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一兆年の夜 第百二十一話 天地相為す 地同翔和の前に壁が立ちはだかる(序)

『--さて、始めるのは良いけどいきなり筆を起こすと成ると此れが又、難しい。本当は
簡単な筈の筆起こし。けれども始める時は何も浮かばない。簡単な筈の作業ってのは
最初が肝心で意気込みが半端な場合は何も浮かばないのさ。でも、やれる。私には
今も地同翔和とわが見守っている。此れは私の中で想像される地同翔和に過ぎない。本当
の地同翔和とは残り四割も足りない。其れでも己が地同翔和ならば思い描ける筈だ。
最初の導入部分を。そうだ、あれは僕が彼に連れて帰された時の事だったな。父時雨しぐれ
から大変な叱責を買った時に姉秋雨あきさめが宥めていたんだな。其の時に割り込むように翔和
が教育係にするよう頭を下げたな。然も座禅迄組んで迄--』

 ICイマジナリーセンチュリー二百九十六年十一月百四日午前一時二分三秒。

 場所は真古天神武首都ボルティーニ中央地区神武聖堂表門前。
 齢四十四にして八の月と一日目に成る神武人族の雄にして真古天神武第十代王を務める天同時雨は齢十八にして四の月にして十二日目に成る神武人族の少年地同翔和の土下座に困惑する。
「気は確かか?」
「ええ、時雨様の第二子であり世継ぎである此の天同相武そうぶは責任以て此の俺が立派に強い生命にします!」
 頭は、上げましょう……ね--困惑するのは時雨だけじゃない、齢二十三にして十の月と十一日目に成る相武の姉秋雨も同じであった。
「いえ、まだお怒りが収まらないかと感じられます」
「怒りが収まらないのは当たり前だ。勝手に隙を伺って脱走しただけでは飽き足らずに命の危険を冒した。同時に我が子を命懸けて産んだ相秋そうしゅうに対して何と言い訳すれば良いか……事の重大さすらも相武は理解しないからだ!」
「ええ、中同家も既にない上に地同家なんて最早俺だけに成りました。当然、相武様の身に何かあったら次は俺にお鉢が回るのが当然の成り行きでしょう。怒りを露にするのも当然です。何故なら天同家の連続性こそ全生命体の希望へと繋ぐ架け橋です。ですが、俺に頼っても意味はありません。既に南雄略に想い者も居て、既に俺の子供達は南雄略の生命として生きる事が定められております。今更連れ帰っても天同の為に働くのは難しいかと思います」
「つまり何が言いたい、翔和よ」
「だからこそ俺に彼の教育係をお願いしたいのです。子供達の養育する権利を捨てた代わりとして……彼を立派な仙者にしますので!」
「希望へと繋がる生命に育つ保証は?」
「希望へと繋がる……異なります。希望ですよ、相武様は!」
 ……好きにせい、朝は早いから今のうちに寝るように--そうして時雨は教育係を認めた。

 午前六時一分二秒。
 場所は天同時雨の間。
 其処に秋雨が入る。
「お早う御座います、お父様」
「お早う……だが、秋雨よ。もう少し寝ていろ」
「お父様、認めるのですか!」
「ん? ああ、既に彼も一児或は二児以上の親だろう。其処に雄である保証はないだろうし、全員雌だってあり得る。其れについては余裕があれば南雄略の担当者に調査を依頼する」既に身辺調査を徹底していた時雨。「まあ其れよりも南雄略の未来の為に宮家の一員に成らずに敢えて相武の養育係を引き受けたのも恐らくは真古天神武……ないし天同家の未来の為だろう」
「其れで翔和君を相武君の養育係にするというのですか?」
「ああ、そうだ。其れに……ウグッ!」座禅を組んでも楽な姿勢に成るとは限らず、右手を畳に付ける時雨。「仙者じゃない私が長生きするのも既に……まだまだ一般生命が齢五十の年より先を、長生きするのは難しい話だろうな」
「お父様、理無きは控えて下さい!」駆け寄る、秋雨。「た、確かにお父様の言う事も最もですね。既に武内大陸でもっとも長生きとされた方も去る年の夏に想念の海に旅立ちましたので」
「そろそろか……そろそろ相武には襲名の儀を執り行わなければ!」
「お父様、私の御同行は可能でしょうか?」
 わしと同行するのは……地同翔和だ--敢えて彼を指名した理由は何か?
「彼に託すのですね、お父様の全てを!」
 其れから一の週より後……襲名の儀が幕を開ける!

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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