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一兆年の夜 第百三十話 終わりの始まり キシェール最後の雄(動)

 午後一時十五分二十二秒。
 四名は其々を相手にしながら次のような行動を採る。サイ団は蚯蚓型と蚯蚓型が出て来た穴からやって来る大群に向かって両肩に乗せた望遠砲を抱えながら咥えた引き金で器用に動かしながら前方射撃しつつ前進。射撃はあくまで牽制であり、当たれば一攫千金でしかない。本命は犀族の重量級の突進と自慢の角に依る抉り込み……わかりやすいという銀河連合への意思表示と此れ以外の戦術は思い付かないが其れでも其の道に於いて誰よりも優れた戦績を持つというサイ団の信念を凡そ十一体もの銀河連合に物理的な贈り物を届けて行く。
 サンショウ丈は土竜型と其れが開けた穴から出て来る蟻型数十体余りと交戦。此方は山椒魚族特有の肌触りと柔軟性を持って格闘戦に臨み、時には雄略拳包丁と呼ばれる人族の成者の雄の平均的な拳の大きさ程しかない位柄が短い包丁であって小道具程度にしか活用する道がない包丁に依る代物も駆使しつつ関節技で次々と内臓に迄浸透する絞め技を繰り出してゆく。時には掴まれる事もあろう。だが、そうゆう時は山椒魚族自慢の肌で鰻族の如く滑らかに回避したり或は鮫族のように自然と擦り傷を与えて少しの反応を基に脱出。其れでも難しい時に先程説明した雄略拳包丁で切り付けて脱出を試みる。サンショウ丈はそうゆう点でも水の将に相応しい掴むのが難しい踏ん張りが利く軍者である!
 志乃はキッシェルとルドールを守る様に周囲を回りながら反撃で次々と迫り来る銀河連合を振り払う。知識を重点的に鍛え始めた生命とは思えない程に蛇腹式の蘇我鋭棒を難なく振るって見せる努力の雌志乃。彼女は知識を蓄えるのと同時に普段の鍛練も怠らない悲観的な思考を持つ。準備に於いて悲観的思考は真価を発揮する。故に戦いが始まると其れが却って妨げに成る事もある……悲観も又、使い処は難しい観方と捉えよう!
 そしてライデンは如何なのか? 鼠型と其れが開いた穴より出でし蟻型の大群と激闘を繰り広げる。だが--
(経験の熟し切れなさよりも先に……此処の穴の蟻型だけは他の穴の蟻型と異なって連携力が大違いだろ!
 未だに三体しか倒せていねえ……然も一体倒される毎に距離を離して間合いの取り方を調整しやがる。此奴等……俺にとってやり辛い連中じゃないか。こうゆうのをサイ団さんに任せるべきだったな。サイ団さんの様な突貫能力だったら風穴を開けられる。だが、俺みたいな奴にとってはこんな連携の取れた連中は……時間を割いてしまう--)
 一瞬、ライデンは己の中にある銀河連合に取り込まれ掛ける。だが、蟻型が目の前に移ると直ぐに意識を戻して左肘横薙ぎで後方に躱させる。
(如何如何、こうゆう時に俺の中の奴が蠢く。如何やら俺は初めから銀河連合にとって欲しい素材だったのかも知れない。そう考えれば俺の所だけ妙に連携が取れるのも説明が付く!)
 其れからライデンは敢えてサイ丼が得意とする突貫戦法に切り替えて指揮官と思われる蟻型に向かって走り出す。其処へ凡そ八体もの蟻型がライデンの体にしがみ付く。そして--
「蟻型の癖に重たい……だから」ライデンの瞳は一瞬だけ赤く発光……「如何したあああ!」そして八体の蟻型を同時に平均成人体型十迄吹っ飛ばす。「俺はそんな風に華奢に鍛えていないぞおお!」
 そして、指揮官と判断した蟻型を縦一文字に伏せる--すると背後で吹っ飛ばした筈の八体が一斉に密集するのを影の形でライデンは捉える!
(何で動きを制限するような……何!)
 ライデンには信じられない光景が飛び込む--其れは蟻型が液状化して何と指揮官型に姿を変えるではないか!
「馬か鹿かよ……そんな簡単に指揮官型が出来るかよ!」
 ライデンだけが驚くとは限らない。各地で転戦する三名も密集した蟻型が突然百獣型、医者型、そして参謀型に姿を変えた事に驚きを隠せない。だが、ライデンは三名の所に意識を向けられない。何故ならライデンが先にやるべきは目の前に出現した指揮官型を倒す事以外にない。例え力が本物だろうとそうとは限らないだろうと使命を果たすのが五武将--特に二の年以上もレットに代理を任せたライデンは責任以て土の将として未だ未だやれる事を示さないと名が形しか伴ってないと批判されて仕方がない!
(やるしかないな。だが、出来るか? こうやって俺に踏み出す足を後ろに下がらせるのが目の前の奴の狙いでもある。仮に後ろに下がらなくとも相手の出方を窺って動きが止まる。戦い慣れない者或は経験の少ない者は何時だって悲観に成りがちだ。だからこそ其処を衝かれて死んでゆく。だったらよお、『勝つ』と心の中で思いながら進むしかないだろうが!
 『死ぬかも知れない』と初めから思って戦う奴は心が如何も臆した病に罹って肝心の『勝つ』という思考へと至れないんだよ……其れは思考から行動に移って初めて運命は決まる!)
 ライデンは後の事は考えずに前に出る。すると指揮官型の姿をした密集型は既にライデンが踏み出したい二歩目を占拠して左膝蹴りを繰り出す--其れを右膝蹴りを交差させる事で外にずらして密集型を下がらせたライデン!
(何て奴だ。速度に関しては指揮官型を模倣してやがる。だが、強さに関しては指揮官型に遠く及ばない。及ぶなら俺の後手気味な膝蹴りで軌道を外に逸らされる事なんて絶対に有り得ないからな!
 未だ熟せない模倣なら……生き残れる!)
 そしてライデンの瞳は赤く輝き、密集型の予測を遥かに超える速度で密集型が踏み出したい箇所を先に踏んで斜め上の右切りで斬撃--惜しくも真っ二つとはいかずに胴体に切れ目を入れる程度でしかない!
(止まるな……流れるように踏み出せ、俺の肉体よ!
 奴が完全に止まる迄、俺は止まらないからな!)
 極められないなら決まる迄、斬撃を繰り出す。熟練した銀河連合ならば一撃で決めるつもりである無数の斬撃の隙を衝く事も容易い。だが、密集型は所詮模倣でしかない。隙を見付けるだけの動体視力を備えていない。此の侭ではやられる……そう考えるのか、八体の蟻型に分離した--其処を逃さずにライデンは一体又一体と流れるように斬撃して分離して僅か五十八秒で全て仕留めた!
「はあはあはあ」ライデンの瞳は元の状態に戻る。「何だ、普段よりも体が重く圧し掛かるじゃねえか!」
 ライデンは己が如何して此処迄疲労するかに気付かない。だが、焦らずに歩くだけの体力があれば平常通りに歩けるまで回復するのに時間を要さないと思考したのか……他の様子を確かめる。
(サイ団さんは心配ないな。あんな事言っておきながら……心配させやがって。一方でサンショウ丈さんは少し怪我が多いなあ。そして……あれは!)
 戦いは犠牲無くして勝利すればどれ程心の安息に成るか。だが、犠牲無くして勝利は届かない--

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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