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一兆年の夜 第百二十一話 天地相為す 地同翔和の前に壁が立ちはだかる(終)

 六月四十五日午後十一時五十八分二秒。
 場所は神武聖堂天同相武の間外庭。
 齢十五に成ったばかりの相武は成者で初めて翔和から稽古を付けられる。
「イデッ……まだまだ包丁の使い方だけは馴れないな」
「当たり前だろう。誰だって最初から出来た生命じゃない。俺だってそうだし、お前だってそうだ。だがなあ、出来た生命に成ればそりゃあ天同生子に成る位のもんだ。俺もそう成りたいさ」
「そんなに大袈裟なのか、出来た生命って?」
「何、どの時代に行こうとも天同生子より強い生命を誰もが知らんからな」国家神武の建国者にして最強の仙者として今も君臨する天同生子は翔和にとって目標でもあった。「だからこそ其れを吹っ飛ばす程ならば……壁なんて些細な物に成るさ!」
「そんなの一生懸ったって理が無いな」
「当たり前だ、此れは国家戦略と同じく絵に描いた餅だよ……結局はよ」
「ならば如何して国家戦略は必要なのさ!」
 希望だよ、相武--国家戦略とは言わば全生命体の希望である!
「希望かあ、でもそんなの絶える望みに変わるだろうが……出来なければ!」
「まあな。希望は何時迄も続かない。だから国家戦略の土台には数多の現実的な目標が掲げられる訳だよ。天同躯央の提示する事も国家戦略ではなく、結局は中期目標に過ぎないのさ」
「其の躯央は中期目標の先に希望を求めたのか?」
 何を当たり前の事を言ってるんだ--其れ以外に何を求めるのか、と言わんばかりの返答である。
「其れでも一般生命は限りある命の中で果てるんだよ。其れから幾ら誰かが思いを継いだって一般生命と同じく其れは長続きしないだろうが」
「其れでも長続きした者は目の前にあるじゃないか!」
 ……僕の事か--連続性こそ天同の仙者の強み……十分過ぎる全生命体の希望である!
「確かに幾つもの壁は立ちはだかるさ。何時かは天同の連続性は何処かで途切れるかも知れない。其れでも俺達は抗い続けられる。其の連続性こそが強みであり、責任重大であり、鈍重にだって成るさ。けどなあ……銀河連合には其れはない。其処を衝けば俺達は銀河連合が作り出す世界を払拭して俺達だけの理想郷が何れは作れる。俺達が歩んで来た歴史にこそ、希望が見出せるのだよ!」
「途中から良くわからないけど、兎に角やる気が湧いて来たぞ!」其れから木製包丁を持った儘、再度稽古をせがむ相武。「今度は僕が一本取ってやるうう!」
「其の意気だ……だが、俺が歩んだ道はお前に比べればちっとも軽くはない!」
 二名は明くる日の深夜一時迄稽古を続けるのだった……
(行くぜ、時雨様に秋雨様。あんた達が守りたかった者は俺の命に代えても守り抜いて覚醒する其の時迄、生き抜いて見せる。其の日は何時か訪れるかも知れないし或は訪れないのかも知れない。其れでもなあ……俺は二名が秘密にして来た物を墓の下に持ってゆく覚悟で天同相武を俺以上の仙者にするつもりでいるぜ!
 だから想念の海で期待してみておけよ!)

『--翔和は最後迄、私が秋雨姉さんについて知らないと思っただろう。其れでも
構わない。何故なら私もあの秋雨姉さんがずっともう一名の私の事を救えなかったんだ。
最後位は姉の思いを受け止めてやらなくて如何するんだ。其れから漸く救う事が
出来たんだ、もう一名の天同相武を。彼女も又、壁とひたむきにぶつかったんだ。私や
翔和だけじゃない。壁は誰だってある。特に全生命体にとって壁とは銀河連合だけ
じゃない。内面にある壁だって立派に聳える物だ。其れをゆめゆめ忘れない事。然も
壁は乗り越えたり壊したりした位じゃあ消えたりしない。新たなる壁が死ぬ迄立ち
はだかる。気が遠くなる程の歳月も、な。だから我々が壁と向かい合う時は決して壁が
無く成ると思わずに只管、乗り越えるか敢えて其処で自問自答するか或はぶつかって
砕ける気で居るかの何方かだ。私の場合は中間の答えに行き着いてしまったがな。
 さて、彼と私の物語は此処で終わった。彼に託される物語私が覚醒する物語、そして
私が行方知らずだったもう一名の天同と出会う迄とこうして迫り来る銀河連合の嵐が
執筆中の私をも喰らう迄の物語
までまだ遠い。其れでも読者のみんなにはまだまだ
付いて貰うさ。
 次は翔和にとって最大の仇であるあいつが姿を現す彼に託される物語を始めるとする。
其れ迄暫しの休息を。では--』

 ICイマジナリーセンチュリー二百九十八年六月四十六日午前一時零分零秒。

 第百二十一話 天地相為す 地同翔和の前に壁が立ちはだかる 完

 第百二十二話 天地相為す 天同相武は翔和に託された に続く……

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Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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