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一兆年の夜 第百二十二話 天地相為す 天同相武は翔和に託された(終)

(あの時だったな。奇跡なのか、俺の左腕に依って繰り出す手刀が致命の一撃と正面からぶつかって割きやがった。流石に腕の届く距離から少し離れた所迄しか割けなかった。世の中そんなに上手く行かない証拠だろうな。あの奇跡は起こるとあの心臓型は痛みで反応を示すにしては余りにも動きが大袈裟過ぎるような躍動感があったな。恐怖であのような意味を理解しかねる行動をするのは俺も昔やっていたから同情してしまうがな。まあ、銀河連合に同情するとすれば此れ位だろう。
 ああ、其れとあいつ……あいつが全く動けない俺を運んで行ったな。運ぶなら今しかない。そんな訳で俺は延命した。だが、心臓型との戦いで受けた傷はもう俺に満足に動かす事さえも許さなかった。いや、其れだけではなかった。もっと深刻なのは此れからだ!)

 六月六十一日午前八時二分十一秒。
 中央病院二階専用医務室。其処は相武と翔和が共に寝かされる病室。
 其処で齢五十九にして八の月と十三日目に成るテネス鬼族の老年が齢二十にして一の月と一日目に成る仁徳鬼族の女性である鈴村きね代に連れ添われる形でやって来た。
「あんたは……呼んだのはザルノスケか?」
「ああ、そう砂。久しい乃迂、若造也」既に限界が近いギズルダール・ダッジャールは其れでも誰かを救う為に足を運ぶ。「ゲホゲゴ……御覧乃通り砂。妥牙、最後乃大舞台位、わし牙、何斗科、せね芭、那亜」
「余り理牙無けれ芭最後乃弟子於名乗るあたし牙何斗科して見せます!」
 有難い那、不肖乃弟子乃言葉端--年老いて益々、口の鋭さに磨きがかかるギズルダールであった。
「生きていたとはな……普通は死んでいるぜ」
「フン、死似場所端戦場砂。此れ科羅わし端相武様於救う為似、執刀、する、乃邪……ゲゴゲホ!」
「やっぱりあたし牙します環、執刀端!」
 馬科鹿召エエイ、熟せない弟子端黙って雄乃花道於支えていれ芭良いん妥亜--頑なに固いギズルダールだった!
「です牙翔和様。此れ似ついて、気端正しい乃です科?」
 俺の姿を見て如何思うんだ……こんな状態に成って迄生きたいとは思わない--既に銀河連合から受けた傷と新仙者の能力を最大限に生かした翔和の肉体は最早食べ物さえも専用の道具を使用しないと通らない程に迄である!
「わし斗、同じ砂。生きたがりじゃないん妥。せめて満足乃ゆく死似方、じゃろう?」
「ああ、だから最高の執刀を求めて今回の移植手術を命じたんだ……なのに出て来たのは死んでいると思っていた爺さんかよ!」
 わし以外、適任牙居なかった、乃じゃろう--翔和は最後迄知らないが、実はギズルダールが偶々死ぬ前に最高の医療を訪問しに来た際に運ばれてゆく二名を目にして強引に申し込んだという経緯がある!
(俺がやるのは魂の移植だ。此れをやれば相武は助かる。だが、代わりに俺の肉体は最早使い物に成らなくなる。もっと極めれば俺自身の命が想念の海に旅立つ。其れ位の手術が始まる。其の為に最高の医術を持った先生を依頼したんだが……なのに現れたのはまともに執刀出来るかもわからん鬼族のジジイかよ。全く、何やってんだよ……相武の命運をジジイに委ねるとか気は正しいのかって言いたいのは俺の方だよ。だが、そう言わないのはこのジジイならやってくれると信じているからさ。何故ならこうして俺が戦い続けられたのはジジイが執刀してくれたお陰だ。全く其の恩があって言えないぜ……此のジジイは間違いなく腕は今も本物だ!)
「あんたには感謝しているからな」
「感謝する乃端寧ろわし乃方砂。こうしてわし似執刀於許可為さった若造似那」
 あんたの腕が本物なのは武内大陸にあるあの集落からずっと信じ続ける事さ--初めて出会った頃から此れは運命だった、と翔和は次のように思い始める、
夢宇宙は俺に対してとんでもない道を用意してくれるぜ。其れに乗っかるかはわからないというのにそれに応じる俺もとんでもない奴だと最後迄思う。こんな命の運びに対して俺はある仮説も浮んで来る。若しかして銀河連合が本当に目指す事って……命の運びを自ら選択したいが為か? だとするなら其れはどうしようもないな。確かに己の意思で道を切り開く事に意義はある。誰かに設定されるよりも遥かに意志があると俺は思う。でもな……其処で大事なのは本当に守れているのかって話だろう。守破離……其の導入部である守、つまり基本が疎かな状態から破と離なんてやったら其れこそ筋肉あって骨なしだろ? 骨が無ければ筋肉何て只の肉の塊でしかない。骨があるから筋肉は筋肉足り得る。銀河連合には其れがわからない。守るべき物を視ずして果たして命の運びを選択する事に意味があるのか!
 だから俺は間違いなく夢宇宙を信じる!
「覚悟が出来た那」
「何言ってんだよ、ギズルダールさんよお。俺は昔から覚悟なんかしてないぜ」
「如何ゆう事砂?」
「最初から覚悟する事を覚える機会に恵まれなかったんだよ。だから俺にはそうゆうのは似合わない。依って今回も何時も通りでお願いする」
 ……日乃常斗同じ訳科、良いだろう--ギズルダールは既に覚悟が決まっていると気付いた。
 そして始まる執刀、其の時間は何と六の時も掛ける最長手術。余りにも流れ出る血と汗。死んでもおかしくない二名の命。なのに結果は成功。手術を終えたギズルダールは休憩室にてキネ代と最後の会話を始める。
「お疲れ様です、先生」
「何牙お疲れ砂。わし端限界寸前乃、肉体於何時、模通り似動かした、妥化砂」
「出模、今回模先生乃……亜乃素晴らしい執刀術似、どんな困難似模、亜乃ような流れるよう似動く乃於、あたし端大変似感動致しました!」
 わし端、当たり前似、やった妥化、砂亜--意地を張る事を止めないギズルダールだった。
「でもあたしは今回の事は--」
「もう良い、明くる日模早い。お前さん端明くる日乃準備於し似向かえ。其れ科羅わし於迎える乃砂!」
 わかりました……出端又今度--其れが二名の会話の終わりでもあった!
 きね子が休憩室から出て行くのを見てギズルダールは独り言を呟き始める。
「フウ、あ奴模気付いておる那。砂牙、正直似成れ芭、わし端、あ奴似道於、いや、もう良い科。後端、頼んだ曾……」
 其れから目を開けたまま、想念の海に旅立つのだった……

 六月六十二日午後十時二分七秒。
 場所は天同相武と翔和が共に寝かされる病室。
 翔和は未だに眠り続ける相武が仕切り越しに居るのを確認しながらザルノスケと最後の会話を交わす。
「そろそろだ。俺の命はもう直ぐ尽きる。如何やら爺さんよりも直ぐ後みたいだぜ」
「翔和様、本当似良かった乃です科? 左腕於相武様似捧げて」
「そうしないと、あいつは間違いなく死んでいた。医者が言ってるんだ、間違いない!」
「其乃結果、翔和様端左腕於無くした痛み牙走って……長く生きられる命於、風前乃灯火似等しい状態似した乃です曾!」
「良いじゃないか、俺に病室暮らしは似合わない。死ぬなら誰かの命を救う為に死ぬ方が……良いじゃないか」と運命を認めつつも次のように矛と盾がぶつかり合うような事も告げる。「だが、俺は生き続けるんだ。此れでまだまだ戦える!」
「翔和様……何斗、いう魂妥!」涙が溢れるザルノスケ。「だ、だか、ら、俺、妥化於、此処似、此処似、来させた、乃出で、す祢!」
「ああ、そうだ。お前だけには--」
 翔和はザルノスケに対して遺言を告げた--


 六十三日午前七時零分五十四秒。
「--以上牙翔和様牙相武様似伝えたい事です」
「そうか、翔和は……左腕、イデッ!」
「直ぐ似其れ牙相武様乃手足似成る筈牙ありません」翔和と同じ位腕の立つザルノスケだからこそ言葉に力が増す物であった。「元々翔和様似合わせて成長為さった左腕於助ける為似接合した乃です。然模血液於全て抜いて更似端相武様斗合う血液於流して科羅接合した乃です。相武様乃手足似成る迄一生於懸けて貰う事似成りましょう!」
「だな、ザルノスケが言うなら間違いがない。だが……僕は此れを今直ぐにでも僕自身にしたい!」既に涙を流す相武の涙腺は依り流す涙の量を増やす。「ウウウ、で、出ないと……浮かばれん、だろうが!」
「今乃侭出端……理牙ありません。です牙、俺模御供させて戴きます。翔和様程出端ありません牙、手解き那羅芭……出来ます!」
 有難う、ウウウ……有難ううう--まだ動く右腕でザルノスケの衣服を掴みながら其の胸元で大いに声を上げて泣く相武だった!
『--そして私は天同翔和の無事だった左腕を受け継いだ。彼の肉体は既に無くとも魂は
今もこうして生き続ける。そうして私と彼の左腕の共同生活は始まった。最初は感覚だけ
が残る左腕に大いに困った。動かす事も出来ないのに動かそうとすれば筆舌と呼ぶ
かな? そんな痛みが常日頃から私を苦しめ続ける。いっそ左腕何て接合させなければ
良かったって何度も思った。口にする言葉をこうして吐くのは今回が初めてだ。だが、口
にしなかったのは私自身の戒めでもあった。此の痛みは自らの犯した罪を償う為に
あるのだって。
 さて、其れを己の物にしたのはどれ位先なのか? 実は次から語るべき物語こそが
其れである。彼に託される物語はこうして終わりを告げた。託されるとすれば彼の肉体
滅んでも魂だけは左腕と共にある。そんな左腕を私の物にするという私が覚醒する物語
が次に来る。其れから最後の物語である行方知らずだったもう一名の天同と出会う迄と
こうして執筆中の私の命が尽きる物語
へと手綱を渡してゆく訳だ。
 さて、次に紹介するのが私自身の物語。そう、左腕を私自身の物にして覚醒する物語
が次に来る。又休息の時間が訪れるという訳だ。申し訳がない--』

 ICイマジナリーセンチュリー二百九十八年六月六十三日午前七時四分五十九秒。

 第百二十二話 天地相為す 天同相武は翔和に託された 完

 第百二十三話 天地相為す 天同相武の革新 に続く……

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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