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一兆年の夜 第百二十八話 終わりの始まり 正に百獣が如く(遇)

 午後二時二分零秒。
 ライデンの窮地に駆け付けるのは……翼。彼女は恐怖と格闘しながらも誰かを守る為に望遠刀を振るう。百獣型には全て躱されるものの、ライデンの所に駆け付ける事に成功。彼の方に腕を回して運んでゆく!
(有難い……だが、俺だけしか助からない!)
 ライデンしか助からない。己を助ければサイ団は死ぬ。此れは如何しようもない真理。ライデンは感情で何でも判断する生命ではない。だが、悲しい思いが時に理屈をへし折る事だって多々ある。若いライデンは其れを未だ認める段階ではない。
(何だって俺は力無き生命なんだ。サイ丼をむざむざと死なせる選択肢を翼にやらせるんだよ。力があればあの百獣型を……今度こそ子供の頃の過ちを払拭する機会を得られるというのに!)
 其れから翼はライデンを連れて鹿族のように崖を滑走しながら百獣型を撒く事に成功する。

 午後三時四分五十八秒。
 其処は嘗てコウモ・リックマンが最強の百獣型から逃れる事に成功した隠れ処。
 以来、コウモは百獣型を倒す事が自然数の最終定理を解く事が出来る指標にするべく奔走。様々な困難の末に最強の百獣型は倒れ、コウモは其処で自然数の最終定理も何れ解明出来ると確信した。そんな場所に避難したライデンと翼。二名はサイ団の無事を祈りつつも悲観的な話をし始める。
「サイ団はもう助からない。銀河連合の性質を考えれば--」
「其の前に……気分は大丈夫なの?」
 ウウ、言われてみれば……オエエええ--脳震盪は一の時過ぎれば収まる様な症状ではない……場合に依っては死も免れない危険な物である。
「脳を恐らく……三度も揺らされたのでしょ? 普通なら二度目の時点で間違いなく死んでいるのよ。なのに菅原さんは、きっと死とは程遠い位奇跡的な具合で生きてるのも不思議なのよ」
(駄目だ、喋る方法が忘れてしまった。胃の内容物を吐いた際に思い出す様に記憶喪失を起こしやがって!)
 確かにライデンは未だ死ぬような運命ではない。此の時代では確実に生きる事が約束される。其れでも脳震盪は運命に愛されていようとも脳卒中、脳溢血、脳梗塞同様に軽い物ではない。翼がライデンを不思議がるのも当然の反応である。
「藤原さんを信じましょう。きっと大丈夫です。彼は只では死なない生命だと思います」
「うぐ、う、ぐぐぐ」未だ喋るには調子が戻らないライデン。「はあはあ、はあ」
「無理しなくても良いのです。脳を揺らされた状態で喋るには一の日は過ぎないといけません」
「はあはあはあ」
 ライデンは喋りたいのに脳の状態から其れが許されない。脳は休息を求めている。脳は現状の確認を求める。
(眠りたい、眠りたい。余りにも気分が良くなくて、眠りたい!)
 そしてライデンの意識は其処で閉じる。

(其の後、俺は二の日も眠っていたな。起床して早々に藁の病室だと気付いた。だが、何故病室内なのかを直ぐには思い出せなかった。そりゃあそうだ、三度も脳震盪起こしたら記憶の大部分が吹っ飛ぶに決まっている。だから俺はスネッゾルの世話に成りつつも傍に居た翼から色々思い出す作業をして貰った。全部を思い出したのが凡そ目覚めて二の日の後だ。其処でわかったのは……サイ団は間一髪で地元の奴等に救助されたそうだ。だが、其れが意味するのは現地で救助に当たった三名中二名が百獣型に喰われた事さ。そりゃあそうだ、あれは最強の百獣型である以上は死者が出ないなんて都合が良過ぎるからな。
 其れから--)

 十二月一日午後二時二分三秒。
 場所は大陸藤原中臣地方新クレイトス峡谷東側。
 ライデンは未だ左腕が十分ではない状態で再び挑もうとしていた。傍には火の将であるサイ団の後任として水の将サンショウ丈が駆け付ける。
「止めてよね? 怪我者は大人しく病室で引き籠るべきだよ?」
「サンショウ丈さんよお、俺は越えないといけないんだよ」
「山一さんの言う通りです、菅原さん。意地は却って死期を早めますよ!」
「翼さん、俺は如何してもあいつを倒して心の中にある蟠りを払いたいのだよ!」
「蟠りの為に俺達の事を……何という覚悟だああい」サンショウ丈だけじゃない、齢四十五にして四の月と四日目に成るエウク馬族の老年真島ポニー輝彦も駆け付ける。「だが、俺達では止められんな……けれども死なすつもりは全くなあああいぞおおう!」
「何であんた迄来てるんだよ。余命短い一名息子の為に人生の全てを使い果たすんじゃなかったのか!」
 ああ、其れかああい……俺は取り残されてしまったああよお--運命は親を先に死なせるように出来ていなかった。
「だからポニー輝彦さんが君の代わりに来たのに……君は意地を張っちゃって?」
「そうゆううん物だ、サンショウ丈。お前も若造なあああらばあ理解してやれ、若造の如何しようもない意地ってえええいやらを!」
「全く雄心が全然わからない。パパもそうだったのよ、本当に!」
「又俺を助けるつもりだな、翼さんよ。だが……今回は雌の出る幕じゃないと思うぞ」
「そうやって雄は雌を戦場から離すのでしょ?」
「翼さん、気持ちを全部理解出来ない俺達ではある」雄である以上、雌心の全てを知り尽くせないライデンは次のように心を読み取る。「でも、雄の美学というのを何とか察してやって下さい!」
「はあ、頑張ってみますよ」
「ハッハッハアアイ、雌雄平行線を辿るって訳だああい。俺が生き残った暁には真諺として投稿してやるぞおおい!」
 何か去る年より前と比べて雰囲気が明るいね、ポニー輝彦さんは--とサンショウ丈はそう評した……が。

(此の後、俺達は再び百獣型と対峙してゆく。だが、此の時のサンショウ丈さんも俺もは全く理解してなかった。翼だけだ、ポニー輝彦の事を理解していたのは!
 子供に先立たれた親の気持ちは年月を掛ければ流されるような物じゃないって事位は……如何して俺は知る事も出来なかったのか!)

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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