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一兆年の夜 第百二十二話 天地相為す 天同相武は翔和に託された(四)

 六月六十日午前零時一分二秒。
 場所は天同相武の間外庭。
 翔和と相武は何時ものように秘密の訓練をしていた。そんな時だった……「フウ、やはりお前は俺の跡を継ぐには強くない!」突然、翔和がそんな一言を告げる。
「何を言うんだ? 僕は匠みたいに強く成れない--」
 其の己を後ろ向きに見る態度が……俺は気に入らないんだ--突然、翔和は相武の頬を右拳で勢い良くぶん殴った!
「な、何だよ!」
「立て、此れからお前に銀河連合とは以下に恐ろしいかを思い知らせてやる!」
「な、急に何の馬か鹿だよ。いきなり何を考え出したんだ--」
 黙れ……今から実践訓練を始める--恐らく公の中で初めて試みられる実践且つ命懸けの修行が始まる!

 午前一時零分一秒。
 其れは一の時も経たずして終わる。翔和は徹底的に相武を傷付けた。其の度に自らの心に何か痛みが走る。物理的な痛みでは相武の方が甚大。なのに翔和の方が痛みが走る。
(俺には出来ない。銀河連合を倒せても一般生命を死なせようと行動する度、意識が本能が急停止させるんだ。そして、痛め付ける度に俺は罪を重ね、呼吸が困難と成り、そして何が何だかわからなくなる。出来ないんだよ、こんなの!)
 心の痛みからか既に翔和は涙を流し続ける。堪えたつもりが実は心の痛みが予想以上に翔和に命じる。
(俺は結局、一般生命なんだよ。俺は銀河連合を倒せても一般生命を倒せない。一般生命を倒そうとすれば本能が其れを止めるんだ。其処で俺はわかるんだよ、如何して今迄ずっと先者達が痛みに耐えていた証拠か。怒りを覚えた頃から心の痛みは始まり、其れから始めて刃を取った時もずっと心の痛みは重なり続けて来たのか。何なんだよ、こんなの。俺には激しい痛みとして、痛みとして、何で、何だよ!
 俺は、俺はああ!)
 翔和は耐え切れずに気を失う相武を放っておいて塀を飛び越えて第四北地区へと走ってゆく!

 午前一時七分四秒。
 場所は第四北地区。其処にある暗い時間帯にだけ開いてある酒場。
 翔和は其処に駆け寄る……「いらっしゃいぶ」齢三十八にして四の月と二日目に成るボルティーニ豚族の老年新谷ブタ彦は器用に瓶に詰まった軟木を右前足の蹄を一回捻るだけで開けて見せる。
「酒を三瓶」
「あんたは地同家の翔和さんじゃないかぶ。相武様は如何したんだ?」
「今は酒を呑みたい。俺が居なくとも相武は……いや、相武様は誰かが付いている」
「……まあ良いぶ。溺れるのも自由だ。だが、早いぞ」
「ああ、早いな。だが、あんたには俺が早朝から何をするのかわかる筈が--」
 聞いたぜ、犬猿道に潜む謎の拠点型を叩ぶんだってな--ブタ彦は噂好きな老年だった。
「はあ、情報統制が成ってないぜ。まあ良い、酒に酔った俺は聞かなかった事にする」
「そりゃあ一般生命の心意気として如何なんだぶ?」
 其れは其れは宜しくない……が、今は忘れたい--翔和は心の痛みに激しく参った後である。
(相武の為と思ってやった最後の訓練……其処で俺は激しい痛みを思い出す。襲うのではなく、思い出すのさ。天同家が蓄え続けた罪の重さ、地同家に成っても此の痛みは継続し……其れが実践訓練の時に解放され、俺に思い出され続ける。何故俺はやったんだ、相武に!
 昨の日に夢宇宙との対話をしなければこんな事には成らなかった。明くる日を知ろうとするからこんな目に遭うんだよ。いっそ、明くる日を知らなければ心は痛みが走る事もないのに!)
 翔和も仙者である以上、夢宇宙との対話が可能。だが、同時に明くる日を断片的に知る事と成る。其れは自らの寿命が残り少ないという事実である。其れは肉体的に寿命が少ないという意味ではない。彼は自らに襲い来る命の運びを思い知った。思い知ったが為に急いでしまった!

(俺の命が尽きる三の日より前に俺と相武はあの一件以来、顔を合わせない。俺は相武を大分痛め付けてしまった。時雨様や秋雨に対して礼を失する事をしてしまったんだ。俺に彼の傍に居る資格がない。そう思って俺は仕事に逃げてしまった。いや、逃げるしかない。
 其れがやがて俺にとってとんでもない悔いを齎すとは知らずに。そうだ、其の悔いは今日起こった!)

 午後八時四十七分十二秒。
 場所は六虎府経済都市第五東北地区新犬猿道弓八ゆみは坂。
 其処に突然走行者が発見した拠点型の入り口。其れは三の日より前に起こった事件。以来、犬猿道は立ち入り禁止と成り、総勢一万もの軍者が交代を繰り返す事で張り込みが続くという厳戒態勢が敷かれる。
 其の現場指揮官を務めるのが齢二十八にして四日目に成る神武猫族の女性であるニャルタラノニャルメン。彼女と会話をするのは翔和。
「万事問題ありませんにゃ。仮に忠告を無視してにょ分隊なら分隊全員で、小隊にゃら小隊全員で、中隊にゃら中隊全体で……と命を投げ出す覚悟は当に出来ておりにゃす!」
「いや、其処迄やるなよ。只でさえ、軍者は緊張感を維持する為に何名も心労で病院送りか或は辞めて行くという過剰労働なのによお。只でさえ数が少ないのに理無きは余りするな。小出しが一番だろうが、今は」
「小出しは良くにゃい。此れだから一名だけで何とか出来る生命は良くにゃいのです!」
 はあ、全然聞かないや--ずっと此の会話の繰り返しで呆れる翔和。
 そんな二名の下に齢二十三にして三の月と八日目に成るタレス燕族の青年陽孫堅が飛んで来た!
「た、た、大変であろうか。此れは僕も大変な状態であられましょうぞ。其れは其れは何と言えば良いのかわからなかろうに--」
「わかったから要件を率直かつ端的に伝えにゃさい、情報員の陽孫堅!」
「ええ、相武様が、あの真古天神武第十代王で在らせられる天同相武様が何と何と間違いなく天同相武様が--」
「だから端的に伝えなさいよね……って相武様がにゃああ!」
 何で相武が……じゃなくて相武様が--翔和は思わず神武包丁を二本持った儘、走ってゆく!
(俺とした事が……クソウ、何で早朝に酒を呑んで動きを鈍らせたんだよおお!)
 酒のせいにする一面も持ちながらも状態が万全ではないという中で拠点型に向かってゆく翔和であった!

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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