FC2ブログ

一兆年の夜 第百三十話 終わりの始まり キシェール最後の雄(進)

 六月三十七日午前五時一分一秒。
 場所は真古天神武六虎府工業都市第三西地区菅原ライデン邸ライデンの自室。
 其処に齢三十六にして二十五日目に成るエウク蝙蝠族の中年逆崎さかざきコウモ助が開いている窓から入る。そして齢十九にして九の月と十五日目に成るライデンを叩き起こす!
「イデエ……何するんだ、コウモ助!」
「何っち、報せね叩き起こしたんど!」
「ど、如何しましたの!」齢十八にして二十七日目に成るプラトー人族の少女春風志乃が何事かと思ってライデンの寝室に入って来た。「ってえっとお名前は何と呼びますか?」
「逆崎コウモ助ど。エウク蝙蝠族ぢ普段ほこんの時間帯ね働いているんど」
「だからこそ俺達とは時間帯が合わないんだよ、夜行性だけに!」
 其れほ密かの悩みど--夜行性の種族は何時だって夜が主役に成って欲しいと願う……コウモ助も例外ではない。
「お前の事情は良くわかった……其れで何を報せに来たんだ?」
「お前宛ね其な……主な女性ご『翼紙』わ出しち来たんど」
 其処は俺達に気を使って『手紙』と呼べよ--足は在っても翼で器用に物を扱う空中種族でもある蝙蝠族のコウモ助に呼び方に関して注意しながらもライデンは左足に括ってある手紙を外して其れを広げて行く。
「宛は……飛遊翼さんか。どれどれ?」
 ライデンは読み上げる。
『元気ですか、菅原ライデンさん? 私は元気ではありません。というのも家の縛りで
困っているのではありません。両親が、両親が亡くなりました。其の悲しみに私はもう
如何して生きるのかを見失いました。
 何故生きるのを見失うのか? 実は婚約者だった彼は銀河連合との戦いで命を
落としました。私が嫁がなかった為に彼は私を振り向かせようと更なる謀り無き事に
染めて行きました。相手先の家も私の家の誰もが其れを止めようと必死に成った。
でも必死に成れば成程彼は戦いの道を歩むのです。そして三の年より前に、要するに
私が家に戻る頃には既に婚約者は居ませんでした。何故なのかを尋ねると両親は衝撃
の事実を告げました。其の衝撃のせいで今迄貴方に伝える事が出来ませんでした。
 私は罪深いのです。自らの勝手な行動のせいで彼を死なせ、そして年を追う毎に
相次いで母、そして父を死なせました。病の為とか其れも此れも全て私が勝手な行動を
採らなければ引き起こされる事もなかったのです。同時に私は心の底で家の事を愛して
いた。飛遊美兎と同じように家を、そして両親の事を其処迄愛を持っていた。
 其れだけではないのです、ライデンさん。実は貴方の事もずっと前から、いえ過ぎた事
は忘れましょう。こうして貴方が手紙を読んでいる頃には既に私は此の世に居ないの
かも知れません。言え、少し異なりますね。途中で思い留まって別の道を模索しているの
かも知れません。何故なら私は貴方を恐れて家に戻るように逃げてしまいました。其れを
償う迄は命を大事にしようと思っているのかも知れません。
 でも其れを記すには此の手紙の余白は少な過ぎます。如何か私の事は忘れて探して
下さい、貴方に相応しい人生を共にする最愛の付き者を!
                                 飛遊 翼より』
 其れを読み終えたライデンと志乃。二名は其々の反応をする。先ずは志乃の反応は次の通り。
「此の飛遊翼という女性は……私に似ております」志乃は依り籠めていた思いを吐き出す事を隠さずにいられない。「如何やら私も結団する時かも……いえ、少し熟慮する時間が欲しいです」
 一方のライデンは如何なのか? 志乃の独り言を聞く余裕もない程に思考する。
(飛遊さんは俺の事から逃げたのを悔いているのか。其れとも……いや、其処が問題じゃない。彼女の此の手紙は事実上の遺書じゃないか。どっちにしろ、もう二度と俺の前に姿を出さない事を宣言しているような物だ。
 だが……此の眼で確認する迄、飛遊翼と会えば良いのか? だが生きている保証もない。死に目を見るのは沢山だ・……俺には彼女と顔を合わせる資格がない。後悔しているのは彼女ではなく俺の方じゃないのか? 俺が銀河連合を宿している事を初めから気付いていたらこんな事には成らなかったのに!
 遅かれ早かれこんな事には……こんな、こんな--)
「……らさん? 菅原さん!」ライデンの我が戻る様に高くより高く声を張り上げる志乃。「菅原ライデンさああああん!」
「ウワアア……あ、呼んでいたんだな。済まない、我を忘れて」
「ところぢ如何するんど?」
「菅原さん、其の飛遊翼さんの所に向かいますか?」
「……いや、止めよう。今の俺はこんな状態だ。謹慎中の身故に此れからも--」
「其れがさあ? 今からさあ?」其処に齢二十二にして二の月と七日目に成るラエルティオ山椒魚族の青年山一サンショウ丈がある事を伝える。「ライデンの謹慎を……解くってさあ?」
「サンショウ丈か……朝から早いなあ。何……如何やら俺は外に出られるみたいだな」
「実はさあ? 一時じゃないのよ?」
「一時じゃないって……じゃあ完全解除なのか!」
「うん? まあそうね? 其れと……経済都市のあちこちで銀河連合が噴出してるんだよ?」
「何……如何ゆう事だ、コウモ助のおっさん!」
「おお、そんの事まあったのお--」
 呑気な場合ですの、逆崎さあん--志乃がそう叫ぶのも無理からぬ事である!
「そうだとわかったら事態の収拾に向けて俺は久方振りの実戦の場に出ようか!」
「はい……の前に」
「おや? 朝食抜き? 大丈夫? 朝食なら現地でも--」
 いいえ、今回の事態が終わったら私……キッシェルさんの所に行きます--突如として宣言した志乃!

(普通の空想話だったらこうゆう話を持ち出す事は死が近い事を意味するだろう。だがな、ちゃんと生き残っているのだよ。だから心配は無用だ。問題なのが此の後に志乃の為に俺がキッシェルのおっさんの所に向かう羽目に成ったんだよな。奴は何とあの寒そうな場所に移住しやがるからな。其処へ行く迄に色々と準備も必要で何と一の年も掛かったんだぜ……そう、代々の大王及び法王が最後に暮らすというあのアリスティッポス大陸になあ--)

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
FC2カウンター
リアルタイムカウンター
現在の閲覧者数:
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
Powered By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR