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一兆年の夜 第百二十一話 天地相為す 地同翔和の前に壁が立ちはだかる(二)

 ICイマジナリーセンチュリー二百九十七年二月百九日午前零時四分二秒。

 場所は真古天神武首都ボルティーニ中央地区神武聖堂天同相武の間外庭。
 去る年に亡くなった時雨の遺言には次のような言葉もあった--想念の海に旅立ったら己が死んだ間を新たに第二子である相武の間にするように--と。故に旧天同時雨の間は遺言通り、天同相武の間に改名された。其処では二名の仙者が寝食を共にする。齢十九にして四の月と十九日目に成る地同翔和と齢九にして九の月と十一日目に成る天同相武。二名は生前時雨がある夢の為に改築を頼み、自らの庭として使い続けた外庭にて秘密の特訓をし続ける。其の庭が造営された主な理由は次の会話の通りである。
 ウワアア……やっぱり翔和さんにかなわないよ--昨の日に続き、諦めが顔に滲み出す少し肉が付き始める相武。
「全く昨の年みたいなやる気は何処に行ったあ!」訓練時は私情を一切挟まない翔和。「其れと俺の事を翔和さんではなく、と呼べ!」
「ええ、何でそんなよび方するんだよ。ふつうによばせてよ!」
「其れは出来ん相談だ。今、俺達は壁に立ちはだかっている」翔和は相武に教える。「己自身という壁に、な!」
「おおげさだよ、翔和さん!」
 だからと呼ばんカアア--そう言いながら仰向けに倒れる相武の右手を掴むと思いっきり立ち上がる様に引っ張る容赦知らずの翔和だった!
「イデデ……うでがのびたあ!」
「生命の皮膚は其の程度の力で簡単に伸び切ったりしないし」翔和は木製包丁と呼ばれる切れない包丁の先を相武の額に当てる。「其れと同じようにお前が簡単に俺みたいに強く成れる訳がない!」
 なんなんだあ、まったくう……やめだやめだ--相武は根気が続かずに何時も通り仰向けに寝転がって脛を齧り出す始末。
「はあ、全く出来の良くない生命は壁にぶつかると何時も此れだ!」勿論、己の事のように向けられたりもする翔和。「だが、俺は意地を張るしかないな」
「なんだよ、ぼくにかまうことないじゃん。あきらめてねたら?」
「誰かが此処に来そうだったら諦めてお前を部屋に連れ戻して寝かせる……が、俺が感じる中ではそんな気配が何処にもないので--」
 其の時、翔和は生命体には有り得ない気配を聖堂の外より感じ取る--訓練時の時よりも激しく、そして険しい表情を相武に見せながら!
「……ぎんがれんごうがきたのか!」
「……其処は察しが良い。付いて来い、相武!」翔和は其れでも自称として相武を育てる事に余念がない。「銀河連合との戦いはお前の成長を促す!」
 べ、べつに……ってうわあ--強制参加しかなかった相武。
(成長を促す……其れは俺自身にも尋ねる言葉だろう。最近は相武に対して良くない苛立ちを見せる。何でだろうなあ、俺らしくない。だから俺は……相武を成長させる為に俺自身にも問い掛ける必要があると思ったのかも知れない!)

 午前零時五十七分一秒。
 場所は中央地区。集会場と成るボルティーニ国立公園北側入口前。
 其処で既に駆け付けた三名の軍者達は十体もの牛型に対して互角を演じる。そんな中で駆け付ける翔和と彼に引き摺られる形で息を切らし気味の状態で走って来た相武。
「ハアハア、みんな」幾ら相武でも誰かの死は何としても避けたい様子。「ぶじでよかった、はあはあ」
「大丈夫でありまっさあ、相武様う」
「俺達に任せれぶ全部解決しまぶ!」
「だからあああよ、安全な場所で翔和の奴に守られながら見守って下さああああいん!」
 三名はどれも若い方で齢二十七、年老いた方で齢二十九の油が乗っかり始めた軍者達。だが、十体の牛型を相手に数の差で利がないように誰もが思う所。ところが、翔和は三名の申し出に応じるように相武を左脇に抱えて背凭れが丁度ある木陰に隠れる。
「くわわらないの、翔和さん!」
「だから今はと呼べ。其れに雄の覚悟に水を差すもんだ、此れは!」
「でもしんじゃうよ!」
「大丈夫だ、三名を信じろ。確かに俺の見立てでは質が丁度、銀河連合共に傾く。だが」翔和は如何して任せても大丈夫なのかを丁寧に伝える。「だが、なあ。あの三名の内の先頭に居る馬族の奴は四足歩行雄略包丁四本中二本が全く綺麗な侭だ。一番後ろの豚族の奴に至っては全く血痕が付着せずに戦っている。其れから最も強力なのが真ん中の牛族の奴だ。あいつは血だらけだが何処にも包丁を備えない状態で戦っている。意味する所は素足で倒す術が誰よりも長ける証拠だろう。そんな奴が真ん中に立つ事で前後の二名は安心して戦える訳だ」
「なるほど、よくわからないね」
 はあ、まあ……論よりも見るのが一番学べるから見ておけよ--翔和は物覚えが良くない相武を育てるには数を熟すしかないという極致に至る!
(俺の見立ててでは圧倒的な利は銀河連合にある。俺が顔を出す前に十体全て倒してみろ、お前等!)
 翔和は三名に期待を籠める。
「あいつ、俺達が出来ないと思い込んでいぶ!」
「上等だう、やってやっらあう!」
「待てええん、先に動き出すのは……向こうさん側だあああぜええん!」
 其の期待に気付かない三名ではない。其れでも期待に応えて多数を相手にせずに各個撃破に臨む。其の戦いは華麗ではないし、圧倒的でもない。だが、三名は一の分に一体、二の分の後に二、三、其れから続けて十二の分より後に全ての銀河連合を倒し終える。
「みんなそんなにきずつきながら……きたいにこたえるなんて!」
「そりゃあ、軍者でっかう!」
「死ぬかと思ったぶ!」
「結局うううん、俺達は何処でも死ねるように遺言状は温めてありまああすん!」
「という訳だ。学んだか、相武……様?」
 うーん、とちゅうからこわくてめをそらしていた--誰もが避けたい結果の為に目を逸らす行為を相武はしてしまうのだった。
(はあ、こりゃあ必要以上に苦労しそうだ。俺の時よりも大変だろうな。なあ、姉ちゃん。俺に出来るかな、姉ちゃんみたいにやるの……は?
 んん、又此の気配か。全く何処の過ぎたる保護者の視線だよ。今度こそとっ捕まえてやりたいんだけどなあ……なあ)
 翔和は傍を離れる事が出来ない。何故なら時雨の遺言通り--相武が真の一名前に成る迄傍を離れないように--を忠実に守るが為に。仮に離れたとしても傷付き、今にも寝ころびそうな三名の軍者に相武の護衛をさせる訳には往かない。其の為、計三度も翔和は謎の視線を逃すのだった。
(……あれは今では俺が相武と出会う前から相武を密かに見守っていたのかも知れない。何者なのだ、あの視線は。そして俺に刃を抜かせようとしたあの視線……襲名の儀には俺以外にも参加するのが自然じゃないのがもう一名居た。
 だが、あの時の俺に気付かれる事なく気配を消せる生命は……心当たりあるとしたらあれか?)
 此の後も翔和は其の気配を感じつつも次々と逃がすしかない状況が続く……が、一の月より後にとうとう其れを追跡する絶好の機会に恵まれる!

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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