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一兆年の夜 第百二十二話 天地相為す 天同相武は翔和に託された(六)

 午後十時四分零秒。
 翔和は間合いに入り、心臓型に攻撃する隙さえ与えない連続斬りを最初に仕掛ける。其の要は踏み出す足を事前に取って攻撃する歩調を自分の物にする為である。
(だが、幾ら俺が先読みの斬撃で攻撃しても防御だけは巧いな。此の銀河連合は前の複数腕型と同じようにやろうと思えば白刃取りも出来るだろう……其れだけに、全然攻撃が届いていない!)
 だが、幾ら攻勢一方の翔和も防御が上手い心臓型を前に決定打を与えられない。
「あの心臓型……包丁乃ような何か於使用せず似素手だけ出翔和様乃攻撃於全て絶妙那間隔出捌いている乃科!」戦いを見守るザルノスケは更にこんな事を語る。「そして、形勢牙入れ替わる時端……今妥!」
 ザルノスケの一読すると誰にでも出来る解説は、心臓型が右足のような何かで翔和の左足を踏み始めてから現実味を帯びる。其れは先を取った筈の翔和の左足が却って更なる先を取った心臓型に依って力強く踏み付けられる--いや、此の場合は踏み潰すと捉えても良い!
 そして、一瞬の痛みが走る翔和を見逃さずに白刃取りをして叩き折った心臓型。又しても白刃取りで叩き折られ、険しい表情をする翔和!
(次に来るのは……間に合わないな。此の状態で回避行動を採ろうとしても全てが一撃必死の攻撃ばかりだ。左足を踏み潰された状態では回避が出来ない。俺は即想念の海に行く段階に入った。此奴は間違いなく強いな……だがな、銀河連合。姉ちゃんを死なせたお前のあらゆる予測を想定した攻撃軌道線にだって隙がある!
 其れは俺が左足を理無く刃を理にする事で……肉を引き千切り、骨の身でえええ。骨の身でええ、攻撃を躱すんだよおお!)
 久方振りに封を解いた新仙者の力を最大限に駆使して一撃必死の銀河連合の攻撃を回避した翔和。其の力は既に眼や傍にある脳の機能だけでなく、体全体にも波及して冷気のような青い光を放つ--此れを見たザルノスケは危機感を抱く!
「左足於骨だけ乃状態似……いや、あんな状態乃新仙者乃力端一体初めてじゃない斗言い切れる乃科!」其れだけではなく、更に独り言を口にする。「まさか……最初科羅命於落とすつもり出、戦うおつもり科亜!」
「五月蠅いぞ、痛みの余り叫び声を上げるのに集中出来ないだろうが!」翔和には聞こえていた。「だが、お前の懸念は合っている……が、俺は此の日に死ぬつもりはない!」
「此乃日似……つまり如何ゆう意味です科?」
 予め決められた日に俺の肉と魂は、果てるって意味だよおおお--其れから翔和は心臓型に向かって一切の言葉を紡ぐ事を止める!
 先端の欠けた神武包丁を右手に右足だけで心臓型に挑む翔和。だが、全ての攻撃は肝心の足が片方しか使えないと全く決まらない。幾ら新選者の力を最大限発揮しても左足が骨を剥き出しにした状態では精度は大きく落ちて、一回も届かない。届かないだけではない。一方で心臓型の攻撃は全て翔和に届く。何とか致命の一撃を全て得意の受け流しで何とかして見せる翔和。だが、蓄積した痛みは徐々に全身に浸透--口から赤い液体が出始める時にはもう肺からの出血が始まる!
(左足を踏み潰された時点で既に戦いの趨勢は決まっていた。俺は奴に斬撃を、届けられない時点で勝てなかった。勝てなかった……だから如何した? 俺はそんな結果論の為に戦うのか? 結果がわかっていれば戦いなんて挑まないのが此の世の真理? いいや、俺が戦う意味はな……其れは残りの命を全て相武の為に尽くすんだ!
 そして、姉ちゃんの仇を取る為に戦うんだ。勝つとか倒すとかそうゆう物を越えて俺はこうして勝てないと誰もが思われつつも挑まないといけないんだよおお!)
 とうとう、左腕以外が全く動かない状態に成った翔和。最早、ザルノスケ以外が見ているなら翔和はもう死ぬ寸前。心臓型の一撃は翔真を背後から襲った心臓型の鋭い触手。其れが翔和の手が届かない距離から繰り出される時--ザルノスケは信じられない光景を目の当たりにする!
「何だって……翔和様牙、翔和様牙!」


 六月六十三日午前六時二分三十一秒。
 場所は真古天神武首都ボルティーニ中央地区中央病院二階専用医務室。
 其処にある寝台にて白の布団に肩まで包んで更には頭を固い枕に載せて仰向けに寝ていた相武は目を開ける。
「此処は?」当然、己の周りには大勢の付き者が居ると思っていた目覚め始めの相武。「あれ?」
 御目覚めです科、相武様--出迎えるのは何故かザルノスケ只一名のみ。
「あれ、何でお前だけなの? みんなは? 其れに……いや、此処に居ないという事は匠は、いや、翔和さんは、いや、翔和はもう--」
「いえ、翔和様端まだ生きておられます。です牙、二度斗相武様斗話す事牙出来ない姿似成りました」
「……僕のせいで、翔和が」相武は其の時、ある感覚に気付く。「あれ? 左手が、左手に?」
「お気付き為さりました科、相武様。そうです、其れ牙翔和様牙取った最後乃行動那乃です!」
 ウググ……意外に重たいな--上体を起こすのが難しい事を感じながらも腰を曲げてから左腕を見つめる相武。
『--無い筈の左腕の感覚から私は病み上がりの状態から体を起こした。其れから、
しっかりと左腕の感覚の正体を確かめる私。すると左胸から爪先に掛けて包帯で
巻かれていながらも確かにある私の左腕。拠点型の中にて銀河連合の腹の中に収まった
筈の私の左腕。其れが不思議な事にこうして包帯で包まれながらも存在する大きな理由
が其処にある。
 其の話は今からザルノスケの口から語られる。如何してザルノスケだけが病室内に居る
のか? 如何して私の左腕がこうしてあるのか?』

(確かに、お前に引き継がせたぞ。俺の肉体と魂はもう此の世に無い。だが、あの世に逝くのはまだ早い。何故なら俺にはまだまだあいつに謝っておきたい事がたくさんある。其れを果たす迄、俺は死ぬ訳にはいかない。決められた定めであっても俺は生き続ける義務がある。そうだ、俺は時雨様と約束したんだ。時雨様と出会う前に相武と出会ったんだ。其の前から俺達を見守り続けた秋雨の思いもあるんだ!
 だから……俺は絶対に死んではいけない理由があったんだよ!)

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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