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一兆年の夜 第百三十四話 終わりの始まり 魅羅と生きる水の惑星(情)

 五月百十七日午後十一時二十九分四十九秒。
 場所は真古天神武藤原大陸大中臣地方迷宮の洞窟前。
 齢二十三にして八の月と二十九日目に成るライデンは既に右腕を無くしながらも何かを目指して歩みを止めない。一体何が起こったのか? だが、ライデンの思う事は其れを伝える事はない。
(みんな死んでしまった。みんなみんな死んでしまった。もう俺には相武様、親友のレット、そして魅羅とお腹の中に居る未だ見ぬ子供だけしかない。其れでも俺は戦いを止めない。生きている者達が未だ居るなら俺は未だ未だ戦える。生きている生命が、帰りを待つ生命が居る限り……俺は!)
 ライデンが目指すのは家路。ライデンは帰りを待ち続ける最愛の者の所に向かう。何が起こったのかを詳細に語る事がないライデン。だが、待っているのは崩壊した建物と下敷きに成った生命。
「此れは……オイ、其処の者よ!」齢二十八にして六日目に成る菅原猿族の女性に事情を尋ねる。「如何して俺達の住んでいた建物の下敷きに成っている!」
「ううう、助け、ようっと。助け、ようと……しったら」
「端的に結論だけを言ってくれ」其れは自分にとって重く圧し掛かると知っていながらも敢えて其れを要求する勇敢なるライデン。「貴女の出来る限りの、力で!」
「そ、其れは、却って貴方様を、貴方様を--」
 だから俺の事は構わないからさっさと結論だけを言えって言ってるだろうが--何かを受け止める覚悟を持つ右腕無きライデン!
 そして何かを告げ、猿族の女性は息絶える。ライデンは其れを聞いて心の中であらゆる合理的思考が張り巡らされる。其れは無茶な方法であらゆる真実を全て自分の都合が良いように解釈する。例えば--
(そうだ……俺を安心させる為に魅羅が言ってるんだよ。魅羅がきっと何処かで俺の帰りを待っているんだ……何て考えて如何する!
 クソウ、全然受け止め切れないじゃないか。俺は覚悟を持っていたんじゃないのか、あらゆる悲惨な事実を重く受け止める覚悟を持っていたんじゃないのか。嬉しくない事も悲しい事も怒りに身を任せたい事も全て受け止めるつもりで結論を促したんじゃないのか!
 畜生、結局俺の眼で納得する迄はあいつの……いや、考えるのはもう止めだ!)
 考える位なら直接見に行く。そうするしかないとライデンは思った。器用ではないライデンなりの答えである。其れ故にライデンと共に生き残った齢十七にして三の月と二十七日目に成るレットが声を掛ける……「其の腕じゃあ探すのも面倒だろう、ライデン」ライデンの意地を張った行動を手助けする為に。
「お前は生きているのか?」
「当たり前だ。俺様は絶対に死んだりしない。其れに」ライデンは上半身裸に成って迄ライデンの失った右腕から出続ける血を少しでも和らげる為に縛る。「見付ける前に死んだら本末とやらが転んで倒れるのと同じだ!」
「止めないのか、俺は心を傷付けようとしているのに」
「お前の意地を止める気はない。其れに今は少しでも事実を曲げたいんだろう、心が?」
「つまらん意地を張ってると怒らないのか!」
「怒って堪るか。俺様には愛だの恋だのを未だ知らない……が、そんなお前が初めて家族を築き上げて自ら柱として動き始めたというのに!」
「レット……お前も辛いのか?」
「大丈夫だ、相武様はちゃんと避難した。後で相武様が居る場所を伝える。今は彼女を……菅原魅羅を、助けるぞ!」
 ……わかった--涙を堪えてレットの優しさに感謝の意を表するライデン。
 其の作業は最早一の日が過ぎても行われる。其の間に銀河連合が襲撃し続けても五体無事なレットは右腕の無いライデンを守り通す。時々、百獣型、医者型、参謀型といった強力な銀河連合が立ちはだかってもレットは其れを苦戦する事無く済ます!
(凄いぜ、俺には出来ない事だ。もう完全に追い付けない。あいつがやってくれるお陰で俺は漸く、彼女の所に向かえる。彼女を救出して、して、して……してやるんだ!)
 ライデンは瓦礫を除去した先に見える誰とも思えない肉塊を見ても最早号泣する事さえも忘れて作業に没頭。時には肉片一つ一つを回収する程に迄、精神に異常をきたしていた。其れでもライデンの行動を咎めずに好きなようにやらせるレット。だが、レットもライデンの変調に顔を歪ませて何か言いたそうな表情で見つめる。苦そうな表情ではない。かと言って辛さを表現するような皺の多い表情でもない。其れ位にライデンの変調は周囲を困惑させる。
(全部、揃った。恐らく俺は……クソウ、理解したくなかったんだ。此の様に俺は偏重の侭で居たかった……思い出すじゃないか、魅羅との最後の会話の全てが!)
 ライデンの中で魅羅の全てが急速に思い出してゆく!

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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