの始まり 最後の一名に成っても に続く……

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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