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一兆年の夜 第百二十話 天地相為す 地同翔和は旅立つ(三)

 十一月百十九日午前四時一分十八秒。
 場所は有徳地方新銀錯銘大刀ぎんさくめいたち集落。
 翔和と翔真は酋長宅より下にある藁小屋で一時を過ごしていた。
(結局、逸れ百獣型の行方を探っていた姉ちゃん達の会議はほぼ時間を使っただけで終わりそうだ。何せ後少しで俺は此処を離れないといけない。ソレイユと別れるのは辛いけど、俺は此処で暮らす為にやって来たんじゃない。姉ちゃんが如何しても此処を訪れたい為にやって来た。余裕があれば南雄略の悩みの種である逸れ銀河連合を少しだけ懲らしめる……其の程度でしかない。
 けれども俺は昨の日に一昨の日より前よりも全身の筋肉に堪える修業を受けた。サーベンから受けた修業は俺がやる自己鍛錬よりもきつく、そして為に成る。全部を覚えろってのは流石に理無きだろう。俺は学習能力がない生命だからな。其れでも何処かで俺はサーベンの教えを忠実に守る日が来る。そう思い、再びサーベンの修行の足伝いしようと考える)
 等と誰に向かって思ったのかわからない翔和は目が覚める。最後の日に彼はサーベンにもう一度修業を付けて貰おうと外に出た--するとサーベンの肉体が翔和とぶつかる!
「イデデ……ってサーベン!」
「グブッ……ハアハアバアル」既にサーベンは右前足しかなかった。「まーまだまだ、熟し切れて、いないバアル」
「尻尾迄歯で抉り取った箇所が……やったのは、あいつか!」翔和は生まれて初めて勝てないと思った銀河連合と遭遇する。「あ、あ、あれは……俺みたいな、や、や、奴でも、あ、あんなの、あ、ありなのか!」
 翔和が目にするのは例の逸れ銀河連合。然も偶に出て来る能力の高い百獣型。其れも逸れ銀河連合と呼ばれる種類だと更に能力が膨れ上がる。そんな相手にサーベンは死の寸前迄追い込まれる。
「こー此の傷じゃあ、もう、助からん、バアル」
「もう喋るな、直ぐに足当てが間に合うから其れで助か--」
「そー其の前に、言ってやるバアル。こー此の先は--」
 其れ以降、サーベン三世は百獣型に喉を貫かれて事切れた。翔和は恐怖の中に悲しみを、そして銀河連合への怒りを燃やす……だが--
(いけない、今の侭では勝てない。サーベンは俺も認める強い生命だった。二足歩行にはない四足歩行を誰よりも理解したサーバル族の雄だった。俺よりも遥かに高い所に居るあいつがあのようにやられたら……俺は!)
 翔和は怒りの儘に行動するには自らの能力に自信がない。自らを分析してそう判断する程に今の翔和は臆していた。其れだけ、命を投げ出す覚悟が足りなかった。足りないが故に翔和は動けずにいた……仇を討つ為の行動に出られなかった。そんな時にある者は突然、抜身の神武包丁を百獣型の左眼に向けて投擲!
「全く、大事な翔和君を……其れに僕も認めるサーベンさんを、許しませんよ」投げたのは、瞳を蒼く輝かせる翔真。「私が……みんなの仇を取るんだからね」
 其れは一瞬にして翔真と逸れ百獣型を此の場から消し飛ばし、そして……事は一の分より後に終わった。
「ね、姉ちゃん」俺は追う事も出来ずに尻餅付き、其れから我慢の箍が外れて人生で最もやってはいけない事をやってしまった。「ハハハ、漏らしたよ……こんなの、こんなの!」
 翔真様が何か凄い速度であのお姉ちゃん達の仇であるあいつと……って如何したのですカアア--其れを目撃するソレイユ十八代。
(以降、姉ちゃんとは二度と会う事はなかった。何故かを説明する前に以降の俺について少しだけ触れるさ。其の後気絶して五の時かな、俺はソレイユに介護されていた。あいつは俺が恥ずかしい事をしたのに其れを咎めなかった。俺が力も及ばないままにサーベンを死なせたというのに……あいつは俺を許してくれた。だが、俺にとっては辛かった。だから俺はあいつの胸に埋まって泣いた。強く成りたい、強く成ってサーベンみたいに死んでゆく生命が出ないように銀河連合から恐れられる生命に成ると誓った。俺がサーベンの魂に報いるには其れしか道がないと思った。強く成るしか道はない。だが、やっぱりこんな所で何時迄も居たって真の強さは見付からない。ならば……俺は姉ちゃんの亡骸が浮かぶあの海に出よう、そう思った!
 そう、姉ちゃんは確かに強かった。あの逸れ百獣型を激闘の末に倒してしまう程に強かった。だが、姉ちゃんは死んだ……背後から一突きされて!)

 十一月百二十日午前零時五十三分二十一秒。
 場所は断崖。其処は翔真と共に登ったあの断崖。
(荒れている。姉ちゃんの魂を吸い上げるように荒れている。逸れ銀河連合との戦いで姉ちゃんはまんまと静寂な海に誘われ、やっとの思いで倒した百獣型に対して何かを使用していた時に……幾ら話を聞いたってあの姉ちゃんが死んだという実感が湧かない。だって姉ちゃんらしき生命の亡骸が浮かばないんだ。海に沈んだまま、だぞ。俺には未だに姉ちゃんは今も生きているんじゃないかって思えて来るんだ。何でも出来る姉ちゃん、ずっと姉ちゃんの背中を追って来た俺。背中を追いたいが為に旅に出たのに保護が過ぎた姉ちゃんは俺を決して離さない。今もこうして何処かで姉ちゃんが見ている……なのに、なのに!)
 やっぱり逃げるのね、翔和様--ソレイユは既に翔和の心を読み取っていた。
「来るな、ソレイユ。雄の道に雌は付いて行かない物だ」
「でも荒れ狂う海に投げ出しても待ち受けるのは耐え難い死です」
「かも知れない。でも姉ちゃんはまだ苦しんでいるんだよ。海の中で今も……そうだ、だから俺は姉ちゃんを助ける為に、助ける為に!」岩肌に両手を付けて凭れながら泣き始める翔和。「クソウ、何で最後の瞬間だけ……俺から離れるんだよ。ずっと俺がたった一名で鍛練をしている時だってサーベンを呼び出すなんて甘い事もしてきたり、其の前なんかソレイユを代わりに行かせて気持ちの共有をさせようとしたり……なのにこうゆう時だけ、こうゆう時だけえええ!」
 ……翔和様、やはりわかっていましたか--ソレイユは泣き崩れる翔和を優しく抱擁する。
 其の抱擁に甘い物はない。雄の誰もが雌に縋りつくように成者より一の年も早い翔和が咽び泣きするのに其れをしないのは余りに達観し過ぎる。故に翔和は胸元で泣き続けた……一の時もずっと!
(此の後考えを改めたって……其れはない。此の後俺は海に飛び込んだ。荒れ狂う海の中を飛び込むのはソレイユが止めるって? 其れは有り得ない。ソレイユが止めたのは荒れ狂う海の中であってやがて収まり始める海迄は止めに入らない。俺の旅を認めていたのさ。何故なら彼女は止めたって何れは飛び込む事位、直感で気付いていたのかも知れない。或は……いや、何でもない。其れは後の話だ。
 こうして独り身に成った俺の旅は……始まる!)

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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