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一兆年の夜 第百二十四話 天地相為す そして天同相武は赤き革新者と出会う(八)

 八月五十五日午前一時三分十八秒。
 場所は島型銀河連合第五南東側。
 未だに残る街並み。原子望遠弾が撃ち込まれようとも残り続ける煤だらけの町並みは突入部隊の面々に郷愁の念を抱かせる。
(何て息も詰まる様な光景だ。其れに此の空気にさっきから如何も視界の揺れるような感覚は……此れが放射が放つ副作用なのか?)
「相武様、気分が良くないのでしたら俺達に任せて帰還しても構いません!」
「いや、私が去る位なら突入部隊全員を帰還させて早急に原子望遠弾を撃ち込ませて安全に対処したいな。だが」相武は合理を優先し、敢えて己を含めた十万の軍者達の健康が下方修正してでも戦略的な勝利を優先した。「私達は時として心を冷たくしないといけない時もある……責任は私が引き受ける!」
「相武様……そうですっだん。だから俺は自らの命を懸けてでも生まれ故郷に決着を付けないといけないっでん!」
「そうだそうだ、そうだよなあ!」
「智将じゃなかったのかぜえい、ラディルぜよおう?」
 全く歳が近かったら少しでも生意気で居ようと出来るのに--エリフェアトゥと九つも歳が離れる事に少し念が残る気持ちだったラディル。
「私語端慎め……銀河連合妥」ザルノスケは年長者として一番前に立ち、後ろの五名を鼓舞するよう右手の金棒を高々と上げた。「此処照端全員生き残って当たり前妥斗思う乃妥亜亜!」
「言われなくともワカッテルヨ、爺さん!」カン十郎はザルノスケの左横に立つ。「次期五武将筆頭モ後ロヲ勇気付けるぜ!」
 ああ、行こうか……此処は始まりに過ぎん--最後に相武は五武将以外の全てを鼓舞するように合図をする!

(まだ……悲しい悲劇は訪れない!)

 五十七日午後十時二分四十三秒。
 場所は島型第五中央。
 其処は市長官邸を始めとした建物が立ち並ぶ応神諸島の中心地。既に其れ等は建物型銀河連合と化して突入した軍者達を次々と肉の塊にしてゆく。
(其れでも二の日もの間に先行した精鋭が内部に突入している。だが、どれが島型の核なのかを誰も知る術がない。故にまだまだ戦いは長期化する。
 ……だから如何したか、そんな事が。私達は万の死者が出る事は想定していた。出来る限り短期決戦を臨んでも長期決戦を想定しない生命ではない。一の月迄は各補給部隊の物資は滞りなく突入部隊全体に届く。但し、内部に突入した精鋭にだけは届かない。此処が後方支援部隊の難しい点だろうな。だからって補給部隊に過度の期待は寄せない。元々補給部隊の役目は恒久的に部隊を生き延びる事……其れだけしかない。決して攻撃も兼ねた者達で構成される訳じゃない。
 だったら何か? 私達が早期にケリを付けるしかない!)
 戦いから既に二千名に上る死者を出す真古天神武突入部隊。だが、銀河連合の死体は其の五十倍程膨れ上がる。真古天神武の歴史上初めて質が量を凌駕する理論値へと近付いている事例なのかも知れない。今回の突入部隊の面々は全て銀河連合一体辺りの差が平均して五十倍程離れているとみて違いはない。特に一騎当千を獲得した精鋭に至っては百倍近くは引き離しているとみて違いはないだろう。其の内の一つが相武と五武将--ザルノスケを筆頭に一名当たりの戦力は戦う毎に強大化してゆく……全生命体の希望に繋がる相武を守る為なら此れ程迄に力を解放してゆくのか!
 そろそろ、俺はっがん--だが、短いとは言えども二の日も激しく戦い続けては疲弊も力と同様に肥大化の一方。
「未だ内部似突入して居ない斗いう乃似もう限界科?」
「正直言って此れから銀河連合に依る激しい反撃が始まる……ハアハア」幾ら若造でもラディルも既に限界が近い。「全然切り抜ける戦術が思い付かねえ……疲れが、脳に栄養を、届かせ、ない」
「私も、ですぜえい。毛も湿って来て変な放電がぜえい、起こっているぜよおう」
「ハアハア……まだ切り札は、残しているとは、いえ」新仙者の力を出し惜しみする疲労困憊の相武。「銀河連合は此の乱戦模様の中できっと、何処か、で、見つめて……ハアハア」
 相武の言った事は正しい。実際、瓦礫型銀河連合が瓦礫に扮して相武達に接近。そして鋭い瓦礫のような何かを投擲する--然も成人体型三十七離れていながら正確無比にザルノスケの頸動脈を切り裂く方向に!
 ザルノスケは其れに気付いて左手の握力だけで掴むと其れを瓦礫型の核に投げ返す--瓦礫でありながら赤い液体を噴き出した瓦礫型は沈んだ!
「フン、未だ未だ俺模やれる--」
 危ない、ザルノスケええ--相武は瓦礫型が囮で真の狙いは建物型に潜伏する骨董品型に依る包丁のような何かに依る投擲でザルノスケの脳天貫通が狙い……流石に隙を見せたザルノスケは反応出来ない、代わりに相武が跳躍して全身で庇おうとする!
(え……何で?)
 だが、同じように跳躍したあるカンガルー族の老年は尻尾の力も勝って相武よりも速く庇って見せた--然も首が切断しかねない程深く刺さって!
「カン十郎うウウウ!」相武が叫ぶ中でザルノスケとエリフェアトゥは怒りの儘に建物型内部に潜伏する瓦礫型目掛けて走ってゆく。「す、直ぐに、直ぐに、直ぐに--」
 そ、相武様……幾ら何でも、もう--ラディルは怒りと悲しみを何とか抑えつつも事実を述べる!
「何で、だよっがん。お前は、お前はあ……あああ、わかっていてもっだん。そ、其れでもっがあ。うおおおおおおおおっがん!」
 菅原カン十郎は二度と目覚める事がない--余りにも呆気なく想念の海に旅立つ光景は五名の目に焼き付けるのであった!

『--遺言すら聞く余裕もまま成らない死は余りにも明白で尚且つ私達の心に明白では
ない鼓動を響かせる。戦いがラディルの想定した最低死者数依り三割程あった事や
ザルノスケの鼻が遂に利かなくなった事もエリフェアトゥの両足が戦いの後に全足切断
する事態に陥った事もそしてアリゲーデンが戦いの後に突然倒れて引退を余儀なく
された事等々。五武将の四名だけが戦いに依る喪失を味わったのではない。他の小隊
や中隊、其れに大隊でも原子望遠弾の煙を吸って異常を起こした生命は多数。戦いから
生き延びてICイマジナリーセンチュリーにして一年の間に二万程の軍者が死んだ。あくまで其れはあの
戦いが原因であるかを調べ尽くすには余りにも資料が足りない。だが、裏付けは存在
する。其れがあの戦いで五武将を引退したアリゲーデンである。彼は四の年もの間に
息を引き取った。何せあの戦い以降、吐血が絶えない。私は余裕があれば奴の所に来て
第二の人生を送れるように励まし続けた。
 だが--』

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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