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一兆年の夜 第百三十三話 終わりの始まり たった一名だけの五武将(承)

 午後十時四十四分二秒。
 ライデン、サンショウ丈、そして少女に依る相武救出劇--其処で建物を焼きに来る焔の一部が風に抵抗するように蠢き、近付くのがサンショウ丈の目に飛び込む!
「いけない? 二名だけで相武様の救出に当たってくれ?」
「サンショウ丈さん、あんたは山椒魚族とは言えども傍を離れたら俺と彼女だけでやるのは--」
 銀河連合に依って焼かれでもしたら其れこそ意味がない……僕があいつを止める--山椒魚族の訛り故に格好が付かない場面の筈なのにライデンと少女の中で重く心に響かせる!
「サンショウ丈、幾ら両生種族でも一瞬だぞ……私の事は良いからお前のような若い世代は生き残って--」
「僕は水の将です? 水を流すのも堰き止めるのも全て僕の使命です?」
「止めるんだ、サンショウ丈!」相武は僅かに瞳の奥で青き輝きを放ちながら全身の力を籠める。「私の事はもう良い……若い世代が此れ以上私のような老いた世代の為に想念の海に旅立つのは、見たくない!」
「其の命令、聞けません?」そしてサンショウ丈は其の焔に踏み出す。「ウオオオオオ……山椒魚族の濡れたように滑らかな皮膚なら、ば、ならばあああ!」
「サンショウ丈さん、サンショウ丈さん!」
「もう止めてよ、そんなに自ら犠牲にするのが如何して正しいんですかあ!」
 サンショウ丈ウウウウウウ--相武の新仙者の力では腰より下を圧し付ける其れは払いのけられない……だが、若き命が燃え尽きようとするのを我慢出来ずに解放し、自らの力の無さを絶叫しながら己を助けた若者の名前を呼ぶ相武!

 午後十一時三十四分三十三秒。
 相武は下半身が不随に成りながらも何とか解放された。衝撃状態も新仙者の能力に依る物なのか、其れ程深刻に成らない。寧ろ深刻なのが自らの為に焔型に焼かれ、命の炎を燃やして焔型を対消滅させたとある水の将の二つ名を持つ山椒魚族の成年の死に依る精神的な激痛であろう。無論、相武だけではない。
(サンショウ丈は俺に五武将の使命とは何たるかを命を懸けて示しやがった!
「そ、相武様。と、兎に角ここを脱出しましょう……ね?」
「そうもいかない」相武は悲しみを抑えつつも首都ボルティーニでやり残した事を告げる。「未だ此処には生存者が居る……彼等をおいて私だけ助かろうなんて甘ったれも良い所だ!」
「甘ったれているのは相武様です!」其れに対してライデンは反論。「サンショウ丈さんの死を引き摺って自分を暴れ、棄てようとする様を誰が望むとお思いですか!」
「ライデン、お主は--」
「まだ話は終わっておりません。サンショウ丈さんだけじゃない。俺はリリザースさんも其れからシシドさんも其れからサイ団さんもみんなみんな死んだ……だが、誰も相武様を責めようと思ったのですか!」
「そうか、そうだったな」相武は昔を思い出し、弱っていた瞳の光を取り戻す。「又説教されたか……未だ未だ私も熟し切れていないな」
「其れでこそです、相武様。貴方が居ないと誰が真古天神武を継承するのですか!」
 其れはレット・テンタウと決まっている--既に後継者は決まっていた。
「レット・テンタウって……レット、れっとう? 烈闘れっとうに聞こえますね」
「其れは永遠の謎だし、調べる気も起きない」知っていながらライデンは敢えて詳細を教えない。「だが、レットは天同家の流れを汲む生命だ」
「何かはぐらかされて--」
「何をもたついておるのだ。未だ残っている生命が居るのだぞ……さっさと私を外に運ぶのだ!」
 目に生気が籠った相武は嘗ての頃のような高ぶりを見せる。既に全盛期を過ぎた肉体と頭脳……だが、皮と肉だけの状態で全盛期と同じように嘗ての恩師、前中後期五武将、そして自分の為に尽力した者達を思い出すように昂るのである!

(其れから彼は的確な指揮で先程迄救出した計百二名の他に四十三名も救出する事に成功した。此れは相武様の為し得た事でもあるし、あの方でないと出来ない事だろう。
 だが、今回の物語は五武将を中心とした話。俺の方は首都ボルティーニにて救出作業に尽力。其の時に対峙したあの--)

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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