FC2ブログ

一兆年の夜 第百二十話 天地相為す 地同翔和は旅立つ(二)

(南雄略は度々、天同家に救われた雄略大陸だ。今度も天同家に救って貰おうと懇願する気が一杯だ。俺はそうゆう所は勝手にやっていれば良いと思っている。何故かと言えば誰かに助けを求める生命程、自力に自信がない証拠ではないだろうか? 後で誰かが助けてくれると心酔し切っている生命程、努力が足りない証拠じゃないか? 俺はそう思うんだ。だから俺は観光し終わったら直ぐに出て行くつもりだった。歴代の天同家は仙者の力を行使して助け過ぎたんだ。結果的に彼等を他力本願な生命にしてしまったんだってな。だから俺は此処を出て行くつもりだった。
 しかし--)

 十一月百十七日午後十一時零分五秒。
 場所は雄略大陸南側草香幡梭姫くさかのはたびひめのひめ川。
 其処では毎の年の冬に掛けて戦没者追悼式が開かれる。今日は其の日よりまだ遠い。そんな場所でまだ使用されていない神武包丁を鞘に納めながら泳ぐ生命が居た。地同翔和である。彼は泳ぐ事で万が一にも自力で海を渡る為の鍛練をしていた。若い頃より自らの才能を並外れた鍛練を以て埋め合わせて来た翔和。自らの心の迷いは鍛錬が払拭してくれる。自ら気持ちが沈めば鍛練が浮かしてくれる。鍛練とは昭和にとって自らの拠り所……同時に南雄略の他力本願な現状に目を逸らす事にも繋がる。
 旅を始めたのも今の侭では自分の殻を破る事が出来ない。外に出ないまま、中で生温い生活をするのが耐えられないが為。他にも理由は確かにある。其れでも翔和にとって南雄略も故郷と同様に耐え難い環境であった。
 現在、彼は流れに乗って川下に泳ぐ鍛練と流れに逆らって川上を泳ぐ鍛練の両方を繰り返す。前者は柔軟性を鍛える為の鍛練であり、力みを軽減する。水泳初心者は川上から川下に向かって泳ぐのが一番とされる。一方で後者は逆に筋肉の重荷と成る鍛練。全身の筋肉を絶え間なく使用し、川上を目指す以上は水泳上級者は如何に向かって来る流れに逆らえるかに掛かる。然も力めば良いだけではないのは川下に向かって泳ぐ鍛練と同じ。常に向かって来る流れを己の物にするかに懸かる……だが、若い翔和は未だに理論でしか証明されない循環法を会得するには程遠い。
(チ、僅か成人体型五で川上に向かって泳ぐ鍛練は更新されない。息が続かないし、何よりも全然進まねえ!)
 然も川の流れは雨の日だと特に激しく成る為、降水量に従って川下に向かう速度は急上昇し、勿論逆泳もより筋力を要求される。其れでも翔和は此れを南雄略に来て二の日も続ける。然も者目を避けるように。だが、既に翔和が秘密の鍛練をしている事は知られている。其の内の一名は声を掛ける。
「いけないよ、夜中に鍛練するのは」
「あんたか、鍛練するかしないかは俺の自由だ。姉ちゃんか、あんたは!」
「やっぱり自分の姉が大きな壁だったのね、君」
「当たり前さ。姉ちゃんは何でも出来て然も何だって少量の鍛練で直ぐに身に付けて行く。俺はそんな姉ちゃんが羨ましいんだ!」
「わかるよ、私もそうゆう頃があったんだ」
「お前にわかるのかよ--」
 わかるって、よおっと--ソレイユは出会った時と同じように溜め込んで放った右人差し指で翔和の額を打ち込む。
「イデエ……又、其れか。俺を弟みたいに扱って!」
「だって私には一名も雄兄弟が居なかったんだよ。居たとしても五名もの雌姉妹だけ……でも全員死んじゃった、逸れ百獣型に食べられてね」
「其れ、昨の日に聞いたぞ。たかが逸れ銀河連合位は二度も天同家に助けられた時に学んだだろうが。もう俺達に--」
「特に自慢のソレイユ十七代が……私の四番目の姉が挑んで、後一歩って言う時にあれは更に強く成って!」
「そんなに強いのか、ソレイユの姉ちゃんは!」
「うん、今の翔和よりも遥かに……だからこんな修業で然も今みたいに雨降った中で川上を成人体型五迄しか泳げない翔和では四番目の姉である先代ソレイユにも手も足も尻尾も牙も出せないよ」
 上には上が居るのか、全く好かんぜ--其れ故に翔和は歯痒い思いを募らせる!
「でも銀河連合との戦いは何方が倒れるかの戦いでしょ?」此処でソレイユは強い者が勝つとは限らない事を話す。「だから一名で勝てないなら二名及び三名以上で何とかすればあの逸れ百獣型だって勝てるのです」
「まあ確かにそうだけど--」
 いーいや、其れが出来たら苦労しないバアル--齢三十四にして六日目に成る雄略サーバル族の中年が二名の所に駆け付ける。
「誰だ?」
「わーわしの名前はサーベン三世だバアル。全ーく、困った生命だバアル」
「やっぱり良くわからんな、苗字がない理由が」
 そー其れについては同感だバアル--苗字がない為に先祖の起源を探れない満足し切れない物を持つ油は既に抜け始めたサーベン。
「でも良いじゃん、一々苗字言わなくても」
「わー若い奴は其れで良いかも知れんが、わしみたいに知的で歳を摂ると此れが如何にも……じゃなくバアル」サーベンは何しに此処へ来たのかを何時も忘れる生命。「こー此処で何をしているんだ……子供達は寝る時間だバアル!」
「何だ、ひっ捕らえに……うわあ!」
「逃げても意味ないよ、翔和様。サーベンは私の自慢出来るお姉ちゃんの師匠でもあるから!」
 サーベンが二名を背中と口で捕まえて集落に送り返そうとした瞬間……「こー此の気配……済まんバアル!」サーベンは二名を川に放った--直後に猪型と猿型がサーベンの急所を狙って木陰から飛び込んで来た!
「あれは……いけない、サーベンが!」
「わーわしがバアル?」だが、サーベンの強さは感覚を完璧に見極めてから双方の急所に鋭い爪と牙を突き刺して瞬く間に戦闘を終わらせた。「かー悲しい劇場を迎えるのは子供達にはまだまだ早いバアル!」
「す、凄い。何て鮮やかな決着だ!」
「うん、サーベンは既に南雄略では頂点に立つサーバル族の雄です」
「そーそうゆう事だバアル。まーまだまだわしは現役を続けるぞバアル!」
「外の世界ではまだまだ俺の知らない事が多い訳か……面白いな、此れは!」
 コラ、サーベンの言う通り子供は寝る時間です--溜めた右人差し指で翔和の額を打ち込むソレイユ。

(此の後に俺はサーベンから戦いの手解きを受けた。我流ではわからない実戦に必要な方法を一から百迄寝る時迄叩き込まれて精魂尽き果てたな。間違いなく奴は姉ちゃんよりも強く、そして手強い……いや足強い。あんな生命が南雄略に居たのかと思ったら恐ろしいな。だが、サーベンから手解きを受けたのは其れが最初で最後だった。サーベン三世みたいに強いサーバルでも……ソレイユの自慢出来る姉ちゃんを喰らったというあいつの前では--)

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
FC2カウンター
リアルタイムカウンター
現在の閲覧者数:
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
Powered By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR