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一兆年の夜 第百三十一話 終わりの始まり 急激な氷解は惑星の水位を押し上げる(期)

 午前五時九分二秒。
 ライデン達が見たのは数にして数千にも上る流れ星。其の圧倒的な数の前では最早アリスティッポス大陸が無事では済まない!
(あれを如何しろって言うんだよ。俺達が守るのは俺達だけでも出来る限り守る事が出来るから守るんだよ。だが、守る許容の範囲を超えた事柄を俺達は未だに守る術を見付けてはいない。如何して真古天神武にはこんな重過ぎる課題の数々が押し寄せるんだよ。如何して相武様に此れ程の重荷を課すんだよ。如何して今の俺達は将来の生命に禄でもない課題を与えて行くんだよ!
 幾ら此処で天同躯央くおうが生きていたとしても……絶対にお手上げだぞ、こんなの!)
 だが、ライデン達に休みはない。少しずつ氷の大地に亀裂が走っても軍者の仕事は減るどころか増すのが現状。五武将とて変わらない。然も朝食を摂る暇もなく活動を始めるのだから三名にとっては溜まった物ではない!
「どっち道、僕達は出来る限り此の七の地から大陸の端迄脱出させるよう誘導するぞい!」
「飯は未だか?」
 サンショウ丈さん、そんな暇はないだろう--此れは普段から呑気なサンショウ丈の口癖であっても余裕なく注意するライデンだった!
「自分達もさっさとこっから脱出だ!」
「じゃが、ICイマジナリーセンチュリーに必要な各資料の回収が--」
「此れだけあれば十分だ……又、引き直せば良いだろう!」ルドールは資料よりも今は大事な命を優先する。「死んだら誰がICイマジナリーセンチュリーを引き継ぐんだ……幾ら老い先短くても春風さんから貰った命を大事にしろよ!」
「……あの小娘の名前を出されたら、たまらんなっせ!」キッシェルは自分自身のかまくらが既に志乃の墓標と成っている事を知りながら、頭を下げて次のような事を述べる。「済まない、僅か一の日の墓であったが……此処で本当のお別れだせ!」
「俺からも言わせて貰うぞ、志乃。此の凍える海で騒々しくもしっかり睡眠を摂るんだぞ!」其れからライデンは背を向けて大量の流れ星で動く気配がない七の地の住民に喝を入れた。「フウウ……何をしてるんだああああ、さっさと此処から逃げやがれえええ!」
「そ、そうだったる!」
「アリスティッポス大陸はもう維持出来なっかう!」
「そうだそうだアア、僕達だけでも口伝から口伝でも良いからアリスティッポス大陸の歴史を受け継ぐ使命があるんだアア!」
 等と計百五十七名と数えたらキリがない少数の住民達の心に火が点き、やがて彼等は一つの使命を果たす為にライデン等軍者達の避難誘導に従って七の地を脱出してゆく。其れは無事では済まない脱出劇でもあった。

(俺達三名を含めた二十五名の軍者とルドールさんを含めた七の地の住民計百五十八名の脱出劇は当然、銀河連合が指を咥えて見ている訳がない。七の地の亀裂は状況に依っては間隔良く此方を落としに掛かったからな。後は直接の襲撃もあった。人鳥型に依る襲撃は勿論の事、海豹型といった様々な種類の銀河連合を投入して迄奴等は俺達を喰らいに来る。戦いは二の週も掛かった。食事だって碌に取れない状況で、だぞ。おまけに寒ささえも忘れてはいけない。そんな状況下で俺達五名を含めた軍者と住民合わせて計三十九名が何とか港迄生きて到着したのが奇跡としか思えないさ。そして船に乗った俺達は更に困難は待つ。其れが忘れては成らない氷が解ける事の意味さ!)

 九月五十九日午後十一時二十八分四秒。
 場所はアリスティッポス大陸南エウヘメロス地方新へメロ港。
 天同八弥やつみ及び七がアリスティッポス大陸奪還船の為に乗り込んだ港は七の治世時に新たに建て直され、真古天神武に至る迄大陸発展の為に貢献して来た。だが、そんな港も終わりを告げる。
(船は出る。俺達は凍傷と格闘しながらも何とか此の凍り付く大地とお別れをする。だが、間に合うか? 俺は其処迄詳しくないとしてもアリスティッポス大陸の氷が他と比べて分厚い事位はわかるさ。だから--)
 やはり心配か、氷が解ける事に--ルドールはライデンの右隣に立つ。
「危ないから中に入れよ、ルドールさんよお」
「そうもいかない。自分は君に話しをしたいからこんな……ハックション!」
「だから寒さも含めて中に入れって俺は言ったんだよ」
「ハフウウ、寒いねえ」其れでも意地でも語り始めるルドール。「良いか、此れから惑星中で激しい水没が始まる。其れは君も知っている通り、此の星に大地が存在するかもわからない位に激しさを増すからな!」
「んな事は言われなくてもわかるさ。詳しくない俺でも其れがどれだけ激しいか位は--」
「話は最後迄聞いてから答えるんだ」意地でも話を聞かせるルドール。「特に此の水没は各地の砂漠地帯の気温を大きく下げる事に成る。砂漠地帯ならばこんな寒さ程深刻じゃなくとも草木が生えるかさえも怪しい環境へと変わる。仙人掌は最早生えないな。そして砂漠地帯以外の地域だったら各地は最早雪の世界へと様変わりしてゆくだろう。何しろ、此処の寒さは異常だ……其れが一気に崩れて世界中に流れるとしたら気温が高い侭では済まないぞ!」
 ちょっと待てよ……じゃあ、世界中みんな寒冷地帯と化すのか--ライデンは此処の氷が解ける事の深刻さは思った以上に強烈である事を改めて知ってゆく!
「ああ、そうだ。幾ら地域差が如何のこうのでも気圧差というのもあるんだよ。其れに問題なのは各地がほぼ低気圧化してゆく訳だ。此奴がとんでもないもんだ。台風被害やらは此処の氷が解けた際に発生する津波被害よりも長く続くぞ!」
「ルドールさん……話の途中で良くないが」
「何だ……って徐々に波が高く成って行くぞ!」
 二名は中に避難して其処の船長の指示を仰ぐ事と成る。

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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