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一兆年の夜 第百三十一話 終わりの始まり 急激な氷解は惑星の水位を押し上げる(導)

 未明。
 第一の関門が巨大な鯨型の空気の出し入れたる両肺の中央部を通る難関。其処には菌型銀河連合が数え切れない数だけ襲撃。其れを嵐で培った技術で何とか突破した三名の筏。だが、次に襲い来るのは胃酸の関門。其れは溶けるだけでは済まない代物であると三名に知らしめる。
(何て暑さだ。動きが少しでも力めば一気に全身大火傷だ。昔、祖父さんが湯気風呂と呼ばれる浸かる事がない高温の風呂があると言ってたそうだな。若しかすると此れの事かも知れない。けれども、此処はそんな段階の話じゃない。此の空間は銀河連合の体内だからな。おまけに筏の下は今も俺達を溶かしに迫る……あヂぢ!)
「濡らした布でも一気に乾いて気が付けば……焦げているじゃないか。こりゃあさっさと渡らないと最早火傷じゃあ済まねえ!」
「じゃがし。じゃがこんな熱気の中で速度を上げたら……アヂヂヂ、何でわしは死ぬのがこんなに恐がるんだっさし!」
「速度を上げたら今度はキッシェルの爺さんでさえも内部での火傷が避けられない程の殻の温度に成るんだったっけ? 俺達なんかさっきから肌が赤みを帯びて、ハアハア……息苦しい!」
 そして鯨型は巨大……此れだけ揃った状態で苦しまない筈もない。三名は筏の木が三名の足を溶かしに入るのが先か三名が窒息死するのが先か熱で全身大火傷の内に衝撃死が先か或は--

(朦朧とする中で俺達は胃酸の恐るべき空間を突破した。其の次に待つのが第三の関門。鯨型の体内も俺達と同じならば次は曲がり角が豊富な小腸区域の筈……なのに--)

 未明。
 三名の筏は胃酸に溶かされる事なく、胃の区域を突破。其の少し暖かな気温は三名の肌には少し涼しさというよりも寒さを感じる……「ヘックション……おかしいなあ、腸は大きさに比例して胃の内部の次に高温の筈だったが」くしゃみが出る程に胃との温度差がある。
「未だにわしの殻が筋繊維を焼き付ける。変に動く事が侭ならないぜせ」
「甲殻種族は意外にもそうゆう悩みがあるんだな」
「お前達人族を寧ろ人族以外が羨ましがるのと同じだと思うなっし!」
「だな……ところで此処は本当に曲がりくねった小腸の中か?」ルドールがそう疑ってもおかしくない程に其れは広い。「其れに大腸にしてもこんな広々とはしない……というか自分の視力で確認した所だと如何して丸みじゃないんだ?」
「丸み……あ、本当だ」ライデンも丸みを帯びない区域が果たして腸内なのかと疑い始める。「どんな腸でも端は楕円でないと説明付かない筈なのに!」
「若しや……此れが逸話にあるしとされる銀河連合内に顕然と存在する秘境?」
 秘境……何で銀河連合が神を宿すのだよ--ライデンが抗議するのも納得するキッシェルの仮説。
「結論は未だ早い。もう少し先に進もう。其れに少し此の温風で籠った熱を少しでもマシにさせないとな」
 三名の乗る筏は先に進んでゆく。其れは三の時も何もない状態で進んでゆくように。

(三の時も何も起こらない。三の時も話が進まない状態で俺達は進んでゆくのだぞ。少し頬を引っ張っても見たしな。だが、現地涌は現実だ。やはり此の現実の前では俺達はそろそろ考えるのを止めたくなる気分だよ。大昔、祖父さんと一緒にやった百度参りの様な気分其の物だよ。あんな物の為に最早何を考えれば良いのかわからない位に長い時間だった。たった三の時とは言えども空腹感にも襲われなければ苛立ちとやらも起こらない。百度参りは精神の疲労を促進し、最早何もかも一切を解脱したいと本能が命じるように俺達は何の発展もなく時間だけが過ぎだ。
 そして--)

 未明。
 三の時が過ぎてから事は起こった。そう、第三の関門の本意気とは即ち百度参りで経験する解脱の心……ではない。本当は突然訪れる急激な濁流--三名は余りにも発展しない事柄に気を取られて思わず筏から引っ繰り返ってしまった!
(畜生、何だよ此の急激な波の流れは……単調な事が三の時も流れた後にいきなり此れでは如何しようもないじゃないか。俺みたいな戦いに従事した生命がこんな油を断った術にやられるなんて!
 クソ、水が口の中に、いし、意識が、ぁ、ぁ--)
 そしてライデンは暗闇の中へと引き摺り込まれてゆく……

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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