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一兆年の夜 第百二十話 天地相為す 地同翔和は旅立つ(七)

 三十七日午前零時十分三秒。
 場所は南地区新銀河連合埋葬地。埋葬地は流れ星の衝突で粉々に砕け、中から凡そ百……いや、千体もの銀河連合が溢れ出す。其処には一体も指揮官型及び百獣型も存在しない。どれも一般的な種類の銀河連合達である。
「流れ星が何て正確に落ちて来やがったっがん!」
「どっちでも良いエエ、俺達は銀河連合の……特に埋葬地で眠る連中を倒す為にわざわざ中央から派遣された軍者達なのだ!」
「ああああ、死ぬ時は死ぬ時はお互い様ですです」
 話していた三名を含めた計三十八名の軍者は決死の思いで武器を持ち、無数の銀河連合に突入。だが、圧倒的な力は仮に決死で突入した三十八名の訓練された軍者達を前衛に立った三体の銀河連合が僅か二の分と三十五の秒で終わらせ、残った全員で肉の取り合いをするという始末。密かに邸宅を出て駆け付けた翔和は其の光景を見て怒りで沸騰しそうな思いを全身に駆け巡らす。
(落ち着け、翔和。怒りで突撃しても意味がない。奴等がどのように骨だらけの生命を倒したのかは今と成ってはわからない。けれども銀河連合の常識ってのは俺達とは相容れない物だ。其れを一々本能で怒りを示しても意味がない。己との差を知れ……そして怒りは、まだ解放するな。そして戦力を分析しろ。暗闇を知らずに突撃する事即ち彼等の後を追う事に繋がる。そうだ……サーベンの教えに従え、地同翔和!)
 決して臆している訳ではない。思い出す様に翔和は昔叩き込まれた術を頭だけでなく、体にも復唱。一方の千体以上もの銀河連合達は何時迄も動かない翔和を決して直ぐには倒さない。気付かない程度の動きを示しながら徐々に囲い込み、逃げ場を塞いだ所で一気に襲撃する……翔和が其れに気付かない筈もない。
(囲い込みは避けられない。全体が見えない俺に年寄りみたいな事が出来る筈がない。目の前で一杯なんだよ。だから存分に囲い込めよ、銀河連合共め。俺にだけ集中すれば他の奴等が例え駆け付けても直ぐには目を向ける事は難しい筈だ。何せ奴等は俺達と同じように興味に溺れた対象の他は絶対にないんだからな。恋と同じで夢中だと其れ以外は聞き入れないからな。だから……敢えて囲い込ませてやる!)
 翔和は敢えて死地に飛び込む。先程の思った事は翔和にも当て嵌まる。昨の日の午後から酋長に言われた事を聞き入れる程の耳をまだ持ち合わせていない翔和。未だに死にたがっている。未だに翔真達の死は己の責任だと思っていた。そう簡単に他者の意見を聞きたがらないのも一般生命、翔和も其の内の一名である。故に此の状況で死ぬ事に成っても構わないと思っていた。
(だが、只では死なない。俺は絶対に此処に居る銀河連合を叩き斬ってやる……此の力を行使して!
 全ての力を振り絞って翔和は刃を抜いた!

(其れは言葉では説明の付かない戦いだった。然も相手は逸れ銀河連合並に強い奴等だからな。如何やら武内大陸も南雄略と同様に銀河連合が一回り強さの階層が違っているのかも知れない。原因はあの埋葬地なのか? どの道、俺はそんな連中を最初の段階で三体も叩き斬った。刃毀れを起こし始めてから徐々に状況が奴等の方に転がった。刃は半分どころか叩かないと倒せない状況に迄追い込まれ、全身切り傷だらけと成り、既に手入れされて来た神武包丁ではなく五体全てで奴等を倒している俺が出来上がっていた。持っている武器が使えないなら自らの体を武器にして銀河連合を倒してゆく。初めて試みた手刀は兎に角滅茶苦茶痛い。たった二回で親指以外の四本が無茶苦茶折れ曲がった。正気じゃないぞ、手刀の修行をする奴等の気は。鎌鼬流のある一派は投げ技ではなく、打撃技に方針転換したそうだ。中でも全身の硬化修業は正しく伝えた者曰く其れを乗り越えて更なる強さを得た者は限りない。どれも道半ばで全身不随は避けて通れない。覚悟を決めた者にしか出来ない道が其処にある。まあ兎に角、俺は砕けようとも戦い抜いた。気が付けば--)

 午前二時一分七秒。
 翔和は既に満身創痍で何時死ぬかもわからぬ状態。一方で銀河連合の数は百分の一である十五体迄減っていた。数の上では明らかに翔和が圧倒的に利がない。なのに心は銀河連合の方に利がない。怯えていた……両腕は既に骨が剥き出しの状態で左足は既に折れた状態なのにまだ戦いを諦めない翔和を。
(やればできるじゃないか、俺だって。へ、もう力は使えない。だが、其の代わりに真の強さを手に入れた。そうだ、まだまだやれるじゃないか!)
 既に生を諦めるというつまらない意地はない。あるのは根拠はないが兎に角、凄い自信。
「如何した、まだ俺はやれるぞ」
 両腕も動かない翔和は十五体を焚き付ける。すると十五体はやはり冷静に考えて有利と踏まえて笑みを零しながら一斉に襲い掛かる--今の翔和には死しかない……そう思った時、上空から一斉に物部羽の雨が降り注ぐ!
「全く俺達に秘密で戦い抜っきやがって……馬か鹿な翔和様っだあああ!」
 こ、コケラー汰、ぁ--満身創痍な翔和はコケラー汰を見て、立ったまま気を失った!

 四十日午前九時四分二秒。
 場所は中央地区酋長邸二階医務室。
 其処で目覚める翔和。
(此処は……って固定されているのか!)
 目覚めた科、地同翔和斗やら--齢四十五にして六の月と八日目に成るテネス鬼族の右眼が失った老年が見える。
「鬼族の声……そして白衣からして、ダッジャールの者か」
「有無、そうじゃ。全く己之体於何妥斗思っておる」老年は翔和を説教する。「一歩間違えば寝たきり之生活似成っている所だったぞ……全く、因み似私端ギズルダール・ダッジャール妥」
「はあ、要するに退院すれば元の状態に戻る訳か」
「懲りないようじゃのう、救えん若造砂」
 は、喜びに満ちているんだよ……生きる事がこんなに清々しいって--翔和の目から涙が溢れていた。
(此れが生きる事か、此れが……死んでいった者達の命を背負って生きるっていう物か。俺は……こんなにも嬉しい事はないぞ!)
 其れからずっと涙を零し続けたのは語る迄もない。其れよりも細かい点に注目して会話を追ってみよう。
「ところで、コケラー汰は?」
「此処似親族也部下斗思われる連中牙やって来て連れて帰ったそう妥」
 そうか、帰りを待ってくれる生命は幸せだよな……其の点、俺なんか其れすらもう無いじゃないか--と自分は死に場所しか作れるところはないとまだ意地を張る余地があった翔和。
「作れ芭良いじゃない科、帰るべき場所端。私端そう思う牙那」
 考えておくよ--其れから翔和は涙で溢れる眼が気に成りながらも全治何ヶ月かを尋ねて行く。

(全治半の年であるにも拘らず、俺は三の月の後に此処を出た。正確には脱走と呼ぶかな? 手足が少しでも動くと医者の忠告を無視して旅を続ける事にした。
 流石に一の月もの間は辛かったな。痛みが至る所で走り、尚且つ満足に寝る事も出来ない。治ったと思った箇所が急にぶり返す事だってある。何でも神経系が痛みを記憶して急に思い出しに掛かる……脳じゃあるまいのに其れを肉体にも適用するのだから洒落が通じない。
 さて、旅の方だが。武内大陸を突破した俺は次にテオディダクトス大陸にも渡った。其処では大した結果は無かったな。少し旅するのが辛いだけで銀河連合は一体も出会わなかった。お陰で痛みが依り進行する事なく、完治したな。但し、菅原地方ではそうもいかない。其処で数多の異なる種類の銀河連合と死闘を交えたな。あの最強の指揮官型もそうだし、医者型も古文書でしか伝わらない百足人族のような混合型も更には依り銀河連合の戦法に近い参謀型に何度も治しに掛かる情なき医者型もみんなみんな……怪我を多く付け加えながらも俺はある名工に鍛え抜かれた新たなる神武包丁でそいつ等を斬りまくった。もう向かう所銀河連合な死って状態でな……まあ現実にはそうはいかないとは心の中で思っている俺も居る。其れを忘れない事だ。
 そして現在--)

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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