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一兆年の夜 第百二十話 天地相為す 地同翔和は旅立つ(五)

 三月二十六日午後九時二十八分三十二秒。
 場所は武内大陸波多八代はたやしろ地方巨勢こせ山標高成人体型二千五百五十北側。
 其処は最も土砂崩れの激しい立ち入り禁止区域。例え現地者であっても其処だけは立ち入りを許可されない。当然、派遣された真古天神武軍者に守らせてでも其処に立ち入らないように現地者は注意喚起を促す。
 そんな場所に二名の馬族と鹿族の区別が付かない者達が入っていた。
「目を逸らした隙に入ったのは良いけど……止めようっですぜ!」
「此処にいるかも知れないんだ、足利きの銀河連合が!」
「ま、まあ立ち入り禁止とも成っれば奴等は其れを有難く思って根城としまっすけど……良いですか、翔和様」コケラー汰は前にもこんな事があったのを説明口調で伝える。「ソフィス地方にあるあの言い伝えの秘境を探しって俺達は一度死に掛けたんですよ……其れで一の週は地元の高床寝床で寝る生活だったんだあでっす。なのに突然脱走っして然も今度は更に命の危険が伴うこんな場所に挑戦するなんて……一体正気は何処に行ったんでっすかあ!」
 つかさあ……何でお前迄此処に来てんだよ--翔和は勝手に付いてくるコケラー汰に疑問を投げる。
「そそりゃあお互い、お互いに後がないんでっせえ」
「何を言ってるんだ。俺に比べれば日常の些細な話じゃないか。帰りを待つ奴等の為にも、こんな旅に付き合う必要性が何処にあるんだよ」
「ありまっせ。何せ翔和様が死にたがっているのを命懸けで止める事に何の意味無きだと言えっか!」
 クウ……言いたい事を言いやがって--聞きたくない言葉を突き付けられて先に進む事で話を其処で遮った翔和。
「あ、待ってくだっさあい!」
(全く過ぎた保護から抜け出したかと思えば今度は姉ちゃんに代わる鶏族の情けない雄かよ。全く俺も精神だけはまだまだ子供か……何時まで経とうとも親が死のうとも子供は子供か。子供が大人に成る迄、まだまだ先に成りそう……なのか?)
 心の中で十分過ぎる程自覚のある利口な翔和。例え強く成って行こうとも精神面だけは大人に成り切れない翔和。其れでも認めまいと危険が迫る場所へと謀り無く進む。姉と母を死なせたという後の悔いは彼を其処迄死地へと追いやるのか? 後で悔いても仕方のない話なのに其れでも割り切れない心が死地へと向かわせるのか?

 午前十一時二分十八秒。
 場所は標高成人体型二千五百六十七中央部。
 傾斜も緩やかで休憩地としては十分な木々の生い茂り、数多の栄養食材が今も眠る此の場所で二名は休憩を摂る。
「ウウム、此れっだ!」其れでも生命にとって食べられる食材とそうではない食材が其処にはある。「ウウム……此れ、いや何か迷うよっなあ」
「まあ良いじゃないか。口に含めるならどんな茸だろうと草だろうと俺は食べる」一方の翔和は区別も付けずに其の場にあった物を全部もぎ取る。「其れに銀河連合に依って死ぬよりもこうして自然に生えた物を喰らって死ぬなら本望じゃないのか?」
「俺は死にたくないんだっよ!」
「どっちだよ、此処迄諦めずに付いて来た奴が今更に!」
 それはっな……って翔和様、背後にいい--剥き出しの瞳は恐るべき気を放ってコケラー汰を尻餅させるのだった!
(やっぱり居たか……死んでやりたいが、俺の死に方は戦いでしか意味はない!)
 其れは決して指揮官型でもなければ百獣型でもない。只の猿型。だが、只の猿型を相手に翔和は技術の面で苦戦する。斬撃は悉く見切られ、当たったと思えば僅かな密度を見極めて躱されるという始末。翔和の心に焦りが出ると、瞳が一瞬だけ青みを帯びて来る。そして戦う側だけじゃなく、大人しく其の場に留まって戦いを見守る側も焦りを見せる。コケラー汰は翔和の強さを知っているばかりに今度の相手は翔和が一瞬にして趨勢を決めた液状型でもなければ此処に至るまで現れた数多の銀河連合でもない。何処にでも居そうな銀河連合が単純に強さを磨いた姿なのかも知れない。
(新仙者の力でケリを付けるべきか……だが、あれは同時に俺自身の体に大きな重荷が圧し掛かる。タゴラス市でやった時に僅かだが、血の色をした尿と便が出たんだ。歴代の新仙者も姉ちゃんも此の力を使う事に躊躇いがあったのか……だが、躊躇っていては猿型を倒せない。一気に使用を--)
 やはーり其処に入ーったな……後で説教ーだ--齢二十五にして七の月と九日目に成る武内犬族の青年が四足歩行用雄略包丁を装備した状態で猛速度で猿型に接近!
「其処の犬族のおっさん、そいつの見切りはあんたの速度じゃあ直ぐに--」
「僕をー誰だと思ったかー、武内犬族ーのワンダルーダと呼ぶんーだああ!」ワンダルーダと呼ばれる軍者の姿をした生命は間合いに入る寸前で更に速度を上げて猿型が見切る間もなく、左眼を深く貫く一撃を与えて倒した。「だから此の程度の銀河連合に苦戦する道理はない!」
 翔和は驚く以外になかった。生まれ持った力を駆使しなくとも銀河連合を倒すには強く成るしかない。サーベンに続いて強い生命を彼は見えた!
(同時に俺は自分の熟していない部分を思い知らされる。あれが世界か……サーベンのように姉ちゃんのように強いと思える生命が此処に居る。俺はまだまだ悔いるしかない……強くない己を!)
「凄いって、あの猿型をあんな一瞬にっと!」
「一瞬……何ー、僕は普通に仕事を熟ーしただけだ。其れよりもー」ワンダルーダは翔和達の方に顔を向けると説教を始める。「此処ーは立ち入り禁止区域ーだ。長く成ーるが、如何しーて此処は立ちー入ってはいけないのかちゃんと言葉にして諦めて貰ーいますか!」
 膝を付いた翔和はコケラー汰と共にワンダルーダに引き摺られながら説教を聞かされる事と成った。立ち入り禁止区域に入る事の謀り無き事と如何したら其処迄強さを得られるかの二点揃って!

(俺はまだまだ彼等に及ばない。世の中には俺の想像を超える強い生命が居る。そんな彼等が最初から強い者達だったとは限らない。けれども俺からすればみんな強い奴等だと思ってしまう。俺以上に鍛練を重ね、俺以上に多くの銀河連合と戦い抜いた。そんな広い世界の中に俺だけ如何しているのかって思える程に情けない。
 尚、ワンダルーダとは此れを機に二度と顔を合わせた事が無いな。其れでもあの猿型を一瞬で倒すワンダルーダは今でもサーベンや姉ちゃんと同じ位に越える事が難しい高い壁だと思っているのさ。情けない事に俺は未だに彼等を越えた気がしない。そう思う位に彼等は強かった。一方で俺は強いと思える実力に届かない。まだまだ自分の強さに自信を持った事が無いな。
 だが--)

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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