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一兆年の夜 第十八話 鬼ヶ島を行く(五)

 八月十六日午後五時零分二秒。
 場所は東物部大陸東物部地方麁鹿火あらかい海岸辺。
 物部アラ太、天同棟一、藤原シュギ朗、蘇我ウキ麻呂は全長成人体型三以上ある
応神木製の小舟に乗った。
「最大五名は乗れるようになってるな」
「当たり前だっろ? 応神製の木は頑丈だっぞ!」
「とーいうかーどうしーてウキ麻呂ー君が僕達ーと一緒にいるーわけ!」
「どうせ! 感化されて! 俺達と! 一緒に行きたく! なったとかだろ!」
「さすっがシュギ朗のあんちゃん!
 アラ太のあんちゃんはもう少し柔軟になっらないと--」
「どのー口がそれをー言う!」
 アラ太はウキ麻呂がお供になる事を認めないようだが--
「別に良いだろ! ウキ麻呂は自分の意志でこの天同棟一と共に行くのだから!」
「おやおんやあ。どうやんやらここはウキ麻呂殿に軍配があがっとんようやだね」
 齢三十九にして一の月と十日目になる鬼ヶ島亀族の船頭はやんわりと采配を
下した。
(うぐーぐ! 僕はーウキ麻呂がー好きじゃなーいのに!
 仕方ないーか。棟一様ーがそう仰るのーならー!)
 アラ太は心の中で降参した。
 そうこうするうちに船頭は筏の尻部を口で咥えてゆっくりと漕いで行く。

 八月十七日午前四時一分八秒。
 場所は麁鹿火海。岸辺との距離は成人体型百くらい。
 アラ太は日がまだ顔を出さぬうちに目を覚ました。
(気にーなるよー。棟一様はー何の目的があーって鬼族ーだけの島ーに行くのー
かな?)
 そう考えている内に船の正面を見ると船頭が寝ていた--それに気付いたアラ太
は慌てて筏を咥えた!
(なー、な、何で僕達がー寝ていーる間に眠るのー!
 事故がー起きたーらどうーするつもりか!)
 筏を操る動作を行う--使い方を習い熟さないのか思うように動かせない!
(うーぐう! こ、こんーなにも重いなーんて!
 とーいうーか変な方ー向に筏がーあああ--)
 思わず筏を離してしまった!
「あぶねええ!」
 海に身体が浸かる寸前で誰かの右手は筏の尻を掴んだ!
「むー、棟一様!」
「慣れない事をするな、アラ太殿!」
 棟一は素早く筏を中に乗せた!
「お、起きーてたんでーすね」
「起きていたというよりは寝つけられないんだ」
 棟一の視線は日が出る方向にあった。
(ぼー、僕と同ーじ?
 いーえ、棟一様の事ーですから何ーか異なーる理ー由かも知ーれない!)
「俺は俺自身に慣れている。そうはいい。
 だが、他者自身には慣れない!」
 アラ太の考えている事を察知したのか、棟一は語り始めた。
「昔々あるところに物真似に優れた一族最後の雄がいました。そいつもまた一族
同様、他者の口真似をするのが大きい程好きだな!
 だが、そいつはとある高貴な者と出会う事で代々受け継がれてきた物真似に
初めて逃げる事を考え始めたな!」
 棟一の顔は無数の皺が現れ始めた--自らの穢れを吐き出すので精一杯の様子
だ!
「出会った当初は物真似師自身は高貴な者を快く思わなかったな。
 何ていうか、何かを悟るような口調と良い、『穢れを一身に受け止める!』だの
偉そうな事ばかりを言ってる所と良い、何気に顔立ちの端正な所もそうだな!
 まあそんな満たされない事は三の日が経つにつれて友情に変わったもんだよ!
 だけど遅すぎる友情だった!」
 棟一はそれをいうと顔をやや下に向けた--涙を流さないように。或いは涙を見せ
ない為に!
「そ、それーでどうなーりましたーか?」
「高貴な者は死んだよ! 銀河連合に食われて……」
「そ、そんなー! そんーな話はー悲しすーぎますね!」
「こんなのはかつて鬼ヶ島へと逃れていった大山ニャ朗の話とどう大差がある?
 それにその後、物真似師は高貴な者の遺志を伝えるべく鬼ヶ島へ向かってるんだ
よな。
 って、あ!」
 棟一は今までの苦悶の表情を吹き飛ばすかのように顔中冷えた水分が浮き
出る--正直すぎる言葉を言った事で自分がどうゆう言葉で責め立てられるかを
覚悟する汗だ!
「出会ーうと良いでーすね! そーの物真ー似師といーう御方に!」
 アラ太はそれでも気付かない!
「ま、まあそうだな。そ、そいつは鬼ヶ島で……もうこの話は中断だ!
 続きは鬼ヶ島に上陸したらゆっくり話をするぞ! その時はシュギ朗殿や
ウキ麻呂殿と一緒にな!」
「出来れーばウキー麻呂君ーの席ーを外すのーはどう--」
「いくら好かない相手でも勝手に外したら神様に申し訳つくか?」
「うーっ!」
 アラ太は棟一の正論に反対の論理を思いつかなかった!
(ただー何となくー棟一様の目的ーがわーかった気がすーる!
 もしかーしたらそーの高貴ーな者とー同じようーに何か重大ーなことーを提案しー
に来たのかーも?)
 鋭いのかそうでないのかよくわからないが、アラ太は未だに棟一の正体に気付か
ない!

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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