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一兆年の夜 第百二十八話 終わりの始まり 其れは正に百獣が如く(終)

 午後三時零分一秒。
 徐々に防戦ばかりが目立ち出すポニー輝彦。百獣型のあらゆる戦いに対応する順応力の前では経験値が豊富なポニー輝彦も最早此れ迄なのか? そう思った時、ライデンは右前足を踏み出して片手で雄略包丁を抜くと勢い良く、百獣型目掛けて切っ先を立てながら投げた--其れは一瞬目にした百獣型は最小限の屈みで回避された!
(やっぱり回避されたか。だよな、震えた足で踏み付けながら投擲しては望んだ方向に飛んでくれる訳がない……だが、此れで良い!)
 ライデンは初めから百獣型を倒すつもりで投げたのではない。僅かに隙を生む。其の僅かで流れを決定付ける材料が欲しい……其れが投擲。其の意味する所--即ち、ポニー輝彦の反撃開始の狼煙!
「うおおおおおうん!」左前脚で踏み込んで四足歩行包丁の一本を跳ね付けながら百獣型を引き寄せながら反対の膝で顔面を蹴り込む。「散々痛め付けた分は倍にして返してやるぞおおうん!」
 其れは正に長年の経験が産んだ才能だけでは到達し得ない適材適所の連撃。百獣型も其れには対処する事も儘成らず、尚且つ雄略包丁の存在が頭に焼き付いて離れない。そして、素足の連撃への対処が遅れて……其れから右足で飛ばした四足歩行型雄略包丁を左後ろ脚で掴むと、右前足の脛から先を切断--更に流れを決定付かせてゆく!
(全く出来るじゃないか。爺さんはそうでないと困るんだよ)
 そう言いつつも飛ばした雄略包丁は拾うライデン。ポニー輝彦に功績を譲る事をした理由は他にも存在する。
(出来るなら爺さんは俺に何も譲らない程の老碌を期待している。老者は何時だって若者を懲らしめに来る。度が過ぎれば足を引っ張る……そうゆう根性が老者には存在するからな。だから俺は其れを信じて爺さんが勝つのを信じる!)
 信じる者が一名でも居れば一般生命は孤独者よりも強く成れる。信じられるからこそ一般生命は仲間の力を得るかの如く強く成れる……そんな感じでポニー輝彦は更に百獣型の左後ろ脚の膝から先を斬り落とす。其れから渾身の喉元への白刃取りからの返し刃の突きが炸裂--
「何……爺さんが、胸元を、貫かれる!」
「アグ……うううん、流石、だあい」だが、致死量の一撃を受けたポニー輝彦の表情は笑みで溢れる。「だが、やっと……倒せえええいる!」
 ポニー輝彦が繰り出す最後の一撃--其れは包丁に依る貫通……ではなく、左前脚の膝蹴りに依る倍返し!
 百獣型は自らの放った一撃をほぼ倍化して後方成人体型十五より先にある木の幹が叩き折られる程吹っ飛んで其の侭絶命--首が既に粉砕骨折して、大きな膝の跡を残しながら口から舌を垂らして!
「ハアハア、はああう」そして、ポニー輝彦は横たわる。「はあはあはああん」
「爺さん!」
 先に駆け付けるライデンだけじゃなく、同僚だったサンショウ丈と立てないながらも駆け寄る翼。三名共ポニー輝彦の為に駆け寄るのだった!
「うわあ、こんなの……如何して、だよ?」
「抜いたら直ぐに死にます。でも抜かないと苦しみながら死にます」
「言わなくても良いだろうが。百獣型の鮮やかな返し刃の前では回避する余裕もない程だ……だが、其れでも爺さんは期待に応えたんだよ!」
「ああ、息子達が、集まるううん」既に脳に血が行き届かないのか、三名の姿を先立たれた子供達の姿にしか見えないポニー輝彦。「そう、かあああい。だよなああい、父さんは、現世を生き過ぎたああい」
「まさか真島さんはもう--」
「いや、言わせても良いよ?」
「……だな」一瞬、山椒魚族の言葉に戸惑いを見せつつも漸く何が言いたいのか理解するライデン。「ずっと息子達の為に生きて来たんだ……俺達がそう見えても構わないだろうが!」
「ハハ、もう直ぐん、だ。い、行くよおお……」
 そして、ポニー輝彦は帰らぬ生命と成った--胸元に刺さる自らの四足歩行型雄略包丁を墓標にして!

(此れが俺にとって百獣型の苦い思い出を超えたお話さ。ポニー輝彦のお陰で俺は踏み出す事が出来た。功績こそあの爺さんに譲った。だが、俺があそこで行動しなければ……ポニー輝彦は生きられたのだろうか? だが、そんなのわかる由もない。死んでしまってはもう遅い。其れにあいつが身を以って戦いの術を教えなければ強く成る道が如何ゆう物かを知る事も出来なかっただろう。他の一般生命同様に見えない道を行ったり来たりしていただろうな。そうゆう訳で今回は此処でお終い。
 最初の山場である最強の百獣型との戦いの話から次は俺自身の話に移る。俺自身の中には時には如何しようもない話も存在する。次回からは其れに気付いてゆくお話だ。さて、何処迄意識が保てるのか……)

 ICイマジナリーセンチュリー三百十二年十一月百十四日午後三時五分五秒。

 第百二十八話 終わりの始まり 其れは正に百獣が如く 完

 第百二十九話 終わりの始まり 己の中にあるもう一つの己 に続く……

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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