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一兆年の夜 第百二十話 天地相為す 地同翔和は旅立つ(六)

 三月三十六日午後二時三分十二秒。
 場所は川内かわち集落北門入り口前。
 入り口前で警備する派遣軍者三名に依って翔和とコケラー汰は持ち物検査及び身体検査を一の時も掛けて行われる。其れだけの時間を掛けて行うにも其れと持ち物検査を行うにも理由があった。
(此処では散々銀河連合に襲撃を受けた歴史がある。其れ故に僅かな瞬間でも僅かな可能性でも逃さないように徹底している。都市機構が発展している所だけが検査を徹底しているとは必ずしも限らない。けれども、都市機構の発展はより高度な要求を求めるらしいって姉ちゃんから教わった。だが、此処だけは例外で頻繁に銀河連合の襲撃を受け続けて来ただけに再び発生するのを防ぎ止めたい意志が表れている。そんな事が果たして正しいのだろうか?
 後は持ち物検査で引っ掛かる事があったな。理由を尋ねると大樹型銀河連合には果物や作物迄もが銀河連合と化すそうだ。其れと同様に拾って来た物の中に銀河連合が潜んでいる可能性がある。やっぱり銀河連合は俺達とはわかり合うような存在には成りえない。こうして俺達の心をどんどん余裕をなくさせる行いは一体何処に和解する部分があるのか全然わからない!)
 子供ながらに最高の結論に酔い痴れやすいのは遠過ぎる過去だろうと変わらない。誰もが其の時に発案した思想を最高の者として疑わない。だが、蓋を開けて披露してみれば其れは己の中に於ける井の中の蛙族の発想でしかない。そしてある者は打ち砕かれ、ある者は正しくない事を認めずにより情けない意地を張り、ある者は其れを助言と受け止めて依り多面的な最高の結論を目指してゆく。翔和は未だ、三つ目に至っていない。
 やっと終わったあ、さあ観光だっあ--コケラー汰は観光しに旅をしていると勘を違えていた。
「俺の旅はそうじゃないだろうが!」

 午後三時零分一秒。
 場所は中央地区酋長邸一階酋長室。
 酋長邸は改築こそされるもあくまで壊れそうな木材を替えるだけで昔も今も同じような構図。其の為、最新に成ったのは木材建築だけで最新機器といった代物は導入される事はずっと無い。
「此処かあ……ああ、あれが現在齢六十を超える現酋長なのか」
 やあ、死っぬ寸前のわしに何の用か……地同の遺しった宝よ--齢六十にして一の月に成ったばかりの今も杖は持つ物の、其れ以外は歩行に支障がない武内猿族の老年であるゴーリロルマ。
「何処が死に掛けだっち」
「何て言ったかえ?」但し、年齢に比例して耳が遠い。「わしは十の年より前から部屋中に響く大っきな声でないと聞っこえんのじゃ」
「まあまあ」コケラー汰に代わって翔和は代表として部屋中に響く声で話し始める。「ホオオオ……まだ生きそうな雰囲気だ。だからーさぞ俺達は疲れが溜まる気がしてまして!」
「そうそっう、其れだ其れだ。ホッホッホ、最近の若っい者は声が大きっくて頼もっしいのう!」
 いきなり若造批判かっよ、全く此っれだから最近の老者は--意趣返しをするコケラー汰。
「別に若いとか老いているとか関係なああい。俺は此処に来たのはー」翔和は早速次のように自らの内を白日の下に晒す。「死に場所を求める為だあああ!」
「耳が潰されっちまう……って何だってええ!」
「成程成程……まあ何時の時代の若造も良く陥っりやっすい事柄じゃのう」
「俺は他の奴と異なる……姉ちゃんやお袋を死なせてしまった己が情けないんだああ!」翔和は涙を流しながら己の至らない部分を告白してゆく。「俺が強ければあのサーバル族のおっさんも助けられたんだああ。俺がもっと強ければ姉ちゃん達は--」
 自惚っっれるな、若造うううう--ゴーリロルマは邸宅全体を揺らす程の怒鳴り声で二名を驚かせる!
「……爺さん、何て迫力だ」
「オホン……褒めったか聞っこえ辛いが、お前さん如き悩っみは確かに他の若造に比っべれば死にたく成っる程の悩みじゃろう。身内の死なんぞわしなんか若い時はどれだけ悔いったか覚っえている位じゃ……じゃが、そんなの大した事ではない!」怒り心頭かと思えば次の瞬間には大笑いを始め、次のように語り始める。「ガッハハハハハ……誰だって己を神様みたいに思っちまうもんじゃ。お前さんだけが神様と誤って解き明っかすと思わん事じゃ。だがなあ、死んでいった者は果たしてお前さんの仕業だと思って死んっでいったか?」
「ウグッ!」
「じゃろうじゃろう、彼等は己の果たっすべき役割を知って果てて行ったのじゃ。全く其の感じじゃあ如何やらどいつも此奴もわしよりもまだまだ将来性のあっる若造共じゃろう。全く困った奴等じゃろう、又わしは奴等の命を吸い上っげて長生きしってしまうのかあ?」
「爺さん、其れでも……わかっていても俺はああ--」
 下を向くな……命を託さっれたのならその命の分迄生きったら如何じゃ、其れが恩返しに成るぞ--其れを聞かれた時の翔和の中で何かが芽生え始める。
「ど、如何しました……急に何か唖然としっているような顔をして」
「あ、ああ」翔和は今の状況が何なのかすっかり忘却していた。「俺とした事が……俺自身が何の為に此処へ来たのか忘れてしまった」
「まあ悩みは此処でじっくり解決しっても良いし、或は息急っぐのも構わない。若いころのわしも無茶ばかりして死に急いでも居た。じゃが今では生きっる事の楽しみの方が勝っている……そう思うと此の先に死が待っつかも知れん。全く運命とは恐ろしく出来が良くなっいのう」
 ああ、そうだな--翔和は此処で次のような事を考え始める。
(此の集落にあるという埋葬地に行ってみよう。其処で俺は……俺の行く末を決めなければ!)
 其れから翔和とコケラー汰は一の日も酋長邸で他愛もない会話を楽しみながら夜を過ごしてゆく……深夜、密かに外に出る翔和を除いて。

『--地同翔和の言い伝えを決定付けたのは此の事件だ。其れは偶然にも川内集落で
起きた事件。新銀河連合埋葬地にて流れ星が落下し、封じられた銀河連合は表に出た。
当然、駆け付ける軍者達に油を断つ余裕もない。なのにそいつらの強さは南雄略でしか
見掛けない逸れ銀河連合と同じだけ凄味を持つ。其の結果、翔和が駆け付けた時には
派遣された凄腕及び凄脚の軍者達は骨だけに成っていた。翔和は其の光景を見て
怒りで震えていただろう。話を聞いた私でさえも当時の翔和の瞳は怒りで血管を浮かび
上がらせて少し心配してしまう程だった。彼は心境について詳しく語らなかった。語り
たくなかったのだろう、あの時の状況を。だが、後で禾野コケラー汰から聞かされた。
 其れがコケラー汰を通じて地同翔和の伝説を決定付かせる事も、な。其れは--』

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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