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一兆年の夜 第百二十六話 終わりの始まり 其の名はテンタウ(覚)

 三月七日午後一時三分一秒。
 場所は迷宮の洞窟入り口前。
 普段は鴨下政治塾が其処で開催される。だが、此の時代に成ると其の政治塾は既に塾生が足りない事を理由に三十四の年より前に廃校。以来、此処は軍者や暇を持て余す子供達の遊び場と化す。
「おいでおいでえ!」ライデンは生後二の月を過ぎた赤子と遊んでいた。「はしってえ!」
 其の赤子は生後十の日に寝返りを打ち、十三の日に這いずり回り、二十の日に立ち始め、一の月を過ぎる頃には歩き出し、そして三十八の日に走る所迄成長。現在では銀河連合ごっこで遊ぶ迄に走り回れるように成った!
「まだまだだよなあ、おまえは。やっぱぼくがいちばんはやい!」
「あうあう、あう、あう?」赤子はまだ名前が付けられていない。「あああた?」
 ん--ライデンは其の赤子が何かを覚え始めるのを感じた。
「てん、てん」
「アマテラスことばを? もしかしておまえは、あまてらすことばを?」
「あま、あま、て、て、ら、ら?」
「ひょっとしてことばつうじるの?」
「つう、つう、つう?」赤子は徐々に言葉を習得し始める。「じ、じ、じ、る?」
「まだまだそうゆうのははやいっておじいちゃんがいってたからね。だからおまえはことばおぼえるのはあとにしてよ」
「まだ、まだ、まだはやい?」
「え?」子供にとって己よりも幼い生命が追い付くだけじゃなく……「そ、それはまだはやいからさ」追い越すと成れば危機感を覚えるのは自然の摂理。「だ、だからもっとはしっていればいいからことば、ことばおぼえなく、ていいよ!」
「おぼえなくて、いいよ? おぼえ? あ、いいから?」
 如何したのだ、ライデン--其処へラディルがやって来る。
「あ、おじいちゃん。じつはあかちゃんがことばまでおぼえはじめたよ」
「いやいや、這い這いを飛び越えて歩いたり走ったりしても流石に言葉はそう簡単に--」
「いやいやいやいや? はえ?」
 何……何て赤ん坊だ--思わず尻餅を付いてしまったラディル。
「だろ? あかちゃんなのにことばおぼえたよ。こんなことってあったの?」
「ないな。抑々言葉なんて長い年月を掛けて脳に叩き込んで更には羅列を手足尻尾翼のように理解するだけの脳の拡大が無いと難しい高等技術だったと死んだ父親が言ってた」
「られつ? こう、とう? んん?」
「またおぼえた。どんどんえっとなんだったっけ? なんとかにしていきはじめたって」
「手足のように……其れが何か名前も知らない赤ちゃんにわかる訳がない」
「なまえ? なまえ? ね、なまえ?」
「ああ、何か名前に反応しているみたいだ」
「うん、そうだね。でももうそんなのおぼえさせなくていいって」
「いや、気のせいかも知れない。だから試しに赤ちゃんの名前は何か尋ねてみるのもアリだ」
「たず、ねて、みる、の、、お?」
「おい、赤ちゃん。名前というのはそうだな、俺は菅原ラディル。普段はラディル、と呼んでくれ」
「すが、わら? ら、ど、ぅ、ぃ、うる?」
「ラディル、ラディルだ」
「らどぅぃうる、らでぃうる、らでぃ、る?」
「そうだ、其の調子だ。其処で赤ちゃん、君のお名前、は、お名前は言って、くれませんか?」
「おな、まえ、は、は、いって、いって?」
「此のように」ラディルは自身の掌を開くように口から出す事を『言う』と表現。「此のような事を、『言う』だよ。『言う』って、だよ」
「いう、いう、こおおおお、いいいいいううううう」
 ああ、もうこれいじょうなにもおぼえないでえ--危機感を覚える年頃の子供であるライデン。
「良いじゃないか。如何せ名前は言えないし、抑々名前なんて後で明らかに成るんじゃないか?」ラディルは楽観的な生命であるのか、記憶について過剰に期待を寄せる模様。「だから若しかすると覚えているかも知れないだろう、自分が付けられた名前について」
「そんなのぜったいにないよ。ためしにいってみてよ、おまえ」
 なまえ、なまえ……れっと、れっと、れっと--生後間もない赤ん坊の記憶には其れが何なのかは今でも明白ではない。
 だが、ライデンとラディルは驚きを隠せないし、隠し通せる筈もない。
(れっと、れっと、レット!)
 なまえ、なまえ、れっと、れっと、てん、てん、てんた、てんた、てんたう--そして赤ん坊の名前はこうして決まった。

(『レット・テンタウ』という名称の由来を俺は尋ねられた事がある。其の度に俺は奴に此の話題を取り上げて出したんだ。奴の一名称が『俺様』なのは自らがそうゆう高い地位にいる生命である事を忘れない為以外にもある。赤ん坊の頃に言葉を覚えたばかりに其れ以外の一名称を思い付かなくなった。正確には其れ以外の一名称にすると己の中で何か違うような感覚の和にぶち当たるというらしい。俺には最後迄其の違和が何なのかを知る由もない。
 其れよりも『レット・テンタウ』という名前でこんな話もあったな--)

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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