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一兆年の夜 第百二十九話 終わりの始まり 己の中にあるもう一つの己(説)

 午後七時四十一分三十二秒。
 場所は居間。居間で食事をするのが普段のライデンの生活。今回は異なる。此の時間帯にはライデンの他に勝手に乗り込んだルドールも居た。然も食事中もライデンを苛立たせる事を平然と言っては彼を震え上がらせる。
(今にも頬を何回か跡が残る程抓ってやりたい。俺が丹精込めて作った料理に幾らか注文を突き付けて俺は疲れるのだよ。今日は早めに仕事を切り上げてゆっくりと一名だけで趣味の包丁鑑賞をしようと思っていた矢先にこんな人族の野郎が乗り込んでは色々と自分の話だけを展開されるってのがな!
 と色々考えたい事を巡らす内にあいつがやって来たな!)
 あいつとは齢二十歳にして二十三日目に成るエウク人族の女性飛遊翼。彼女は今もライデンの付き者として度々彼の様子を伺う。
「御傍に来ました……って御客様?」
「君は……知らんな」
「当たり前だろう、幾らあんたの親父さんとポニー輝彦が友者でも彼女の事迄は知る訳もない」
「だな。ンで名前は?」
「エウク人族の飛遊翼です、宜しくお願いしますわ」
「飛遊……春風美兎こと終身名飛遊美兎の意識が此の時代迄保たれるならば君の姿を見て鏡に映す何かを感じるのではないか?」
「いきなり、何を言い出しますの?」
「いや、気のせいだ。自分は心理学が専門でついつい相手の全体像を確かめたく成る性分だ」
 其れと俺の料理に幾らか注文付けるのは別だろうが--ライデンは未だに根に持つ様子。
「何か知りませんけど、貴方様は他者と付き合う事が苦手ですね」
「知った風な口だな。其れも飛遊の雌の性質か?」
「違います、私自身の考えを述べております」
「そうか、考えか。此処でもなんだから先に自分が如何して菅原ライデンの所に尋ねるかを教えよう」
「さっき言ってただろう、ポニー輝彦の縁で此方に顔を出したって?」
「其れはあくまで父と真島ポニー輝彦の関係の話だ。自分は少し異なる理由で君に尋ねて来た」
「どんな理由だよ」
「二面性って知ってるか、菅原ライデン君?」
 二面性--初めて聞いた言葉なのに如何ゆう訳か唾を喉に通した音を出す俺。
「二面性ってマンドロン硬貨みたいに表と裏の面があるという物ですのね」
「其れだな。表側は数値を表しているのに裏面では製造年月日が記されてある。例えば……うーん、ICイマジナリーセンチュリー表記は未だ解明が十分じゃないのか?」
「あれは学者曰く総合年数を示す為に使われるモノで実際の暦を表すには値が大き過ぎるって各書物で記されているぞ」
「其れでも自分はICイマジナリーセンチュリーで表示されるべきじゃないかなあ、と思う一名だ」
「もう良いだろ、ICイマジナリーセンチュリーの話は。二面性の話をやる理由を教えろ!」
「其れが誰かに物を頼む態度か?」
「何か菅原さんではありませんが、何となくですが……腹立たしく感じて来ましたね」
「そうゆうのは口にするような物じゃない、飛遊さん」
「まあ良い。兎に角、自分が知りたいのは菅原ライデンだ。単刀直入に言うと君は己の中にある制御出来ない自分を理解していないな」
「制御出来ない自分を?」
「菅原さんは菅原さんでしょ? 裏なんてありません」
「其れは思い込みだ。自分は何も父の遺言に従って盲目に会う訳じゃない。しっかりと経歴を調べて来たんだよ、例えば幼い頃に地下通路で--」
「待て、何故其処迄知ってるんだよ!」
「未だ其処迄言ってないだろう。そうゆう反応をするという事はつまり未だ心の傷が残っている証拠だな」
「何でだよ。百獣型を、俺は百獣型を去る年に其の恐怖を払拭した筈なのに!」
「其れはあくまで一時高揚に過ぎない。心理学とは悍ましくて、払拭すると必ず出来る空白が如何しても厄介でな。其れを埋め合わせる為に未だに解決済みの問題を取り上げて他の要因を探し求めるのだよ。つまりだ……払拭したという事実だけが残って未だに心の傷は塞がっていないな!」
 ウグッ--ルドールが告げる心理学の罠!
「つまり未だ塞がっていないのですね?」
「二度も確認させるな。自分が問うているのが菅原ライデン君の理解出来ない行動の数々だ。其れも既に知っているぞ。身に覚えのない行動は普段意識してないだろ?」
「そ、其れは?」
「まあ、じっくりと尋ねるさ。じゃあ此処で」言うだけ言って重要な部分を伝えずに席を立ち、家を出ようとするルドール。「そうそう、心の傷を埋め合わせる方法として常に生命は異性と交わるそうだ。そろそろ親の許可を取らなくても良い時期に入ったのではないか?」
「其れは何を言ってるのですか?」
「何、勧めているんだよ。実際、自分は研究の序に嫁を儲けて彼女をテオディダクトスに残して居る。まあ、子供が居るかは知る由もないけどね」
 何て出来の良くない夫ですか、貴方様という方は--とさも自分が出来の良い生命であるかのように言って見せる翼。
「じゃあな。交わりは大切だ、子を儲ける事は全生命体の希望の一環として大事な儀式だ!」
 心理学者だが、子孫繁栄の重要性を何よりも尊重する掴み所のないルドール・バルケミンだった--彼の好奇心はバルケミンの血を残す事に繋がるとは自らの与り知らぬ所である。

(奴は好き勝手言って二度と出会わない……何て事はない。正直、奴は次の日も尋ねに来たそうだ。まあ何しろ、俺と翼が密接な関係に成ると信じ切っていたのだからな。だが其れは有り得ない。忘れたとは言わせないぞ、最愛の雌とは飛遊翼ではない。彼女は俺の異性への接し方を大きく変えた生命であっても大切な雌に成る事は……なかった)

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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