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一兆年の夜 第十九話 遅かれ早かれ(八)

 未明。
 スポデューンの死から五の時が経過。ようやくイソプーは腸へと到達。
「はあ、はっあ、足、が、堅い!」
 彼の体力は限界に近付く。空腹による衰弱、酸の雨による無数の火傷が原因だ。
(だからといってここで足を止めれば死んだスポデューンに申しわっけがつかない!
俺は生きないと! だから柔らっかくなれ、俺の足!)
 願いは空しく、足は硬くなる一方であった!
「こ、んな時っに諦めるのか!」
 そう思った瞬間、奥の方を見渡すと見慣れた者が倒れているのを発見!
(あれ、は? まさっか棟一様!)
 ほんの少しだけ軽くなったのか、彼は棟一の所まで向かっていく!
「棟一様! 大丈夫ですっかあああ!」
「ん、ああ、だ、大丈夫だ」
 イソプーは棟一の側まで駆け寄る!
「こ、こっれは! 俺と同じ……いや異なるのは眼は、眼はどうっしたんですか!」
 棟一の身体は酸で傷だらけだ--それ以上に深刻なのが両眼に酸が注がれ、
二度と光が見えない事だ!
「暗闇の中で、声だけはわかるぞ! イソプー殿か?」
「ええ、あなたと同じく全身傷だらっけで御座います!」
「そうか。ところでそこにスポデューン殿はいるのか?」
 その問いにイソプーは曖昧な解答をする。
「スポデューンは現在、声も出せない状態っで御座います」
「そうか。彼はもう」
 棟一はスポデューンが想念の海に旅立ったのを感じた!
「……行きまっしょう、棟一様!」
「そうだな。でも俺はもう--」
「わかってます。俺が眼となって棟一様をお助けしっます!」
 そう言われた棟一は成人体型一に満たないイソプーの背中に触れながら共に腸
の奥へと進んでゆく!

 未明。
 棟一と合流してから六の時が経過。一向に背景は変わらない。
(どうしってだ? 鯨型はこんなに大きかったか?
 まるで南鬼ヶ島村と鬼ヶ島までの距離を歩くようっなものじゃないか!
 もの? まさか!)
「イソプー殿も気付いたか!
 どうやら鯨型の体内。鯨型が大きすぎるからではない!
 俺達自身が縮んでいるから広く感じるんだ!」
「俺達自身が縮んっでいる! そ、そう言えば!
 かつて放浪者だった大山ニャ朗が語る百話の一つに銀河連合百足人型の話を
聞いた事があっるんだ!
 それによるととある主人公である猫族の中年と鼠族の少年は百足人族に飲み
込っまれた時、体内が広く見えた! 実は主人公の体験では自分達が小さくなった
のが原因だったんだ! まっさかその話は真実だったのか!」
「真実みたいだな。と言う事は俺達が肛門に着く頃には空腹で死ぬかも知れない
のか!」
 二名の心に全ての望みが絶たれたモノが広がってゆく!
(そ、それっじゃあ今まで死んでいった生命の為に生きる事は何もっかも意味を
為さないのか! そ、そんなのを認めろっというのか!
 良くないよ! スポデューンが生きた証を示せないっのは良くないよ!
 良くな--)
 その時、二名の背後で津波に近い音が聞こえた!
「な、何だ?」
 その音は少しずつ大きくなる!
「こっの音は一体--」
 イソプーが振り返るとそこには胃の中にあった排泄物ごと酸の津波が二名に襲い
かかる!
「ま、間に合わなっい!」
 言葉通り津波は二名に瞬く間も与えず呑み込んでゆく!
(か、ら、ぁ、じ、が、の……)

 未明。
 イソプーと棟一は砂浜に打ち上げられた!
(ん、ん? こ、こっは?)
 イソプーの肉体はもはや起こす事すらままならない。
 一方の棟一は立ち上がり、イソプーがどこにいるのかを探した!
「む、むね、一様! む、ね、一っ様!」
 その声に気付いた棟一は声のある方を手探り、足探りで確認しながら進んで
ゆく!
「生きてるんだな! 自分達は生きてるんだな!」
「あっれ? 棟一様?
 そんな--」
「済まない! 俺達は生きてる! それで十分だな!」
 慌てて棟一は一人称を元に戻した!
「はあはあ、よか……ないよ!」
「は?」
 イソプーは棟一の背後に鯨型に呑み込まれたはずの牛亀型が棟一を食らおうと
襲いかかるのを見た!
「棟一っ様あああああ!」
 イソプーは限界を超えてでも身体を起こして棟一を左方に飛ばして牛亀型に左肩
を食われた!
「あああああ!」
「グ! ま、さかイソプー殿!」
「逃っげて下さい! あなたはまだ動けます! 俺はもうこの身体を動かすのも
やっとです!
 だからあなたは逃げて俺達死んでいった者達の為にも--」
「腰砕けた事を--」
 それを言わんと牛亀型は光が見えない棟一の方へ走ってゆく!
「陸上では俺の方っが速いんだ!」
 イソプーはすぐさま追いつき、牛亀型の左足を身体をぶつけて払った!
「逃げて下さい! 銀河連合は俺の命に代えても足を止めます!
 だから--」
「な、何を言うか! 俺を……自分をまだ天同棟一だと--」
「何を言おうとあなたは天同棟一っです! あなたは希望なのっです!
 だから生きって本当の天同の仙者を……!」
 イソプーは何故自然的でない事をいったのかはわからない!
 だが、そんな疑問をするよりも大事な事を優先した!
「ガアア! まだ動っけ! ここで足止めしってでも俺はああ!」
 牛亀型に左前足も食われ、徐々に追い込まれてもなお棟一に成りすます少年を
逃がそうとする!
 その姿を感じてとうとう棟一は無言で逃げてゆく--声がする方向の逆へと!
「姿が見えなくなっるまで戦わないと!」
 とうとうイソプーの身体は動く事が出来なくなった!
 それに気付いた牛亀型はゆっくりとイソプーを食べる。
(遅かれ、早かれ、お、っれ、ぁ……)




 ICイマジナリーセンチュリー六十年八月二十四日午前四時零分零秒。

 第十九話 遅かれ早かれ 完

 第二十話 二つの星 接触篇 に続く……

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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