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一兆年の夜 第百二十五話 終わりの始まり 青年はまだ終わりを知らない(悲)

 未明。
 其処で一旦、ライデンは話を止める。
「何故止めるのですにゃ?」
「此の話をしようと思っていたら別の話を思い出した。其れが親父の死だ。親父は余りにも家に帰らない上に中々如何してか歴代の菅原家と比べて其処迄突出したような凄味も無ければ五武将に指名されても自らの能力に自信を持たないが為に引き受けない凡庸な一般生命だった。其れでも親父の選択は何時も正しかった。親父が凡庸で在ったお陰で俺はたった一名で料理の色艶を学び、たった一名でも生活出来るだけのマンドロン紙幣も持ち、更には祖父であるラディルから様々な戦闘技術を教えて貰った。だから親父には感謝で一杯だ。そんな親父との唯一の思い出から先に始めよう」
「其の方の名前は……何でしょうにゃ?」
「菅原ライゼル……最後迄己の自信を持てなかった生命だ。だが--」

 ICイマジナリーセンチュリー三百十一年八月六十七日午後十一時一分二秒。

 場所は真古天神武大陸藤原菅原地方道真県第八北地区菅原ライゼル邸。
 一階建て屋上は星々を眺める為の展望台と成る。
(流れ星が一杯一杯。でもこれは親父や祖父さんいわく銀河連合が大量に降り注ぐ合図だよな。でも俺には全然わからないよ。なあ、レット……お前は短い間に一杯の出会いをしたんだろう? 俺は今からお前の所に--)
 未だ眺め足りないのか、ライデン--齢十二にして六の月と十五日目に成る少年ライデンを心配して登って来るのは齢二十八にして六の月と十五日目に成る菅原人族の青年にしてライデンの父ライゼル。
「何だ、親父か。普段は俺の事を構わないくせしてこんな時に親父面か?」
「親父さんに似て来たな、ライデン。普通の年頃ならばそんな表現は出ないぞ」
「如何だって良いだろう、俺の事は。それよりもあんたは何だって--」
「あんた呼ばわりするのは少し避けておけ、ライデン。肉親は如何思われようとも絶対にあんた呼ばわりするのは良くないぞ!」
「だがな……一度だって親父としてふるまった事があるのか!」
「そうだな、気持ちとしてはもう少しライデンに父親らしい事をしたかった。だが、母さんが生きていたら俺は愛情をお前に与える機会を何回でも得られた……もう遅いけど」
 何か返されるとすぐそれだ……そこが俺にとってくやしいんだ--星々が煌めく中で其れに目を逸らすかのように顔を向けるライデン。
「下を向くな、ライデン。俺は確かに肉親らしいことは一つも出来なかった。だからそうゆうのは親父やレット君が俺の代わりに全て果たしたと思っている」
 また々それですか。全く親父には敵わないな--一方で他者を持ち上げる才能に感服するライデンが居た。
「だな、だからこそ」ライゼルは既にライデンを持ち上げるには十分過ぎる間合い迄詰め、彼を勢い良く米俵を担ぐが如く右手で軽く抱える。「さっさと寝るんだ、まだお前は親に生意気な態度をとる時期ではない!」
「クソウ、年れいをへないとなまいき出来ないなんてそんなの大人たちのへみたいなりくつだあ!」
 へいへい、大人ってのを今の内に観察するのも子供も務めだ--そう言って中へと連れて行くライゼルだった。

(其れが俺と親父が交わした最後の会話。そして--)

 八月六十八日午後九時四十一分三十二秒。
 場所は迷宮の洞窟入り口周辺。
(だれが死んだんだ? 誰かが体を乗っ取られた猿族の生命と刺したがえたって聞いたから……え?)
「やはりお前も来たのか、ライデン」齢四十四にして六の月と十六日目に成る菅原人族の老年にしてライデンの祖父であるラディルは何故か遮るように立っていた。「ライゼルは最後迄自慢出来るような息子ではなかった」
「オイ、祖父さん。何で親父を見せてくれないんだ? 昨の日の夜に俺は親父と初めて親子らしい会話をしたんだぞ!」
「ライゼルと初めての会話……ならば余計にお前は来るんじゃない!」
「そうは行くか。俺は--」
「待って、ライデン」ライデンと同行していた齢六にして九日目に成る神武人族の男児が歳の差が離れているにも拘らず彼の左手首に跡が残りそうな程強く握った。「俺様もラディルさんと同じ考えだ」
「レット……いたい、いたいから放せ!」
 解放された左手首の状態で自らの視力で確かめたライデンは其処で視界がぼやけ、跡が残る手首に水分のような物が零れるのを感じた。そして、其れを自らの舌で舐めるとやや酸っぱい味がする事から--
(なみだ? 俺が、なみだを流している? そんなの、そんなのありえない!)
 其れでも認めないライデンは一瞬の隙をついて前に出た。其れ以上は飛び掛かったレットに乗られる形で先に進まない。しかし、距離として十分過ぎる程に死を眺める位置に到達--流した涙の後に引き出されるのは……絶叫!
 ライデンは父ライゼルが喉を掻き切られて仰向けに倒れる姿を見て何度も「親あああ父イイイイ!」を連呼。其れ以外の言葉が浮かばない程に彼は悲しみに支配され、やがては其れが限界に達して彼を意識の底に沈めて行く……

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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