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一兆年の夜 第百三十一話 終わりの始まり 急激な氷解は惑星の水位を押し上げる(終)

 午前十一時五十八分零秒。
 ライデンはサイ団が首元に望遠弾のようなモノを突き刺さる事を見て最早手遅れであると本能が確信する!
 だが--
「うおおおおおい、此の藤原サイ団がああああい。此の程度の攻撃でええええやい!」サイ団はそんな状態でも戦う事を諦めない。「此の位が丁度良いんだようやい!」
 サイ団は尻尾型蛇腹蘇我鋭棒を縦横無尽に繰り出して何と通気口に上手く入り込ませて中に潜伏する銀河連合を射程圏外に脱出する前に貫いた!
(血が流れる。此れが五武将……此れが火の将藤原サイ団!
 あんな動きは出血量を大きく増大させる……其れを承知であんな巧みな芸当を瀕死の状態でやって見せるかああ!)
 ライデンは驚愕しつつも次々と襲い来る銀河連合に目を逸らすような真似をしない。彼は彼でサイ団を心配しつつも自らの役目を絶対に怠らないように熟してゆく。其れは時として体勢が崩れて余分な力を籠めるような状態であってもサイ団の命懸けを思ってライデンは手を抜かない。いや、抜けない--レットはシシドと共に誰の介入もない場所に避難して今では二名だけの状態であり、其のような時に休んでいたり観戦気分で居るのは二名に対しても頭を挙げっぱなしで居られない事態でもある!
 そして戦いは一の分だけでは終わらない。ライデンが革仙者の力を駆使しようと躊躇う程に長期戦を展開。何故革仙者の力が使えないのか? 其の理由は次の通り。
(前に漂流した時に其れを駆使したら通常よりも体力の消耗が激しかった。だから使用すると全身の疲労が大きく増すのを如何して使えるか……其れにサイ団さんは最早限界を押して迄戦っている。まるで相武様の言葉に従うかのように火ではなく、炎として命を萌え挙げようとしている!
 ……じゃあ俺も力を出し惜しみしている場合じゃないな。だが、此処が使い処ではない。どんな能力でも使うべき場所は……ある!)
 ライデンにとって革仙者とはあくまで自分を必ず助ける能力ではない。元々銀河連合を体内に宿していたが為に使用する度に自らの寿命を削る物だとして忌避していたような物--故に使用を其処迄好まないのである……物心付く前から使用を躊躇わないレットと異なり!
 此れが先天的に持った者と後天的に持った者の考えの違いだろう。そんなライデンと瀕死のサイ団は激しい銀河連合の襲撃を受けながらも何と全員無事で迷宮の洞窟の外に避難させる事に成功させる--二名の傷は最早無事では済まない満身創痍の状態……特にサイ団は誰が見ても最早助かる見込みがない!
「サイ団……お前はそんなに成って迄!」
「わしよりいもわしよりいも……全く真面目なお前さんだだ!」
「何て傷だ……こんなの如何しろって言うんだ?」
 サイ団……言葉を鵜呑みにしおって--相武にはサイ団が如何して全身傷だらけに成りながらも此処迄理無き事に専念出来たのかを察した!
「ガッフ……今、更あい。僕、は、使命、を、果たし、た、の、でやい。ハアハア……眩暈か、い?」サイ団は既に視力も聴力も既に限界が訪れていた。「はは、い。ああ、い。父上、母う、え、の声やい? 聞こえ、聞こえ、る、あい?」
「相武様、サイ団は……もうん--」
 知っている……だが、私は、私は--相武にとって己の長い人生とはやはり無視出来ない別れが必ずある事の証……涙が既に流れるのは長生きし過ぎる自らが悔しいと感じる事の示し!
「泣かれるな、泣かれるな、わし等迄……クソウ、何で涙が、涙なああ!」
「サイ団、死ぬなああ?」
「そうだ、サイ団さん!」ライデンはサイ団の顔に近付ける。「俺の眼を見て正直に語ってくれ……未だ大丈夫、だろ?」
「あ、当たり前だ、い。ガッフ……今のは咳き込んだい、だけっがふ……ゲホゲヒッ、ハアハアい」既に余裕すらないサイ団ではあったが期待を裏で切る事をしたくないのか、やはり限界を超える事を諦めない。「未だ、未だ、僕、は、死に、死なない。何故って……ハアハア、五武将は、誰が、誰が、火の将をするん、だい!」
「そうだよ、サイ丼しか居ないよ。でも、もう……精神だけで肉体は、動かせない!」
「やってみ、なけれ、ば、わから、ない、じゃない、かぃ……」
 だが、レットの言う通り精神だけで肉体を動かすには肉体は余りにも現実に即し過ぎた--要するにサイ団は息を引き取った!
 彼の死と同時に周囲に水が雪崩れ込んでゆくのは氷塊が産んだ水位の押上げが既に迷宮の洞窟付近まで迫っている証拠なのか? 或は夢宇宙がサイ団の死を悼む為なのか? ライデンは次のように考える。
(今はそうゆう事を考察している暇がない。サイ団さんは言ってるじゃないか、妄想を口にする前にやるべき事を先にやれ……そうだ、志乃を弔った時と同じように俺達がやるべきなのはサイ団の魂を静かに寝かせる作業だよ!)
 其れはライデンだけじゃない。此の場で集まるサイ団を良く知る者達の総意。そして六名の意志を外から見つめる五十七名の避難民と様子を見守る軍者十九名も同じ思いだった。そしてサイ団の弔いは始まり、僅か二の時も掛けずに其れは完了した!

(サイ団は死んだ。サイ団の死は免れない。そしてサイ団があの時、命を懸けなければ普段以上の働きもしないだろうし、五十七名が奇跡的に助かる事もないだろう。サイ団は相武様の言われた通り炎の将と成った。死ぬ寸前で炎と化すなんてなんて真理だ……如何して命を懸ける場面でしか生命は想像以上の力を発揮出来ないのか!
 其の答えを知るのは後にしよう。こうしてテオディダクトスの氷が一斉に解けて世界中に津波が押し寄せる話は此処で終わりだ。最後の方に成るとほぼ五武将を中心とした話に集約されるのは余り宜しくないが、仕方がない。ちゃんと思いを伝えるには俺の表現力は未だ未だって事さ。
 次は首都ボルティーニが陥落する話さ。此れはサイ団の死からいきなり始まる。たった二の日だけなのに其の内容は大分濃い。ボルティーニがあのように成るのは思い出すだけでも悲し過ぎて逆に語るべきなのか迷いそうではあるが--)

 ICイマジナリーセンチュリー三百十三年九月七十七日午後二時零分零秒。

 第百三十一話 終わりの始まり 急激な氷解は惑星の水位を押し上げる 完

 第百三十二話 終わりの始まり エリオットの記憶は流れ星の中に に続く……

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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