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一兆年の夜 第百二十四話 天地相為す そして天同相武は赤き革新者と出会う(九)

 ICイマジナリーセンチュリー三百六年十一月五十五日午後七時三分一秒。

 場所は真古天神武首都ボルティーニ中央地区中央病院一階一般病棟。
 其の中で十八号室にて赤い液体を溜めた桶を傍に置く患者が一名。齢三十七にして五の月と二十八日目に成る応神鰐族の老年は足立伏せを既に千回も披露していた。其処へ齢四十五にして六の月と十五日目に成る神武人族の老年にして王である天同相武は花束を持ってやって来た。
「来たかっがん、相武様っだん」
「やあアリゲーデン。相変わらずまだ足立伏せか。此処一の週は大分軽く成っているなあ」
 ええ、お陰様でっでん--アリゲーデンは其れが嬉しく思い、相武が病室に駆け付ける度に背面宙返りで元気な様子を披露してゆく。
「まあまあ、一応は患者だ。まだまだ原子望遠弾の影響は大きい。だから今回は其処迄にしてくれよな」
「だなっがん。何だか最近は又再び頂点を目指せそうな気がする……っがん?」アリゲーデンは吐き気を催すと血が溜まった桶に勢い良く其れを吐き出す「ガ、フフガッフ……ハアハア」
「アリゲーデン……本当は激しい動きをする度に気付くんだろう? もう直ぐ……想念の海に旅立つ事を?」
「大丈夫っでん、相武様っがん。最近はっだん、最近の吐く回数は平均の凡そ半分以下の二回迄っだん。此れはきっと神様が俺に五武将への復帰を呼び掛けているんだっでん」
「又、水の将の席を開けろって言いたいのか? わかったよ、まだ探さないぞ」
 其れなら良いっだあ、其れで良いのですっぜん--アリゲーデンは独占欲の強い生命だった。
 だが、相武は既に医師からアリゲーデンは全身に癌が転移して幾許も無い命である事を知っていた。だが、一度も知っている事も彼に病名を告げるような場面もない。彼は告白するのに恐怖を感じていた。
(今は死の一歩手前で奴の肉体は上方修正している。だが、何れは終わりを迎える。其れは担当医も同じ意見だ。幾ら最下層迄状態が下方に転がり落ちた生命が其処から劇的な回復を見せようともあくまで其れは死の一歩手前で起こる脳の錯覚作用の一種でしか過ぎない。錯覚は長く続いた事例はないし、続く筈もない。何れは錯覚と実際の状態の差の開きに限界が訪れて命の灯が消えるのも時間の問題だ。
 だからこそ其れを早めるような真似を私はしない。いや、出来ない。永遠に錯覚させてやりたい。其れが今も生き続ける生命の必死なる思いかも知れない。何とも勝手なのか……だが、勝手でなければ私は悲しみに心が引き裂かれかねない!)
 相武は告げられない。アリゲーデンに何も告げられない。其れを見てアリゲーデンは何と言ったか?
「わかっているっがん。短い命の中でしかない希望であるってん。だが……其れでも俺は其処に奇跡を起こして復活を望んでいるっがん!」
「アリゲーデン……まさか気付いてのか!」
「どれだけの付き合いですかっがん、相武様っぜえ。俺が覗き聞きしない生命っがん? 既に俺はもう長くないっぜん。確かになあっぜん」其処からアリゲーデンは自分の身に起こる事を相武に伝えて行く。「最初はカン十郎の死と故郷が沈んでゆく衝撃のせいで体にも調子が下方へと落ちて行ったのかって思ってたっぜん。でもなあっぞお、漸くわかったっぞん。一般生命にとって原子望遠弾が放つ波動は通常の波動よりも濃すぎたっぜん。そいつに俺は打ち勝つ事が出来なかった……其れだけっぜん!」
「アリゲーデン……済まない。何も出来ずに済まない」
 してるじゃないかっでん、相武様……十分過ぎる程に、な--其れがアリゲーデンが相武を励ました最後の言葉だった!

(そして、アリゲーデンは二の日より後の早朝に眠るようにして息を引き取った。悔いはない、アリゲーデン。お前は私を逆に励ました。本当だったら私は励ますべきだった。だが、あいつは既に立ち直った後だった。だが、原子望遠弾の放つ波動の余波に耐え得るにはまだまだ早かった。そして老いが其れに耐え得るには脆過ぎた。
 だが、アリゲーデンだけじゃない。ザルノスケの命ももう直ぐ尽きようとしていた。其れは--)

 ICイマジナリーセンチュリー三百八年八月五十二日午後十一時二分十八秒。

 場所は真古天神武西物部大陸応神海付近。
 嘗て仁徳島があった場所に銀河連合の塊が落下し、全てを消し飛ばした。其の余波は藤原大陸にも影響を及ぼし、南側のほぼ一割未満を焦土と化してゆく。幸い、死者の数は思った以上に甚大ではない。だが、応神諸島といい仁徳島といい……誰もが思った--もう直ぐ終わりが近い事を!

(其れは再び我々の出動の要請にも繋がる--)

 八月五十八日午前零時二分三秒。
 場所は首都ボルティーニ中央地区神武聖堂天同相武の間外庭。
 齢五十六にして六の月と十六日目に成る天同相武は未だに衰えを知らない。一方で齢六十一にして五の月と二十七日目に成る神武鬼族の老年カゲヤマノザルノスケは漸く衰えを見せる。証拠として彼は相武に押され気味であった!
「今度こそ私の勝利だな、ザルノスケ!」
「全く最近端耳模遠く成った那亜、妥牙」ザルノスケは敢えて両膝を崩して相武の優しさを……「おおっ斗、遂滑って……フンッ!」付け込んで一気に右手の力だけで木製包丁を飛ばした。「未だ未だ妥曾、相武様!」
「はあ、こんな歳に成っても未だ敵わないかあ……参ったね」
「お互い似力以外乃、全盛期照端得られない老練於得た証拠妥。恥じる事端ない」
「だな、じゃあ--」
 タ、タ、タイヘンダアアア--齢十八にして八の月と二日目に成るアデス九官族の少女臨兵キュー美智が飛んで来た!
「如何したんだ、キュー美智?」
「ニントクトウガ……ギンガレンゴウトシテフジワラタイリクヘトイドウヲカイシ、シマシタアアア!」
「……如何やら続き端其れ牙終わり次第です祢。行きましょう、相武様」
 ああ……そうだ、よな--相武は老練で得たのは強さだけではない。
(ザルノスケ……お前は何時も言ってたな。死ぬ時は戦場で……ずっと叶わなかった戦場での死を望んで何時迄も限界近い肉体を突き動かしたのだな。わかるぞ、今のお前は既に死んでもおかしくない状態である事も。戦場で死ぬ機会を得て……お前は私の傍を離れるつもりならば、如何すれば良い?
 ……雄の道を雄である私が止める権利が果たしてあるというのか?)

 八月六十日午後十一時零分五秒。
 場所は新任徳島跡。
 相武達は船の中にて其々の事に集中。特に相武は終期五武将の選定に取り掛かる。
(ザルノスケは此の戦いで死ぬだろう。だが、其れが戦場で討たれて死ぬような望ましい死なのかはわからない。ひょっとしたら今迄のカゲヤマノ家とは異なる座して死ぬような事に成るかも知れない。何しろ、死ぬ機会をずっと先を越され続けたあのザルノスケだろう。其れはきっと想念の海に溶け込んだ先祖代々がザルノスケに子を儲けろと訴えてきた証左なのかも知れない。だが、実現しないんだ。何故なら奴は幼少の頃に好きだった雌を目の前で死んで以降ずっと其の雌と思いを遂げる為に戦場での死を欲した。だが、失明も嗅覚の完全なる死も更には近年遠くなった聴覚もあくまで一部が機能しなく成っただけで其れ以外の五感を強化する事で難なく突破。気が付けば己を倒せる銀河連合は居なくなった。己を超える生命も居なくなった。孤独が奴を支配する。幾ら老いが肉体を衰えさせても奴は老練という新たな技法でやはり頂点を守り続ける。アリゲーデンは頂点を求めて来たというのに結局頂点はザルノスケに転がった。
 如何如何、止めだ止めだ。兎に角、ザルノスケの後継である金の将は決まらないだろう。不在のまま、次期五武将はずっと始まる。ラディルはもう直ぐ後継者を息子のライゼルに譲って引退するだろう。そして四本足を木製の義足で何とか復帰を果たしたエリフェアトゥは敢えてからに鞍替えして五武将に復帰。とすると残りは如何するか?)
 結局決まる事なく、船は巨大島型銀河連合に停泊……ザルノスケにとって最後の戦いは此処に火蓋を切って落とされる!

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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