FC2ブログ

一兆年の夜 第百二十三話 天地相為す 天同相武の革新(序)

『--さて、始める前に色々と長い前置きが待ち受ける。始まるのが何時も遅れて申し訳
ない。けれども書き始めは何時も何かか書けば良いのか浮かばない。筆も進まない。取り
合えず無駄話だけでも書いてみてから状態を確かめる。状態が良く成る迄は無駄話に
単語を並べて昂じる。そうして筆は加速してゆく。加速した筆はやがて数多の意味を
見出せない単語と共に徐々に
峻かな別けを産む。産んだ後は漸く本題に入る。
 では本題に入る前にある話から紹介しよう。ある者は突然やって来た--』

 ICイマジナリーセンチュリー三百年六月六十三日午後十一時五十一分二十一秒。

 場所は真古天神武首都ボルティーニ中央地区神武聖堂天同相武の間外庭。
(又、明くる日は……ウグッ、痛みが!)
 齢二十三にして十一の月と十九日目に成る神武人族の青年にして左肩から爪先迄柔軟性を確保した包帯を巻く十代目王である天同相武そうぶが寝付けずに木製包丁を右手に自己鍛錬に励む。此れは齢三十一にして二十五日目に成る神武鬼族の中年であるカゲヤマノザルノスケの教えではない。彼は稽古こそ厳重ではあるが、深夜の鍛練を勧めない現代的な教育指導者だった。ならば何故相武はやるのか? 其れは左腕に宿る地同翔和しょうわの魂が命じた為だと解釈。
(特に少しでも体力が残れば何時も翔和は僕に命じて来る。まだ動かす事も出来ないというのに。無茶苦茶な左腕を付けたもんだ……だが、何れは此の痛みが引いて僕の物に成ればもう今迄の痛み何て何のその……ウグッ、何で、こんなに、も!)
 相武がこうして片膝を付いて左腕の痛みに悶える様は傍から見れば笑って済ませられる。けれども本者にとっては笑えない激しい痛み。其れを代わりに例えるなら蹴りを我慢する際に起こる痛み? いいや、其れではない。陣痛? いや、実は陣痛依りももっと痛みの激しい分娩に例えるとわかりやすい。つまり雄では耐えられない痛みを毎の日も相武は耐え続ける。何時死んでもおかしくない痛みであるのだから相武にとっては今楽に成った方が幸せかも知れない。けれども--
(僕が死んだら誰が真古天神武を任せられる? 僕は死ぬ訳には往かない。父さんも姉さんも其れにこうして生きている翔和が付いている。だから僕は耐えなければいけない、此の痛みを!)
 彼を突き動かすのは罪よりも先にある使命。既に翔和や数多の同胞を死なせた罪は激しい痛みで償われた。後は此の痛みに応えるように一名前の仙者に成る事。覚醒がまだ遅いが其れでも一歩ずつ前進を続ける。そんな彼の下に齢十五にして五の月と一日目に成る雄略人族の少女が庭にある木陰に隠れて様子を見守っていた。
「誰だ、出て来い」
 見付かりましたね、だから如何です--其の少女は雄略鋭棒と呼ばれる蘇我鋭棒とは別系統で突くよりも斬る方に特化した棒を二つ折りにして背中に背負いながらも胸とある部分以外は隠した状態で姿を現す。
「はあ、はしたない恰好を」
「ちょっと待ってよ、此の刺青を見て何か感想が無いの?」
「雄は雌の隠す部位が少ない程、如何しても--」
 そっちじゃないでしょ--右跳び蹴りを相武の顔面に決める雄略人族の少女が其処に居た!
「ウグッ……いきなり何をするんだ!」
「あ、離しなさいよね。其れ一般社会では猥褻って呼ぶんだよ」
「何を言ってるんだ。隠している部分に出来る限り触らないように……イデッ!」
 全く南雄略から離れるとみんな私の事をそんな目で見つめちゃって--右打ち上げを相武の顎に決める少女。
「フウ、丁度首の筋肉で脳の揺れを抑えたから良いけど・・・・・気を付けろよ、其処の雌の子」
「雌の子じゃありません。私はソレイユ十九代だよ」
「ソレイユ……ひょっとして翔和が語った南雄略に居た少女の--」
「うん、十八代は私達の母よ……二の年より前にもう亡くなったけど」
 亡くなった……そうなのか、其処迄寿命が短いのか--相武は其処で次のように考える。
(きっと翔和の後を追った……そう考えるしかない。だが、其れを彼女に尋ねる事が僕には出来ない)
「其れよりも貴方が天同相武様ですか?」
 知ってて二度も叩いたのかな、君--折角悲しい表情をしたのにそんな事を口にされて呆れるしかない相武だった。
「まあ良い。御母さんは良く何処かで暮らす碌でなしのお父さんの話をしてたんだ。若しかしたらお父さんについて何か知ってるのかと思ったけどね」
「生憎だが、其のお父さんは消息を消してもう探す事も出来ない」
「まだ名前すら言ってないのにそんな答えはいけないよ」
「じゃあ行ってみたら如何だ、ソレイユ十九代?」
 ソレイユで良いよ、此れから地同ソレイユでも名乗ろうかって思ってたんだ--其れを聞いて相武は--やはりそうか--と心で思ったのか思わないのか。
「はあ、其れは出来ないな」
「ええ、如何してえ!」
「君が名乗ると地同家は君を先祖にして一から始めないといけない系譜に成る」
「ええ、父はあの地同翔和だよ!」
「其れでもだ。君は地同ソレイユを名乗る事が出来ない……其れが伝統だ!」
 うーん、お母さんも生きている頃に言ってた--如何しても地同を名乗りたいソレイユだった。

(ソレイユ十九代は其の後、真古天神武五武将の一将として数えられる事に成る。教育指導者は僕と同じようにザルノスケが担当する。つまり、僕とソレイユは同じ匠を持つ者同士という訳だ。まあ紹介した僕は何とか説得するのに苦労したな。何せあの翔和と同じく誰かれ構わず迷い惑わすからな。
 さて、そろそろ次の話に移行するか。そう、僕には翔和達の仇討ちの他に如何してもやっておかなければいけない事もあった。其れが軍備増強、そして僕が信じてやまない五名の軍者……さっき紹介した真古天神武五武将さ。考案したのは--)

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
FC2カウンター
リアルタイムカウンター
現在の閲覧者数:
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
Powered By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR