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一兆年の夜 第百十九話 日は又、昇る(七)

 午後十一時五十三分三十二秒。
 場所は拠点型周辺。
 新楠木傭兵団本隊は前線部隊の予想を覆すように前線部隊の救出を始めた。此れには理由があった。其れは新楠木傭兵団の行動に対して旧楠木傭兵団の前身だったシャーク傭兵団が突如として参戦。其れに依り、北海周辺を討伐するという本隊の戦略は其の侭にシャーク傭兵団が引き継ぐ形と成った。
 如何してシャーク傭兵団が突如として北海への参戦をしたのか? 其の背景には真古天神武がICイマジナリーセンチュリーにして三年前に水中軍を設立。以来、シャーク傭兵団の活動範囲は徐々に狭まりを見せた。本来は海という海はシャーク傭兵団自身の独壇場だった。他の傭兵団との鬩ぎ合いで時として活動範囲一つ一つを見直したり、効率化する場合は傭兵の数を増やしたり、効率化よりも労働時間の削減の場合は他の傭兵団に任せて自分達が得意な所のみを重点的に良くしたりもした。だが、国が水中軍を結成すると成れば話は別だ。特に活動範囲が広く成る毎に傭兵団の役割は時として少なく成る。特に楽な地域はわざわざ私設武装組織に活動させるよりも活動資金がほぼ潤沢な傭兵団が担う方が効率が良い。結果、シャーク傭兵団は北海に乗り込む口実が出来た。勿論、彼等は北海を奪還する予定はあった。けれども其れを実現するには余りにも他の地域を軽視してしまいかねない程に代償が大きい。特に長年銀河連合が占拠していた事は環境を更に脅威な物とする。そんな北海だが、シャーク傭兵団は真古天神武水中軍の活動範囲の広がりを受けて漸く本腰を入れ始めた。其れは同時に新楠木傭兵団が拠点型周辺の銀河連合を討伐する意味を無くしてゆく。
 其れでもやはりシャーク傭兵団が北海に此処迄本腰を入れる理由にしてはまだ強くない。シャーク傭兵団が北海に本腰を入れた真の理由。其れが元々所属していた楠木ホエール成が築いた旧楠木傭兵団を守れなかった悔いから二度と彼等のような存在を出さない為に国への働き掛けをして実現に至った。要するに真古天神武水中軍はシャーク傭兵団直々の要請と楠木ホエール成の思いが彼等に受け継がれた証明でもあった。
 其れは沈みゆくお日様が登り始める事を意味していた!
「待っていてくれ、ヒラメ来達よ!」
「如何やら旧楠木傭兵団のやって来た事は彼等の意志を飛び越えて俺達の力と成った訳だな!」
「魂とは決して意味が無い物ではないのです、ヒラメ来さん!」
「全く姉さんの魂は如何してお節介焼きなんでしょうね?」

 五十六日午前零時十八分三十三秒。
 場所は拠点型大樹型区域。
 第三中隊は激しくも尚且つ命を燃やして戦い続ける。勝てないとわかっていない程に彼等は強い気持ちでぶつかる。其の圧倒的な攻撃力はとうとう大樹型を叩き折る程。けれども、前線部隊が倒したい脳型は其処にはない。故に第三中隊長であるイカロムは二本も足を切断されつつも戦う足を止めない。墨を吐く事も出来ない状態でも戦う足を止めない。
「笑ってしまう位だ。お前達と共通するのは戦いが大好きで大好きで仕方のない所だ。此れ程迄に銀河連合と分かり合える時があるとすれば俺達生命は戦ってでしかわかり合えない。俺はお前達にわかる迄叩きのめすぞ!」
 大樹型は叩き折られた。けれども、銀河連合は大樹型を喰らい食欲を満たしてでも継戦。同胞の命すらも軽々しく扱う彼等は最早分かり合う事すらもまま成らないのではないか? だが、一般生命はそうは思わない。そう思ってしまえば銀河連合と化してしまう。故に戦いが好きな生命でも銀河連合と分かり合えるとエラ会話で伝えてしまうのだ!

 午前一時三十八分五十六秒。
 場所は拠点型拠点型区域。
 其処でも激戦は繰り広げられる。其処では数が攻略前の八百から八に減少する中で其の拠点型にある心臓型を倒す事に成功した第四小隊及び第五小隊。だが、此処も脳型は居なかった。そして包囲される残り八名。第四中隊長サバッツ、第五中隊長ブリ郎は共に死を覚悟して何も持たずに戦おうと決意した。勿論、他の六名も同様である。
「まあわしは此処まで生きただけでも大した物ですな」
「最後は意気込みか、自分には好かない事だ……けれども最後の瞬間位は感情に溺れるのも良いかも知れない」
 老い故に命を惜しまない者と頭脳労働故に慣れない肉体労働を試みようとする者。彼等は経験則と叡智を以って銀河連合の包囲網に抗うのだった!

 午前二時十九分四十三秒。
 場所は拠点型脳型区域。
 第一中隊と第二中隊はとうとう脳型に到達。だが、戦いは此の時刻に成ろうとも終わらない。既に誰もが満身創痍で今にもやられそうな状態で居た。
(脳型は、脳型は見えない攻撃が出来るット。其のせいで何名もの傭兵が外相ない状態で想念の海に旅立ったのかわからないッテ。此れが未知なる力なのか、方法なのかッテ。俺達は結局の所、結局の所は親父達の世代同様に意味もなく死ぬ事は決まっていたというのかット!
 いや、死ぬのは早いッテ。此処迄に死んでいった傭兵達の思いは此の程度ではない筈だッテ。彼等は心から望んでいたット。だから、だから魂は決して死んでは成らないッテ。死んでいないのではないット。俺達が此処で諦めたら、諦めたら今迄の事が全て意味を喪い、失ってしまうだろうがッテ!
 だからさあ、だからさあせめて死ぬ瞬間迄は俺達の肉体に力を分けてくれええット!)
 既に満身創痍且つ決定的な策もない残り十一名。其れでも全生命体の希望として最後まで命を燃やすのだった。
「やりますか、ヒラメ来さん!」
「生きてきた証は、必ず残す!」
 そして、十一名の心の魂は肉体に宿して、再び動き始める。此れを見て脳型を始めとした銀河連合は戦慄を覚える。既に此方の勝ちは決まっている。なのに如何してこうも抗う事が可能なのか? 銀河連合達の心は竦む様に感じられる。奴等はヒラメ来達が決定打を浴びせても倒れない心に逃げ出したい気持ちを表すように全身を振るわす者達が増え始めるのだった。そんな銀河連合達を鼓舞するように脳型は慈悲の必要性もなく、触手攻撃を仕掛ける。
 そんな攻撃が来るとは予想出来ない十一名は最早、対応する力も残されない。普通ならば其の攻撃を一度でも受けただけで終わりは確実だろう……普通ならば!
 其の時、一瞬だけ触手が寸前で止まる--外から新楠木傭兵団本隊がぶち破って駆け付けた!
(あれは……あれは本隊のみんなかッテ!)
 其れは脳型が前線部隊の十一名に気を取られた為に意識するべき外側を軽視した事で起こった出来事。そして、本隊は瞬く間に脳型に無数の銛を指して倒した!
「疲れた、折角の俺達の行動が……そんな御都合主義一つで意味を無くしてしまったか!」
「いや、意味は無くなっていない……ヒラメ来!」
「そうだ、ヒラメ来。お前達の行動が無ければ僕達楠木傭兵団は拠点型を外側から侵入する事も適わなかっただろう!」
「そうです、ヒラメ来さん。貴方の提案があったからこそ僕達は外側に居た銀河連合を焦らずに掃討出来ました」
「全くよ。外でも死んでしまった命もあるの。其れがやがて私達を大いに助けるきっかけを与えたのだからね!」
「其の通りだ。其の証拠に見ろ、俺達を導くお日様を!」
 眩しい、日の出は眩しい物だったのか--其れはヒラメ来にとって忘れ難いモノとして生涯を刻み込む早朝の日の出だった!

(こうして戦いは終わッタ。俺達は数多の傭兵を死なせてしまッタ。だが、だが三つに分かれた内の二鰭に居た第三、第四、第五の中隊長殿はみんな生き残ってしまッタ。如何やら、世界観補正は俺達に味方するように働き始めたのかも知れないッテ。まあ、まあもう十分だッテ。どんなに都合の良い結果であろうとも、あろうとも俺はこう考えるようにしたッテ!
 あの時見た日の出は正に十五の年より前に死んでいった旧楠木傭兵団の魂が浄化した姿……だッテ。死んでしまっても何れ魂を受け取るように俺達生命に宿って悲願を達成してくれるッテ!
 そうだ、そうなんだッテ。俺達は魂に報いたんだよ、だからこそ北海に日が登るのだット!

 ICイマジナリーセンチュリー二百七十七年五月五十六日午前二時三十分零秒。

 第百十九話 日は又、昇る 完

 第百二十話 天地相為す 地同翔和は旅立つ に続く……

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darkvernu

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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