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一兆年の夜 第百二十一話 天地相為す 地同翔和の前に壁が立ちはだかる(三)

 三月二十六日午後十時五十三分三十二秒。
 場所は首都ボルティーニ中央地区第三公営墓地。
 第一公営墓地は天同家及び地同家、中同家の生命のみが入る事を許される特別な墓地。其の為、天同家の血を引く者或は婿養子及び嫁養子に成らなかった天同及び地同及び中同の生命のみが墓石の下に入る事を許された神聖なる墓地。
 一方で第二公営墓地はボルティーニに住まう全ての生命が入る事を許された共同墓地。然もボルティーニ及び六影、其れに神武に帰化した者達だけが其処で眠る。若しも其れ等以外の者の場合は帰化した土地に合わせた墓地に眠る事に成る。無暗に非帰化種族が入る事は他の都市に深刻な過疎化を招き、更にはボルティーニへの一極集中を招く。墓一つとっても国を運営する事は容易ではない。
 最後の第三公営墓地は何と首都で倒されて来た銀河連合を埋葬する恐るべき墓地。其の為、埋葬する度に其処から銀河連合が湧き出るという噂が絶えない。そんな場所に普段から立ち入るのは墓地専門の軍者部隊か或は物好きかそして--
「やっと暇が出来た、出て来い!」己の用の為に来る地同翔和位である。「銀河連合ではない証明は出来ないが、一般生命である証明は出来る筈だ」
 何時から気付きましたか--齢二十四にして十一の月と十八日目に成る相武の姉である秋雨が第三公営墓地の中で最も大きい三角墓地の翔和から見て死角から姿を現す。
「やっぱりな。あれだけ歳の差が離れているのに心配しない姉ちゃんが居るかよ」
「まあそうですね。ですが、ちゃんと質問に応えましょうね、翔和君」
「其処も俺の姉ちゃんと同じ感じか。まあ良い、気付き始めたのは一の月より前からだ。まあ公には語らないけど、俺達の秘密の出来事から国立公園迄気配を消して見守り続けたんだろ?」
「あの辺りからですね。でも私が相武君の監視をし始めたのは何も君と翔和君が出会う前からだって知ってた?」
「だろうな、そんな気がしたんだ」
「流石は翔和君。だったらわかると思うけど、此処に墓を掘り起こそうとする銀河連合が潜む事も知っているよね?」
 ああ--既に二十五体に囲まれている事に気付く翔和。
(内訳は目で確認しないとわからないが、百獣型と並ぶような特殊な気配は……ない。だが、神武包丁とて万能ではない。かといって素手でやれば感染の恐れもある。幾ら仙者とて避けて通れない)
 翔和は数の多さに冷や汗をかく。其れも其の筈で今も昔も包丁は銀河連合一体を倒す度に刃毀れを起こしやすい。昔に比べて使用回数が若干増えるように改良が加えられても居る物斬り包丁。其れでも一般生命と同じく骨すらも斬り落としたり、血液に含まれる鉄分で酸化する事は避けて通れない。故に包丁の刃毀れを最小限にする斬撃の技術が必要と成るが、翔和自身はまだ……其の域には達していない。
「翔和君、包丁を持つ時は脱力が重要なのです」
「姉ちゃんと同じような事を」翔和は背中合わせに秋雨から何かを感じつつも次のように口にする。「だが、其れは此奴等を全員倒して墓の下に埋めた後で問うとしよう!」
 気付き始めるの、私が何者なのかを--そう口にしながら微笑みが絶えない秋雨だった。
 以降は一の分と十五の秒の間は互いに喉を通して声を発しない。そして、雄叫びと共に二名は其々の方向から攻めに来る銀河連合に向かって石床を蹴り飛ばす!

 午後十一時零分零秒。
 戦いは終わり、刃が一割迄短く成った神武包丁を見つめる翔和。其れを気にして声を掛ける秋雨。
「まだまだ使い勝手に慣れていないわね」
「ああ、そろそろ埋葬作業に入ろうか」
「質問に答えるのが先です、翔和君」
「全く姉ちゃんみたいな雌だな、あんたは」
「まあね、弟を持つと如何してもお姉ちゃんぶるのですから」
「……本当は天同家の生命ではないんだろう?」
 其の話は後よ、先にさっきの質問に答えて--一般生命らしく隠し事はしてもぶつかろうとはしない秋雨だった。
「えっと……包丁に関しては時間を掛けるしかない。何せ上り詰められるのは一握りだしな……俺は其の一握りに到達する覚悟はある!」
「出来るわ、相武君と一緒なら……じゃあ埋葬作業に入りましょう」
 微笑みが絶えない秋雨は翔和と共に二十五体の火葬と浄化と埋葬を始めて行く。

 三月二十七日午前一時零分三秒。
 途中で合計五体もの銀河連合の奇襲もあって作業が難航しつつも三十体の埋葬を完了した二名。其の間に此処にやって来た生命は一名も居ない。そんな中で翔和は疑問をぶつけて行く。
「ええ、そうね。私は此の時代の天同ではない」
「やっぱりそうだ。あんたは包丁を握った時に何か変な粒のような物が見えた。あれは何だ?」
「其れは極秘ですね。だってこの時代に存在しない物質ですから」
「わからんな。其れと如何して今迄天同秋雨を名乗っていたのだ?」
「そうね、六の年より前にマンドロス山にて本物の天同秋雨は……死んだのよ!」
 クウ、生存を信じていたのに--翔和にとって其れは聞きたくもない事実だった!
「実は本物が死ぬ前に一の週より前にマンドロス山にて彼女と出会ったの」
「そうか。じゃあ何で今は亡き秋雨の姿をしているのだ?」
「いえ、元々私の顔は秋雨と瓜二つなの……そして本名もね」
「如何ゆう事だ……そんな話があるか!」
「そんな偶然はない……誰もがそう思うでしょうけど、本当なのです。そして私の弟の名前も相武なの!」
 そんな馬か鹿な話があるか--翔和は驚く以外の反応を表現し得ない!
「だからこそ私は羨ましかった。幼い頃に守りたい筈だった相武は死に、孤独に苛まれていた所を突然の時間旅行で過ぎ去る時代の此の宇宙へと跳んだ。そして、偶然にもアマテラス銀河にあるスサノヲ太陽系第三惑星である水の惑星に辿り着いたの。其処で偶然にも性格も姿も年齢も同じだった彼女と出会ったわ。そう過ぎ去る宇宙の天同秋雨と!」
「そんな偶然が……夢宇宙は如何して平気で時間旅行を繰り返してゆくんだ!」
「其れでも此の出会いは運命だったの。そして私は一の週もの間、此処で潜伏しながら暮らして秋雨と様々な話をしたの。やはり偶然にも過ぎ去る時代の相武君も死に別れた相武君同様に出来が良くなくて其れで居ながらとても優しくて放っておけない生命だってわかった。わかったのは良いけど……直後に其の秋雨は背後から銀河連合に食べられてしまったわ、目の前で!」
「何て事だ……だが、其れなら今迄如何やって気付かれずに秋雨を演じ続けられたんだ?」
「いいえ、既にお父様が……此の場合は時雨様と呼ぶべきかしら?」
「いや、如何せあんたの父親代わりだろう。良いじゃないか、好きな方で!」
「ええ、お父様が既に私達との関係に気付いていたらしくて誰よりも早く駆け付けて私に相武君の姉を演じる事を認めてくれた……いいえ、誰よりも相武君のお姉ちゃんとして救えなかった本当の相武君を重ねてもう一度愛する事が叶ったわ!」
 そうか、だからこそ俺が出会う前から相武をずっと見守っていたのか--己が手を出さなくとも何れは彼女が救っていた……余計な事をしたのではないかって考えが翔和に過る。
「いいえ、君は正しい。君は一般生命として当たり前の事をしたのです。いけないのは相武君です。災害時に山を登ってはいけない事を知らずに無茶をした相武君がいけないのです。そんな相武君は君が助けても私が助けても此れはきっと夢宇宙の決定だと私は断言します!」
「言うね、あんたは」
「でも私の事は墓場迄秘密にして下さい。私は相武君が成者に成る迄、見守るつもりです。其れ以降は元の明くる時代の秋雨に戻って二度と姿を表したりしませんので如何か宜しくお願いしますね」
 期間限定かよ、益々俺の姉である翔真と瓜二つだな--思わず微笑みを零す翔和だった。

(相武が成者迄彼女はずっと見守り続ける……そう思っていた。そう思っていた……のに!)

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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