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一兆年の夜 第百二十六話 終わりの始まり 其の名はテンタウ(終)

 午前一時零分六秒。
 ライデンはレットを守る為に速度も重さも圧倒的格上の馬型に向けて足を止めた侭、両手を広げる!
(考えても良い結果は浮かばない。かと言って体で反応出来るようには上手く出来ない。だったら俺は奇跡を信じる。奇跡とは運だ。運とは運命だ。運命とは命だ。命とは魂だ。魂とは……俺の砕け得ぬ意志が導く物だあああ!)
 心の中で思う事は全て言い訳。どれだけふざける気が無い生真面目な生命でも一度、危うい状況に追い込まれたと知れば言い訳して其の状況を好転するよう解釈するしかない。解釈とは即ち、誤りを上手く変化させる術。ライデンは自らの誤りを自覚していた。其れは力が十分あって強い者達の中に入ると思い込み、大切な者を死なせてしまった。其れを繰り返さない為に彼は強さとは何かを模索し始める。だが、模索は未だ十分ではない。そんな状態でライデンは家族同然のレットを守る為に準備が侭成らない事を上手く変化させて立ち向かう--守る為の戦いの始点に漸く踏み始めた瞬間!
(何も思うな。上手く行くという錯視にも惑わされるな。もっと信じられない事が起こると思ってもいけない。俺は此の瞬間を……何身も考えずに委ねる!)
 そして、吹っ飛ばされて成人体型二十離れた巨木に背を打ち付けて意識を暗闇に沈める!
(し、て、や、た、ぁ……)













 午後八時二分八秒。
 場所は不明。
 其処には細木で建てられた仮設民家の中。ライデンは目覚める。
(此処は? 俺は……死んでないのか?)
 ライデンは直ぐには上体を起こせない。何故起こせないかを一瞬では気付かない。
(如何して……そうか、背中に重たい物がぶつかって背骨が折れたのか?)
 目覚めたかエエ--目覚めて直ぐに覗く顔と言えば……スネッゾルの蛇顔だった。
「ウワアア……って先生か。あれ?」だが、痛みが走る物の僅かに上体を起こす自らの状態に疑問を抱く事に。「おかしいな…・・かなり痛みが走った筈なんだけど?」
「背骨は奇跡でも起こったかのように無事だったエエ。無事じゃなかったのは……激突した其の胸骨エエ」
 スネッゾルが唇で押し付けるライデンの胸骨。ライデンは叫び、再び仰向けに寝転がる。
「……ツウウウ、ハアハア」
「しかしエエ、激突の際にまさか君の肘打ちが奴の動きを制限するとは思わなかったエエ」
 肘……俺は其れをやったのか--全く身に覚えがない攻撃にライデンは動揺の後に嬉しさを滲ませる状態にある。
「此れは、素直に……の前に」ライデンは思い出す様に彼の容態を尋ねる。「レットは……レットは如何した!」
「彼なら心配ないエエ」スネッゾルはライデンの右隣に敷かれる白布を動かして要らぬ心配を解消させる。「幾つか重い打撲痕はあったがエエ、消毒液と適切な包帯巻きをすれば一の月経たずして全開はするだろうエエ」
 有難う、有難う、有難う--今も安らかに眠るレットの寝顔を見てスネッゾルに感謝の意を述べる。
「オオウ、二名共大丈夫ダッタカ……ッテ先ニライデンが目を覚ましたか!」
 心配で駆け付ける気の良い青年カン烈。見舞いに来たカン烈の素顔を見てライデンは心の底から喜び、再度上体を起そうとする物のスネッゾルに再び胸骨を叩き込まれて悶絶する。

 十一月九十七日午前八時一分一秒。
 未だ退院も儘成らない二名。ライデンとレットは先の話の続きをする。
「そうか、天同烈闘には真古式神武最後の最高官だった天同優央やさおの他にも無名の子供が居たな」
「最早天同優央の弟だったか如何かは俺様にもわからない。俺様が此の時代に来た事は正しかったのか如何かすらもわからない」
 いや、正しいさ……俺が保障する--ライデンはそう断言してゆく。
「だが、俺様は父親である筈の名前を物心付く前にライデンに名乗ったんだぞ」
「其れでもお前はレット・テンタウだ。お前は未だ中心的存在としては遠い。其れも事実だろう」何故ライデンはそんな事を口にしたのかは後に成ってもわからない……「良くわからんけど、俺はお前がちゃんと自立する迄……此の命を燃やすつもりだ」だが、本能の侭に彼は語る。「だが……今は其の時じゃない!」
「ライデン……だが、今度みたいに又、無茶はするなよ」
 しないさ……未だ、此処は俺の終着点じゃない--ライデンは右拳を突き出し、左拳を突き出したレットと弾き合いながら契りを結んでゆく!






 未明。
「--ってな訳だ、ってニャレーダーは?」
 ライデンは既に時間が過ぎてニャレーダーが元の時代に戻っている事に気付く。そして、迫り来る自らを死へと至らしめる銀河連合という名の隕石群。
「まあ良いか、そろそろ……ゲフウッゲッハウッ、時間切れだ!」
 二度と喉から声を発する事はもう無い。代わりに彼は俯せの状態で思い出を振り返ってゆく。
(此処から先はレットとの話から、へ……あれも語っておかないとな。そうだなあ、俺が五武将に成る迄のお話だよ。其れは突然、声が挙がった訳じゃない。俺にとってさっき迄の話とは俺が強さへの拘りを追及し始めるきっかけに過ぎない。其れにレットとの友情の物語? レットとの友情は幾らでも語れる。他にも友情話がある。そして最愛の雌との甘い話もな……幾らでも思い出せるからな。こんな隕石群が迫るという中で!
 此処から先は……俺が振り返るしかないなんて悲しいなあ。一杯語りたいのに……こんな終わりの始まりだなんて!)
 終わりの始まりは未だ未だ続く……

 ICイマジナリーセンチュリー三百十一年十一月九十七日午前八時十分一秒。

 第百二十六話 終わりの始まり 其の名はテンタウ 完

 第百二十七話 終わりの始まり 五武将として に続く……

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Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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