FC2ブログ

一兆年の夜 第百二十九話 終わりの始まり 己の中にあるもう一つの己(覚)

 三月十日午後八時四十三分二十一秒。
 場所は犬猿道元第四関門鍾乳洞。
 ライデンと翼は最後の関門にて齢二十一にして九の月と六日目に成るロディコチーター族の青年にしてチーチェンジャの子孫に当たるチーチェイス・バーバリッタと最後の接戦を繰り広げる。
(チーター族の癖に何て持久力だよ。先祖の穢れ走り道への思いが短期走強く長期走諸得手成らずなチーター族に持久力を身に付ける遺伝子を与えたというのか。だが、持久力を身に付けると却って瞬発力を齎す白筋の割合が減少して却って強みを弱める筈だがな。若しや相武様を始めとした天同家の者達や鬼族が身に付けている桃色筋肉に仕上げているのか? だが、桃色筋肉の大きな割合は瞬発力と持久力を備える代わりに全体の重量を押し上げて逆に持久力に向かない筈なのだがな。何方にしてもチーチェイスの遺伝子は穢れ走り道への思いに依って変化を起こしているとみて相違はない!)
 ハアハア、いい加、減諦め、な--既に喉が限界に近いにも関わらずまだ喋るだけの余裕があるチーチェイス!
「……」一方のライデンは喋る事は体力の浪費と考えて答えない。「……」
 全く……な、あ、れは--突然、チーチェイスは足を止めた。
「何を……ウオアアあ!」
 菅原さぁ、んん--ライデンと共に足を止めずに走り続ける翼はライデンが吹っ飛ばされるのを見て反射的に叫ぶ……が、其の声は枯れ気味で切れが良くない。
 何方にせよ、三名の前に現れた熊型。大きさとしては成人体型一とコンマ一しかない。重量は熊型だけあって人型よりも筋量豊富で木登りも楽に熟せ、更には瞬発力は尋常ではない。一方で熊型は瞬発力に重きを置く分だけ持久戦に向かない傾向が強い。其れは象族も獅子族も肉体派の銀河連合が如何に持久戦を疎かにしやすいかの事例であろう。
 だが、其れはあくまで平常時での話。今は三名共、穢れ走り道で優勝を目指して心臓の限界を懸けて走っていた直後。故にたった一体の熊型相手には三名の体力は心許ない。
「ぜえぜえ……痛みが、ねえ」既に心肺の痛みの方が打撃で受けた痛みよりも気に成って仕方がなかった。「つーか、包丁なんて……、いや、こんな、時に……立つのも、やっと、かよ!」
「菅原、さん?」
 ハアハア……素足の俺達で、こ、此れ、に、勝、てる、のか--条件が厳し過ぎる戦いは今も軍者を続けるチーチェイスにしても理解が早い。
「勝つ、しか、ねえだろ、う。く、体が、重たい!」
「ハアハア……き、決ま……キャアア!」
「飛遊さぁ……ゲホゲホッ、喉が痛え!」ふらついた肉体で熊型の左側面の死角を衝こうと動くライデン。「何だ、よ、此の重さは!」
 ああ、坊主の首に、ゲホゲホッ……ハアハア、うわぁ--チーチェイスは見た……熊型の右前足の爪がライデンの首筋の動脈を切るのを!
 そして血飛沫と共にライデンは自ら暗闇の中へと沈み込んで--

(そうだ、あの時俺は死んでいないとおかしくない位に深く動脈を切った。痛みは一瞬だし、何よりも血の量に従って脳に行き届く血液は少量に成って意識を失い……死ぬ筈だった。だが、俺は突然生命が変わったみたいに立ち上がって後少しで死ぬ筈だったチーチェイスや翼を助けた。いや、助かった方は次のような反応を示す位に--)

 午後九時一分二秒。
 ライデンは死んでもおかしくない量の血を噴き出しながら小柄な熊型を素手で引き千切って倒すではないか。其の姿に翼は疲れも忘れて悲鳴を上げる。
 まるで……銀河連合--チーチェイスはそう評した。
 だが、事実であった。ライデンは既に銀河連合と化して二名に襲い掛かる。そんな時に大地が揺れるような音が響き渡り、上からサンショウ丈が落下してライデンに乗り移った銀河連合に圧し掛かる!
「今です、サイ団?」
 ああい、うおおおおおい--そしてサイ団はチーチェイスの上を飛び越えて行くと同時にサンショウ丈ごとライデンを自然彫刻に吹っ飛ばしたのであった!
「いでえ? ハアハア、間に合った?」
 全くだい、足間の掛かる坊やだい--其れからサイ団はとある道具を背中から降ろして其れの蓋を開けるとライデンの口に流してゆくのだった。

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
FC2カウンター
リアルタイムカウンター
現在の閲覧者数:
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
Powered By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR