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一兆年の夜 第百二十九話 終わりの始まり 己の中にあるもう一つの己(終)

 午前十時一分二秒。
 齢十二にして二の月と二十三日目に成る神武人族の少年レット・テンタウはルドールの自己紹介を終える。其れからルドールの語る仙者の話も既に聞き終えた。
「成程、此れが噂の天同優央の弟君と思われる時間旅行者か」
「俺様は最早過ぎ去った話を聞かされてももう取り戻せもしないし取り戻す事もない。そうじゃない、今は俺様が何しにここに来たのかを説明する番だ」
「お前が逆崎のおっさんが言ってた凄腕の軍者だろ?」
「コウモ助から既に聞かされていたか……ライデン」
「ああ、お前は俺が知る唯一俺様でも勝てない軍者……軍者に成ったのかよ、其れ以前に!」
「極秘に真古天神武の者がテオディダクトス大陸で武者修行に出ていた俺様に近付いて、な。其れでライデンの現在地を頼りに今日漸く此処に来た訳だよ」
「新たな付き者かあ。全く縁が深いなあ、お前とは」
「まあ話は其処迄にして、良かったじゃないか。いざという時に止められる親友が居て!」
「其れでも俺様は信じられない。ライデンに液状型が憑いて事に!」
「俺も、だよ。何で俺は液状型が体内に寄生しているのかわかんねえよ!」
 ライデンは何処で寄生したのかを幾ら記憶の糸を辿ってもわからないでいた。
「余り深く考えるな。そうゆう難題は意外とあっさり解ける場合があるそうだ」
「六の年も短い年月なのにわかるのかよ、レット!」
「いや、其れは事実だ……ライデン君」
 本当なのかよ、ルドールさんよお--怪訝な眼で見つめるライデン。
「ああ教えてやるさ。脳のわかりやすい構造から始める……だから長く成るけど良いかな?」
「俺様は構わない」
「俺も同じだ」
「じゃあ始めるぞ……フウ」一旦深呼吸してから語り始めるルドール。「良いか、脳とはいわば何処にでもある引き出しに過ぎない。此奴は見たり聞いたりと言った体験からたくさんの情報を収納してゆくんだ。本当に覚えておきたい物や興味ある物は長期記憶に留めるように身近な場所に仕舞っておくんだよ。逆に直ぐ引き出せると勘繰る物や如何でも良い物は短期記憶と呼ばれる物で此奴は何時も隅或は塵箱に置かれやすいんだ。本来であれば危機的な状況とかは長期記憶に留まりやすいんだけど……ある時、ライデン君は短期記憶に其れを留めてしまったんだろうな」
「つまり俺は其の部分だけ短期記憶に放り込んだのか?」
「ああ、そうだ。だからいきなり思い出そうと努めても難しい。逆に時間を必要なく浪費してしまう。そうゆうのは焦らずに探していけば良い」
 其れは逆に重要な場面で思い出して動きを止めるかも知れんぞ--焦らずに思い出す事は場合に依っては危機に晒す事も論じるライデン。
「ライデンの言う事も正しいよ。実際、重要な時に思い出して動きを止めた生命が死ぬ場面を俺様は何度も見て来たんだ」
「未だたったの十二だったか?」
「ああ、齢十二だ」
「其の間にどれだけ生命が死んだんだ……辛い思いをしていたんだな、レットも」
 ああ、俺様の能力だけでは……誰彼も救える筈がない--レットは俯き、今迄辛い思いをライデンに語ってゆく。

(其の後は何時の間にか俺とレットの話ばかりが続いた。余所余所しくもルドールの奴は姿を消していた。気付かない俺達ではなかったが、別れの挨拶もせずに出ていった奴の事を構う暇もない位に俺達は話し合ったな。だが、レットがどんな話をしていたのかはもう俺は思い出せない。兎に角、辛い体験だった事はわかっていた。そして其れは予言の日と関連している事も、な。エピクロ島が銀河連合其のモノと化すようにテオディダクトス大陸は徐々に大地を銀河連合と化していったな。其れは同時にレットに救えない生命を見せ付けるかのように増殖してゆく。好きに成れない……此の表現は良くないが、そんな感じだ。
 止めよう、止めよう。こうゆうのを思い出すよりも謹慎中の夜に訪れたある出来事について思い出しておかないとな。次の話に移る前に俺とレットが謹慎中に行ったある組み手についてだ。確か--)

 午後十一時三十分二十七秒。
 屋上にてライデンとレットは素手に依る組み手を行う。其れは午後十時に始まり、延べ三十五回も繰り広げる。戦績はレット二十八勝とライデンにとっては分の良くない結果である。
「イデッ……ったく悔しい位に体も大きい上に技の質でもお前の方が上かよ!」
「いや、ライデンも凄い。俺様の疲れもあるだろうが徐々にではあるけど勝率が押され気味に成っている」
 其れを褒めとは呼ばないぞ--勝利数の多い側が口にすると少ない側にとって気分の良い物ではない事をライデンは代弁した。
「俺様の良くない点だな。まあ良い、其れも含めて来い!」
「上から言ってくれちゃって……言われなくとも来るさ!」
 ライデンが右足を踏み出す時、レットの側からすればある異変を感じ取る--既にライデンの意識は飛んでいて、動かしているのは内部に居る銀河連合だと察知した!
「ラ、ライデン……ウワアア!」間一髪で建物の外に投げ飛ばされるのを左足の踵を引っ掛ける事で防ぐレット。「ライデン……今から俺様が、止める!」
 ライデンを操る銀河連合はレットを喰らうべく、肉体の限界を超えた力で迫る。其れに対してレットは革仙者の力を解放して短期決戦に臨む--理由は時間を掛ければ掛ける程、ライデンは助からないと踏んだからである!
 其れは一秒にも満たない速度で決着!
「ハアハア……顔にある急所三点を衝いて!」レットは眉間に右人差し指を曲げた箇所で撃ち込んだ後に……「ハアハア……そうだ、此れは上手く行かない場合はライデンを死なせる事に成るが」上唇の上である人中と顎の上である下昆を素早く同様の箇所で打ち込んで昏倒させた。「済まない、ライデン」
 そしてレットはライデンを自室に寝かせて暫く体内に居る液状型が再び動くのか如何かを見守りながら夜を過ごしてゆく……

己の中にある銀河連合は今回の話であっても蠢くまま終わりを迎える事に成る。何しろ、あいつが俺の中で完結するのはまだまだ先に成る。次の話に移行しないと意味がない。何しろ俺の話は未だ未だ続く。次はキッシェル・キシェールと呼ばれるICイマジナリーセンチュリーを研究するキシェール家最後の雄についてと彼の研究が後継者に受け継がれる話さ。其処でも俺は関係し、やがて後継者は行方を晦ましてICイマジナリーセンチュリーは後世にも引き継がれるのさ。
 俺にとってはわからない事だらけのICイマジナリーセンチュリーだが、此れは非常に重要な物さ。何しろ、遠過ぎる過去にとって外せないモノでもあるしな。
 其れじゃあ今回は此処迄。今回も尻切れ蜻蛉族で申し訳ない--)

 ICイマジナリーセンチュリー三百十三年三月十八日午前零時零分五秒。

 第百二十九話 終わりの始まり 己の中にあるもう一つの己 完

 第百三十話 終わりの始まり キシェール最後の雄 に続く……

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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