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一兆年の夜 第百二十二話 天地相為す 天同相武は翔和に託された(五)

『--私にとって悔しかったのは何も出来ずに彼の気体に応える事が出来ずにみんなが
介抱する中で彼だけが居なかった。此れが私にとって悔しかった。だから私は医者の声を
聞かずに寝室から抜け出して更には神武包丁を一本だけ保管庫から取り出して例の
拠点型の所迄走って行った。勿論、私の行く先を止める者は居た。翔和は私の考える事を
確実に理解していたのだろう。だが、私は其れを考えもせずに自らの権利を使って進行へ
の口実を立てた。私が行けば軍者達は必ず高揚する。其れを知っていて私は過ちを
犯してしまった。私は--』

 午後一時一分三十一秒。
 場所は拠点型入り口。
 相武は傷が治らないまま、其処で右手に包みと鞘で覆った神武包丁を持って足を踏み入れる。其処へ齢三十一にして二十八日目に成るボルティーニ虎族の中年で佐々木家とは先祖が同じなタイガンド・宮本率いる宮本班四名が声を掛ける。
「いけない、タイガンド。此処は僕がやらないといけない!」
「其の傷で入られるのですカカ、相武様アア!」
「此の傷が何だ。実戦ではもっと怪我を残すんだ」
「いエエ、怪我処ではなくなりまスス。如何か我々に任せてお下がり下さイイ!」
 断る--そう言って相武は剥き出しの迷宮へと足を踏み入れた。
「待って下さイイ、相武様アア!」意外に足が速い相武の後を追うタイガンドら五名。「我々を置いて先に行かないで下さイイ!」
 そして相武と宮本班は突入許可も採らずに目を逸らしながら入ってゆく。だが……「あああ、此れは報告あるが侭にでしょう。こんな事は絶対に会ってはいけないでありましょうか。そうに決まって--」

 午後十時二分四秒。
 場所は拠点型内部心臓型区画。
 相武は左腕を食べられながらも生き残りであるタイガンドと共に心臓型迄到達する。数多の生命の助けと翔和に見習って包丁が欠けてでも素手と素足で何とか戦い抜く。だが、其の度に宮本班の生命が一名、又一名と銀河連合に食べられる。後少しで食べられる所を相武は決死の覚悟で左腕だけ食い千切られた状態で何とか助かる。だが、タイガンドは相武の命を救う為に胸に人族の平均的な成者の雄の拳位の貫通穴が出来る。衣服等で傷口を塞いでも居るが、貫通した箇所は強く縛っても漏れ出るように血が溢れる。其れだけではない。
「ウグッ……歩くのも、まともじゃない、のか?」
 此の位イイ、ウグッゥゥ、大丈夫ウウ、ジャジャ--喋る度に何度も口から赤い液体を吐くタイガンドは最早幾許の命しかない。
「僕が、僕のせいで……僕が強いと勘を違えなければ--」
「そうしテテ、己ノノ、行いヲヲ、悔いる前ニニ、、先ずは……あれですウウ!」
 心臓型……だが、此処に来て、か、体が--左腕がないせいではない……相武は心が恐怖で硬直を始める!
「確かニニ、恐い……だがアア、我はアア、我はアア!」タイガンドは心臓型より成人体型十離れていようとも、傷が深かろうとも……「全生命体の希望として恐怖を怒りに変えるウウ!」命の炎を燃やして限界以上の力で跳躍。「思い知れエエ、使命の為に命を懸ける事の素晴らしさをおオオ!」
「タイガンドオオオオ!」
 タイガンドが後少しで鋭い爪が届く其の時--信じられない光景が相武の目に焼き付ける!
「そ、そんな……ウグッ、左腕が、又、痛い、よおおお!」激しい痛みが思い出す程の衝撃が相武に駆け巡る。「恐怖が……身に余る恐怖がああ、痛みに、変換を、変換されてゆくウウ!」
 タイガンドは遅かれ早かれ想念の海に旅立つ……だが、其れをやったのが本来動けない筈の心臓型--いや、あれは心臓型なのか?
「何で心臓型の背中を持った……前に翔和と、翔和、と戦った、あの、あの複数腕の方なんだよ!」
 複数腕の銀河連合の真の姿とは恐らく……「間に合った!」と其の前に神武包丁が複数腕の銀河連合の右胸の辺りに飛来--残念ながら複数腕を表す触手で払われて其れは真下に落下してゆく!
 左腕の痛みに意識を飛ばされそうな相武の左横に立つのは……「間に合った……済まない、俺本来の使命を忘れて!」翔和だった!
「翔和……いや、此の場合は--」
「翔和で良い、俺の半身よ!」翔和は左腕が無いのを見て謝罪の言葉を再び口にする。「済まない、あんな事を強いた上に剰え……大事な左腕をそんな目に遭わせてしまって!」
「謝罪するのは、僕、の、方だ、よ……」
 相武ウウ--駆け寄る翔和だった。
(息はする……大丈夫だ、大丈夫なんだ!)
「其乃傷出端後少し出、相武様端」齢二十七にして二十二日目に成る神武鬼族の青年にして最後のカゲヤマノ家の雄であるカゲヤマノザルノスケは心配する。「如何します、死んだら天同家端絶たれます余!」
「其の時は俺の……いや、相武はまだ死なない!」翔和には明くる日が見える。「其処で大人しく見ていろ、ザルノスケ。俺が戦いを見せてやる!」
 承知しました、翔和様--ザルノスケは後に相武の右腕として最後の時迄戦い抜く真古天神武歴戦の軍者の一名である!
「其れよりも……此の感じ、そして如何にも初めてとは思えない感覚から」漸く翔和は倒すべき銀河連合を見付けた。「お前は地同翔真の事を知っているだろう?」
 銀河連合は一切言葉を発しない。だが、意思表示として新心臓型は背中にある触手から大量の血を噴き出しながら一気に間合いを詰める--血液を噴射に使う全く新しい銀河連合だった!
 翔和は己よりも遥かに速い其れを相手に右膝蹴りを喰らわした--明後日酔いと呼ばれる症状に苦しむ生命とは思えない反応速度と対応をしてみせる!
「あれ於……神様乃如く、対処した乃科!」
「まだまだこんな物じゃないだろ、銀河連合ウウウ!」
 こうして翔和最後の戦いの幕が開けた……

(此の戦いの結末を俺は知っていた。だが、其れでも俺はやるしかなかった!)

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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