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一兆年の夜 第百十九話 日は又、昇る(一)

 ICイマジナリーセンチュリー二百七十七年五月五十五日午前十時四十三分十一秒。

 場所は真古天神武アリスティッポス大陸北海。
 其処に集うは総勢二万二百七十四にも上る傭兵。彼等の目付きは鋭く、そして後退の二文字さえ甘えと考えるかのように激しい。昂る心を抑え付けるだけのたがを肉体は有していないのか、其れとも彼等全てに肉親を持つが為に仇討ちを抑えるだけの堪忍が此の矮小な肉体の数々には容易くないと言えるのか? 何れにせよ、此れだけは確かである。
(遂に、遂にですよッテ。そうだ、そうだ遂に俺は、俺達は戻って来ましたよッタ。此の昂る己の気を抑えられないように未だに残る子供の心は此の老い耄れの肉体にはな、此の肉体にはな……親父の魂が宿るかのように俺達は帰って来たッタ!
 此の齢三十一にして十一の月と三十日目に成る此のキュプロひらめ族の平ヒラメ様には眩しいぜッテ。こうしてなあ、こうしてなあ親父が眠る此の銀河連合の巣に親父の魂と良く似た俺が戻って来た事が其の証だろうがッタア。俺だけじゃないッテ。此処には楠木傭兵団と縁の深い連中が十五の歳月を掛けて戻って来たんだッテ!)
「何を余所余所しい目線しているんだ、第一中隊長平ヒラメ来」齢十九にして八の月と八日目に成るテオディダクトス鯨族の少年はヒラメ来に話し掛ける。「みんな昂る中で余計な事を考えて」
「あ、副団長殿ですか」
「次期団長だぞ、僕は!」
「でも規定では団長の位は大人に成ってからじゃないと難しいと石板に記されておりますが」
「一言余計だな、全く」
 おやおや、ホエールつら次期団長と第一中隊長のヒラメ来殿じゃありませんか--齢二十五にして二十四日目に成る菅原鮭族の青年菅原サケじんは揶揄い気味に声を掛ける。
「菅原団長か」
「ホエール行よ、わかっていると思うが規定で遺言通りといかなかった。お前はそう考えているだろう、だが違う。俺はお前を遺言通りに団長にすれば親父の後を追うのではないのかと思って団長に指名しなかった。此れだけは覚えていて欲しい」
「今更ですか、団長殿。新生菅原傭兵団は凡そ五の年より前に僕とヒラメ来、其れにあんたを始めとした五十名で始めた傭兵団だ。全ては楠木傭兵団の無念を晴らす為に」
「無念とは少し違うな。あの時は時期尚早も相まったからな。俺達は嘗ての団長であり、副団長殿の父上である楠木ホエール成が援軍頼みを期待していた節を反省して援軍に頼らない自軍だけで押し切る傭兵団作りに明け暮れた。思いだけでは足りない部分を僅か五という長い歳月を掛けて最新武器を備え続けてな」
「死んだ叔母さんの婚約者の無念を晴らすのは俺の性に合わない。一生を遊び鮭として過ごす筈だった。大金を集めて好き勝手に遊んで一生を過ごす筈だった……だが、ホエール行よ」
「又、其の話か。死者の魂は真っ直ぐ想念の海に旅立つのではないのか?」
「ところがそうもいかない。故に俺は俺でもわからない行動に走り、五の年より前の結団式より四の年より前に其処の鮃野郎と一緒に北海制圧を夢見るように成ったのさ」
「其れで凡そ五の年より前に僕がやって来た。団長達が迎える前に」
 心霊現象云々を語るのは俺達傭兵団のする事じゃないな--ヒラメ来はそう言って先程迄の話を終わらせる。
(俺達はな、俺達はなッテ。心霊の類を信じてはいないット。親父が死んだ所で其れ迄と考える現実主義者の類だッテ。でも、でもなあ、なあなあだがッテ。旧楠木傭兵団の残り香を僅かに受け継いでいると認めるッテ。其の証拠に俺は初めて団長の坊やに会った時から何かしらの運命を感じた気がするット。そしてホエール行を始めとした旧楠木傭兵団の関係者が次々に入って行く度に、入って行く度に魂の揺さぶりを感じて仕方がないッテサ!
 まあ、まあ霊的は話は此処迄にしとこうかット)

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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