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一兆年の夜 第百三十話 終わりの始まり キシェール最後の雄(捗)

 九月三十四日午後八時四十二分三十一秒。
 場所はアリスティッポス海。
 齢二十歳にして九の月と十五日目に成るライデンは齢十九にして二十七日目に成る志乃と甲板の上で語り合う--互いに厚着の侭で!
「--つまり其の為にあらゆる暦の勉強をして来た訳か」
「はい、そうです。私にはやっと生きる道が見えました。其れがICイマジナリーセンチュリーを受け継ぐ事です。其の為に私は彼の弟子に成って暦に関するあらゆる技法を身に付けるつもりです!」
 其の割にはもう俺達に見せているじゃないか--ライデンは既に望遠鏡で観測しながら正確な時間を割り出そうとする志乃の姿を目撃する。
「はい、色々と手続きがあって此処迄遅れた事は却って私に自習させる時の間を与えました。だから私はキッシェルさんに断られないように一杯一杯暦に関する勉強をします」
「とは言っても暦には正確には数の学問に於ける演算の技法も身に付けないといけないそうだ。俺もまあ必要な時に其れ等を使っている……とはいえ、完全に身に付けるには程遠く学者連中に何時も後れを取る己を見て困っているんだよ!」
 そう思うならそう思えよ--二名の前に肘から先を出すような薄着の青年は齢二十六にして七の月と十九日目に成るルドール・バルケミンだった。
「寒くないのかよ、そんな軽装備で?」
「何、心頭滅却すれば……へっくしょん!」鼻水を垂らして鼻呼吸さえも出来ない状態に成るルドール。「ウウウ……口呼吸は舌に直接息を吹き込むから余計な思考をさせるんだよ!」
「へえ、普段は口呼吸ばかりしてるのですか?」
「鼻が詰まると一般生命は口呼吸をして余分な思考をして結果として学習能力の低下を招くんだよ。此れはどの世界に行こうとも変わらない真理だ。というか普段から鼻呼吸する奴は此れに気付こうとしないから其れが当たり前の行為だと思っちまう傾向にある」
「だから何が言いたいんだよ、ルドール?」
「ああ、つまり何かを発見する生命は何時だって当たり前の事が出来ない或は当たり前の事をさも大発見のように喜ぶ訳だ……そしてこうゆう事を真剣に成れる奴が後世迄あらゆる事を残すんだよ」
「其の言い方は良くありません、ルドールさん」
 何だ、いきなり何をそんなに恐い表情で見つめるのは--ルドールは志乃が如何して注意するのかを理解出来ない。
「私が言いたいのは当たり前の事を如何して伝えようとしない者達の事を貴方は批判してるのです。遠回しでも私には良くわかりますよ!」
「ああ、此れか……バルケミン家は何時だって勉学に励まない連中を批判する一族なんだよ。如何ゆう訳か自分も又、そうゆう性格に成っちまうんだ……此れも又伝統なのか?」
「言い訳しないで下さい、ルドールさん。貴方だってそうして批判される事に更には言い訳して上手くはぐらかされる事を苛立つ筈ですよ!」
 ヘイヘい……暦の勉強は時として数学的な論理批判を生命に与えるもんだな--と志乃が二の年より前と比べて言い返す能力が向上している事に嬉しさと寂しさを露にするルドールである。
(誰だって己の事を全知全能だと思い込むのはどの世界へ行こうとも変わらない。けれども其れはあくまで井の中に居る蛙族の頂点的な感覚に過ぎない。世界はもっと広いし、本当は誰もがちっぽけさ。だが、其れで良い。ちっぽけだとわかれば未だ未だ一般生命は強く成れる……決して縦方向に強く成れとは言ってない。横方向に伸ばせ、とも偉そうに言えない。心と同じなんだよ、心と同じく中央部分をどれだけ維持出来るかに懸る。出来ないとすれば既に精神の平衡は崩れている証拠なのかも知れない。そうすると成長への意志は失われるだろう。
 と考えている間に俺達は例の大陸へと足を踏み入れる時が来た!)
 ライデンはキッシェルと出会う事を胸に躍らせながら今か今かと憂いの考えを取り払ってゆく。

(だが、此処が巨大な戦場と化して更には此れをきっかけに真古天神武は更に崩壊へ向かって加速してゆくとは誰も思うまい。俺だって如何して此処が大きな戦場に成るのかを降り立つ迄全然わからなかった。そして死んでゆく仲間の事だって考えられない程に!
 そうだよな、此処で死ぬのはキシェール家最後の雄だけじゃない--)

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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