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一兆年の夜 第百三十四話 終わりの始まり 魅羅と生きる水の惑星(愛)

 午後四時二十八分三十二秒。
 場所は迷宮の洞窟前軍者専用仮設民家二階五号室。其処はライデンが日々暮らす部屋。既に菅原家の建物は氷が解けた事で発生した津波に依って流され、更には沈んだ後。以来、ライデンを始めとした者達は迷宮の洞窟近くの仮設民家にて生活するようになった。やがては水没が収まった時に初めて復活した土地にて生活を戻してゆく。
 だが、生活を取り戻さずして死んでゆく生命も中には居る。ライデンが知っている中では藤原サイ団、シシド・ミリエム、リリザース・リッサール、そして山一サンショウ丈。ライデンが知る四名は故郷に戻る事無く一生を終えた。埋葬された場所も首都ボルティーニや或は迷宮の洞窟近く、と彼等は決して其処で骨を埋める気は毛頭ない。だが、故郷に帰る日は未だ未だ先に成る。
 そんな風に仮設民家のある一室で眠る度に考え事をする生命が一名。菅原ライデンはレットが自らの代わりに仕事を引き受けてくれた事を理由に睡眠が足りない部分を補う為に昼寝を継続する。
(にしても意識は眠らない。眠るってのは意識ごと眠る事を意味するだろう? 枕の高さが良くないからか? 其れとも季節に合わせた毛布の数じゃないから寒さに思わず目が覚めてしまうのか? 其れとも……他の可能性を考える度に俺は一つの答えに集約してしまう。戦いに精を見出した為に俺の中で完全な眠りを妨げている……其れしかないだろう。
 だが、今回に限っては少し状況が異なる。日の初め迄俺は魅羅と激しい交わり合いを演じてしまった。其の事が如何も引っ掛かる。俺は其の場を去った事を謝罪しないといけない。だが、睡眠が足りない状態で謝罪する訳にはゆかない。眠気が大分浅く成る迄昼寝をしてから謝罪しに行きたい……って考えていたら誰かの呼び出し鐘が鳴った。誰だろう、例え眠たくても出ないといけないのが日常の好かん所だよ!)
 扉を開けた先に待っていたのは--魅羅!
「来ましたよ、ライデンさん!」
「魅羅か、申し訳ない。俺が君を傷物に--」
 其れはライデンさんらしくありません--ライデンの気持ちとは腹の裏側の如く魅羅は右人差し指で親指に力を溜め込んで彼の額に強力な一撃を加える。
「イデッ……其の様子だと、謝罪は必要ないな」
「はい、恋は愛に変わるのです」魅羅はこう言った。「なので此れからはライデンさんの為に一生を尽くします!」
「魅羅……良いのか、俺の為に?」
「言った筈です、ライデンさん。恋愛の恋は既に通過して今は愛し合う時期に入りました。二度も言わせないで下さい!」
「でも俺は親父みたいに子供の為の親に成れないし、愛情を持つ事だって此れからも持てる自信が--」
「そうゆう時にこそ私達が御互いに支え合うのですよ。銀河連合みたいに恋愛の何たるかを知らない存在ではない限り、私達の愛は消えないのです」
「でも自信がない。俺は良い父親に成れる自信が--」
 だから何度も言わせないで下さい、支え合えば良いのです……複雑な理由よりも単純な理由こそが前向きに愛を育む原動力なのです--愛に精通した雌だからこそ言える単純且つ重たい一言が魅羅の口から告げられる!
「……そうだった。俺とした事が後ろ向きにとか今後如何すれば良いとか考えるからいけないんだ。そうじゃないだろ、恋愛ってのはこう何て言うか……考えるのも面倒臭いモノなんだ!」
「そうです、だからライデンさん……一生を私と一緒に過ごす事を誓って下さい!」
「告白は俺がする物だ……雌は黙って俺の言った告白だけを受け入れろ!」
「じゃあどんな告白ですか、ライデンさん?」
 兎に角……俺から絶対に離れるな、以上--上手い言葉が出ないライデンらしい告白文句である!

(そして明くる日の深夜に俺達の事を気遣った奴等が勝手に結婚式を挙げやがった。まあ良いんだけど、こうゆうのは密かにやりたかった。然も其れはレットが相武様に伝えた事で僅かな時間内に作業が開始され、忙しい合間を縫って盛大に開かれたってもんだ。銀河連合が奇襲したら如何するんだよって何度思った事か……だが、こうゆう時に限って奴等は来ない。如何やら結婚式を俺達だけでやってくれって言う奴等の明確な文言だったのかも知れない。
 銀河連合の話は如何でも良い。こうして俺と魅羅は正式に夫婦と成った。そして俺が二の時以上掛けて交わった事で魅羅の御中には新たなる生命が宿る。其れが雄か雌かは俺が死ぬ迄わからない。まあ其の話は未だ未だ拙速かも知れない。語るべきは俺達の新婚生活の方だろう。其れは兎に角、谷の連続だった。
 俺が生活態度がだらしないと魅羅は何時も怒鳴った。俺の帰宅が遅いと何時も魅羅は「もう別れる!」って五月蠅かった。尚且つ、何度口論に成ったか。何度「もうお前みたいな勝手な雌とはもう付き合わん!」と言ったか。俺の方にも礼儀が足りない部分もある。出すべき塵出しを忘れる事五連続に忘れ物七連続、挙句に夕飯の約束を怒涛の忘れ十二連続……怒らない方が不思議な位だろう。
 其れでも俺達の新婚生活は其れ以上に深い交わりと愛の育みの喜び……そして一緒に居られるという喜びで満ち足りている。好きな事もあれば怒りたく成る事も同居する。其れが本来の愛情なのかも知れない。好きなだけの愛情は愛情と呼ばないように山も谷もない結婚生活を結婚生活とは呼ばないかのように。
 なのに其れは--)

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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