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一兆年の夜 第百二十二話 天地相為す 天同相武は翔和に託された(二)

 六月四十九日午前一時二十七分四十三秒。
 場所は西物部大陸ユークリッド地方エウク県第五西地区。
 其処は幽霊地区と呼ばれる場所。近年のエウク県は既にかつての栄光は無かった。鳩山家も配達本部も既に首都に移され、更には派遣本部も最早見るも無残な状態。エウク県は急激な速度で幽霊地区化が進行。後数十の年もすればエウク県は完全な幽霊歳に成る明日も近いと言われる。
 そんな場所に十八名の軍者が骨と成って転がる……齢二十三にして三十日目に成ったばかりのエウク馬族の青年真島ポニー仁は表情を蒼くして更には震わせる--目の前で掠り傷一つ付かない複数腕の銀河連合!
「い、いけなあああい、いけ、いけけ、こ、こことわりりりり!」ポニー仁は既に戦意を悉く砕かれて言葉すら出ない上に下がる事さえも忘れる程、憔悴し切っていた。「こ、こ、これ、から、か、かか?」
 複数腕の銀河連合は其れを機会だと感じて笑みを零す。剥き出しの素顔から浮かび出る笑みは一般生命に見られる微笑ましい笑みでも幸せ溢れる笑みでもない。何と言うか、命を取る事を至上の喜びとする余りにも考えられない笑みである。然も強者との戦いに至上の喜びとする生命は確かに存在しても強者との戦いを至上の喜びとする銀河連合は一体たりとも存在しないという絶対的な法則を裏付けるかのように此の状況を嬉しいと感じる複数腕の銀河連合。一方的に食い散らす事が出来る……其の為に此の状況迄縺れ込ませた。いや、既に喰われた後の十八体と此の銀河連合とでは力の差が極端に離れていた。なので頭脳を駆使する迄もなく身体能力だけで此処迄事を運ばせたという表現が正解。なので縺れ込む程、苦戦もせずに複数腕の銀河連合はたった一名を残すのみと成った。
 ポニー仁は既に動く事さえも忘れた状態にある。自力では何も出来ない生命が求める事と言えば……「助けてくれえええい!」と如何しようもない状況に成って初めて救世主を求めるのだった--此の意味は自分の命が助かる為じゃない……自分の力では如何する事も出来ない時にこそ叫ばれる懇願の叫びであった!
 そんな声に反応する生命は何処にも居ない……銀河連合はそう思って一歩ずつ歩を進めて行く。だが……「聞こえたぜ、其処の馬族の奴!」翔和は駆け付けた!
 翔和は真正面から例の複数腕の銀河連合に対して抜いた神武包丁で仕掛ける。其れに対して複数腕の銀河連合は何と一太刀見ただけで六手白刃取りにて掴み取るとそのまま折って見せた!
「何、ウオッ!」直後に繰り出される右上腕に依る直線突きを屈みながら咄嗟に下がる事で回避する翔和。「俺の一太刀を一回見ただけで白刃取りするなんて……今迄の銀河連合とは何か異なるぞ!」
「ハアハア、匠いい……いや、翔和!」ポニー仁が居る前では呼び方を公にする息切れ気味の相武。「ハアハア、如何したんだよ……お前らしくないじゃないか!」
「た、た、助かりましたあああん!」身長成人体型一の相武に凭れる漏れのポニー仁。「恥とかもう、そんなんじゃなくてええん!」
「お、重たいよ。其れに何か匂うけど……十分其の恐怖は良くわかったよ」相武は冷静に分析するだけの体力は残る。「あの翔和自慢の斬撃が防がれる事からも……あれは僕だって同じ立場だったら貴方と同じようにしてましたよ」
「一昔前の俺だったらもっと汚らしいぜ」と自らの経験を少し口にしながら包丁を鞘に戻して相武に放り投げた翔和。「欠けているが、持っていろ!」
「わわ……何で僕に?」
「やるんだよ、例え徒手空拳でもな!」
 茶無き事だ、止めるんだ--相武がそう口にするのも理無きではない!
「だが、実際に素手で確かめないと」其れでも挑むしかない翔和が居た。「そいつがどれ程の強さかわからない!」
 翔和は叶わないとわかりつつも間合いに入るのではない!
(倒す為には直接、肌で感じるしかない……行くぞ、謎の銀河連合!)
 そして、複数腕の銀河連合の繰り出す連続打撃を躱さずに受け止める--両掌で回しながら!
「凄い、全然見えないのに全部受け止めている!」
 ふええ……思ったよりも受け流すのは上手だな、俺も--決死の覚悟で見切る翔和!
 だが、複数腕の銀河連合は笑いを籠める。其の意味する所は即ち、速度を上げてあらゆる方向から翔和を叩き潰す為の連続打撃の始まりだった!
「あの攻撃だあああい。あの攻撃を避け切れずにみんな死んでしまああああったんだああん!」
「ああ、体が支離滅裂に成りそうな速さと鈍い音が耳に響く……でも!」相武は目を逸らす程の勢いでありながらも翔和の為に見届ける。「翔和はまだ、余裕だ!」
 確かに速い……だが、こんな攻撃で俺がやられるかあ--左肘で右上腕を下方に流すと瞬時に右手刀で複数腕の銀河連合の喉を貫き、倒して見せた翔和!
 然もただ貫くだけでなく、瞬時に抜いて成人体型五迄下がる事で観戦の確率を最小限にしてみせる。
(其れでも後で薬草浄化しないといけないがな。にしてもギリギリだった。かなりの強さはあるぞ、此の複数腕の銀河連合は!)
 其れから駆け付けた援軍が来る頃には既に複数腕の銀河連合は事切れた後。彼等に依って亡くなった軍者達は適切に埋葬され、ポニー仁は精神治療を受ける為に運ばれてゆく。一応、翔和は駆け付けた軍医の足厚い治療を受けて万全の状態に成った。
「良かったよ、翔和!」
「信じろよ、真古天神武の医療技術……を?」
「如何したのですか、匠?」
 今はまだ呼び捨てで構わない……が--翔和は気配を感じた……底知れぬ何かが翔和を倒すつもりで睨んだ事に!
(あの複数腕の銀河連合よりも恐ろしいのが一体睨んでいた……然もあれは間違いなく姉ちゃんが死んだ時に感じた其れに似ている!
 まさか……面白いじゃないか、やっと会える日が待ち遠しいなあ!)

『--其の時の翔和は如何にも怒りと楽しみが混じり合うような笑みを零していた。
間違いない、感じていたんだ。翔和の姉である翔真しょうまを死なせたあの恐るべき銀河連合を。
私には一切感じる事が出来なかったモノは翔和には感じる。翔和が其れ程に高みに上り
詰める生命である証拠なのかも知れない。其れは同時に翔和の覚悟もあった。自ら
封していた新仙者の力を解き放つ日でもあり、自らの命を燃やし尽くす時でもあった。
 私にとってあの時に感じていなければ翔和は死なずに済み、ひょっとしたら何処かの
政党に立候補して最高官の道を歩んでいたのかも知れない。なのに翔和は政の道よりも
戦いの道を選んでしまった。「如何してなのだ、地同翔和!」そう叫んでやりたい程に
悔しい。今でもな--』

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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