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一兆年の夜 第百二十三話 天地相為す 天同相武の革新(終)

 午後零時三十八分三十七秒。
 心臓型の要素を持った指揮官型との命懸けの戦いが始まる。五武将一の知性派であるメエジン・メヒイストに依る作戦は単純明快である。指揮官型を一身に相手するのはカゲヤマノザルノスケ。戦っている中で左右からカバジンとワンダローが挟撃。だが、三名が吹っ飛ばされるのは想像に難くない。指揮官型はあらゆる攻撃方法を編み出す。其処で支援に徹したメエジンとライドが三名を吹っ飛ばした後に遠距離から一斉攻撃を仕掛ける。当然ながら心臓型の特性を持った指揮官型は迎撃を始める。其の迎撃は前衛を務める三名よりも激しい。広報を担当する二名の内、一名の死は避けられない。もう一名はソレイユが回収する。救出する一名を誰にするかで今後にも影響する。若しもメエジンが強者至上主義者と呼ばれるのならば自らを必要としない生命として捨てる事を命じるだろう。だが、彼は戦略家。戦略家は今よりも数十の年を見据えて戦略を構築する。故にメエジンはライドを後回しにするしかなかった。其れもライドは承知で後回しを了承。そんな方針で始まった戦い!
 だが、ザルノスケの予想以上の凄腕は吹っ飛ばされる前に指揮官型の隠し腕を含む全ての腕を機能停止へと追い込んだ。だが、腕が機能しなくとも心臓型の恐るべき血液噴射攻撃は残されていた。其処にメエジンとライドに依る望遠砲及び望遠刀に依る一斉斉射が放たれる。だが、予想出来ない事態が発生--何と指揮官型は其れを発射する前に軌道を予測して安全圏に避難しながら加速!
「何処迄化け物なんだ……畜生めーイ!」
 メエジンを倒せば今後の影響は甚大であると踏まえた指揮官型は此の中で頭脳労働に偏った彼を狙う。超至近距離からの血液噴射を回避する術をメエジンは知らない。メエジンは頭脳労働者故に臆した病を持つかと思えばそうではない。其れでも膨大なる恐怖は尻餅付かせるだけの凄味を帯びる。最早死は免れない。そんな時、更に予想外の事態が起こる!
「メエジンはやらせない!」左正拳で綺麗に上方へと噴射の軌道を逸らした青き光を点滅させる相武。「僕が……いや、僕達が全てを守ってみせる!」
 其の予想外ともいえる相武の活躍に依り、ライドは指揮官型の急所三ヶ所に望遠砲に依る射撃で確実に撃ち抜く--指揮官型は仰向けに倒れ、其処には血の水溜りが出来上がる!
「ハアハアハア」点滅は終わり、相武は屈みながら荒い息を吐き続ける。「た、倒したあ」
「た、助かりましたね」ソレイユはライドと共に駆け付ける。「まさか作戦を越えて良い結果に結び付くなんて思いませんでした」
「生きた心地がないーイ。全く頭脳労働者にやるべきは肉体労働ではないーイぞ」
「そうだな。其れにしても新心臓型が指揮官型と融合するなんて思いもしない。此れがワンダルーダの語る新心臓型の特性なのか?」
「ウーググ……今は、寝かせーてくれ」
「僕もだグバア、蓄積した痛みのせいで体が言う事を聞かないグバア」
「俺端、大丈夫妥。妥牙、直ぐ似駆け付けられる妥化乃体力端、もう暫く掛かる」
「情けないかなーア、立ち上がるーウ力を忘れて暫くは動けない。ハハハ、肉体の機能とはこんなにも便が良くなイーな」
「でも脱出迄はまだまだ休んで良いですよね、相武様?」
「ああ、休めば良いと思--」
 相武様をやらせは……グおおおおおお--直後、指揮官型の血管が動き出して其れが噴射……自らの筋肉を収縮させて受け止める人族の生命が居た!
「ライドさん!」
「まだ……生きていーイたのか--」
「待て、僕が」其の時、相武の眼は青く輝き……「ライドに代わって全てを終わらせる!」瞬時に神武包丁を抜き、指揮官型に止めを刺した。「此のオオお!」
 こうして相武は包丁に錆を残した侭、一つの区切りを終える。翔和の仇は討った……だが、代償はやはり大きい--此処迄に死んでいった軍者達や数多の無垢なる生命、そして菅原ライドも!
「ライドさん? あれ、何で反応しないのよ」既にライドは笑みを浮かべながら想念の海に旅立った。「返事をしてよ、ねえ?」
「ソレイユ……ライドさんだった生命に幾ら尋ねても戻らないんだ。というか僕達はライドさんに依って齎された休憩をそろそろ終わらせて此処を立ち去ろう」新仙者に覚醒した相武は崩壊を予知。「生き残った僕達が死んでしまっては死んでいった命に対して申し訳ないだろう?」
「亜亜、そう妥」
「ライドさんーが、ライドさんがー切り開いたーんだ!」
「俺達には帰るべき場所があルーう!」
「そうだグバア、何て情けないんだグバア。ライドさんが命を懸けたのに何が五武将だグバア!」
「うん、帰りましょう」涙を流し続けるソレイユは相武と一緒にライドの亡骸を担いでゆく。「せめてライドさんだけでも……綺麗な菅原の大地で眠って貰わないといけないのです!」
「ああ、戻ろう。其れが僕達の役目だ!」
 こうして相武は革新し、左腕の激痛を乗り越えた。だが、同時に失ったモノは大きい。五武将に成ったばかりの菅原ライドは死んだ。ライドだけじゃない。此処迄に死んでいった軍者の数は累計一万を越す。そんな彼等を黙祷するべく相武は敢えて権限を使って最高官に申し出た。すると了承し、犬猿道は死んでいった者達の為に一の週も喪に付された。其の後に再び一般生命が気楽に走れる道に戻ったのかと問われればそうではない。
 犬猿道は拠点型に依って穢れが進んでいた。其の穢れを全て払う為に急加速で建設が進められてゆく。最後迄犬猿道は復活する事はなかったが、此れが今後の全生命に与える影響がどれ程の物かは記憶に残れば紹介してゆく事と成ろう。
 さて、其れから四の年より後……

 ICイマジナリーセンチュリー三百一年七月十八日午前五時七分一秒。
 場所は真古天神武首都ボルティーニ中央地区神武聖堂天同相武の間外庭。
 其処で齢二十八にして二の月と三日目に成る神武人族の青年天同相武は既に一名称を変えて向かい合う齢十九にして七の月と十五日目に成る雄略人族の少女ソレイユ十九代と訓練をしていた。
「まだまだライドさんに敵わないです」
「こんな物じゃないだろ、ソレイユ。後五の月程でお前も立派な五武将に成るんだ。空席だった土の将として強く成って貰わないといけない!」
「強者の道は険しい。相武様の為に頑張るって大変だよお」
 まあね、五武将制度はあくまで王を守る為の役割を担う物さ--後に五武将制度がある部隊の総称に様変わって行くとは相武達は想念の海に旅立っても知る由はない。
「ねえ相武様?」
「何だい、ソレイユ十九代?」
「若しも相武様よりも先に死んだら如何しよう?」
「余り縁起の宜しくない事を口にするな。お前は私よりも長く生きろ。でないと私はお前に対して何も感謝の口を述べない。生きるんだ、其れが私の願いの一つでもある!」
「そうよね……うん、そうだよね。地同ソレイユが相武様よりも死ぬなんて有り得ないもんね!」
 だからお前はソレイユ十九代であって地同家を名乗る事は許されん--其れだけは譲らない相武であった。
『--こうして私が革新する物語は幕を閉じた。其れは激しくもあり、緩やかでもある。
私にとっては忘れる事の出来ない日々の繰り返しである。
 序に少し終わる前に五武将について補足しておく。主に火水木金土で構成される。
火は中期五武将ならばワンダローの事を指す。彼は火の将として激しく戦い続ける。次に
水の将はカバジンの事を指す。普段は穏やかで戦いに成ると力強くうねる。三名目は
木の将で此方は戦略を木に例えるとメエジンが務まる。常に先を読み、生き残る為の
戦略を構築してゆく。金の将は金棒を持つ事からザルノスケが務まる。其れ以外の意味は
ない位に頼り甲斐のある生命。そして土の将はかつて菅原ライドが務める筈だった。
中期以降に五武将其々に付けられる将名であるからライドは残念ながらつけられる事
はない。だが、ソレイユ十九代は其れを担う。彼女は最後迄土の様な雌であった。
 さて、愈々行方知らずだったもう一名の天同と出会う迄とこうして執筆中の私の命が
もう直ぐ尽きる物語
を始める。此処に至る迄、激しい時もあれば緩やかな時もある。だが、
国の終わりが訪れ始める頃というのはメエジン曰く必ず其れなりに終わりを迎えて行く
のだよ。一瞬ではなく、段階的に。
 其れを語るべく、一度休息を迎えよう。私は疲れた。流石に頑張りを間違えた--』

 ICイマジナリーセンチュリー三百一年七月十八日午前五時十五分五秒。

 第百二十三話 天地相為す 天同相武の革新 完

 第百二十四話 天地相為す そして相武は赤き革新者と出会う に続く……

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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