一兆年の夜 第百十七話 君死にたまふことなかれ(五)

 午後八時三分十四秒。
 アキが決死の突撃をしようとした時、鮫型の背後より誰かが尻尾を噛み付く。そう、第一子だった。母を心配して部屋に向かおうとしている道中で職員の骨が浮かぶのを見付けて血の跡を追って泳ぐ内に辿り着いたのであった!
 ブバババボオボババ--第一子は『母さんはやらせないぞ』と言った!
「お前さんか。だが、其の銀河連合は鮫型だぞ。海豚族の私達では--」
 ブボオオア、ボボベボバボアバ--『俺の事は良いから早く鮫型を倒せる職員を探してここから逃げてくれ』と言った!
「お前さん……死なないでくれよ、其れは一番の親の幸せに在らずよ!」部屋を抜けたアキは念の為、もう一度同じ言葉を告げる。「良いかい、死なせる事は一番の親の幸せに在らずよ!」
「わかっているよ、お袋!」
 二名は共に道を違うように別れた--もう再会しないと心の中で思いながらも!
(何という事だ、ナントイウコトダ!
 私は我が子と永遠に別れを決断している。こんなのは老体にどれだけの苦しみを与えるかわかっているのか、ワタシタチ!
 仮にあの子が生き永らえたとしても私が死ぬ可能性が、タカイワ!)
 二名の思う通り、銀河連合が一体だけで行動するとは限らない--アキの前に梶木鮪型が大きな口を開けながら笑っていた!
「後を追っていたのか、銀河連合は!」
「そうじゃないわよ、お前さんよ!」アキは次のように説明した。「銀河連合が仲間思いな存在ではないさ……たった一名の生命を喰らう為ならわざわざ効率に成らない事だって平気でやるのが奴等なのさ!」
 あうおうなが、おぶぶぶあべ--エラ会話が目につかない為なのか、第一子の伝えたい事は泡の音に変換される!
 だが、第一子の言いたい事がわかるアキ。彼女は次のように考え、そして変換をする!
(『其れでも俺達は食われてやる訳にはいかないんだ』私とテツさんに似たあの子ならきっとそう言うわよ!
 そう育て、ソシテワタシタチノオモワクカラハズレテイッタノヨ。でないと、ワタシハイタイオモイヲシテウンダイミモ……コノヨウニイツマデモムスコバナレデキナイオモイモセツメイガツカナイノダカラネ!)
 アキは梶木鮪型の得物の長さを理解しながらも真っ直ぐ進む--そして、年長者の勘に依り……己の間合い迄潜って見せた!
「折角のモノが躱されたってのは悔しいだろう。振り回すにも魚類水中種族の性質では噛み付いた方が最善の選択しかないって事もね……力の差ってかい。そんな物は戦い好きの雄の考える事だよ!」
 雌は戦いに興味を示さない、格好を気にする性別。其れ故に噛み付き……ではなく、全体重をぶつけた頭突きを鉤木鮪型の下顎にお見舞い--当然、アキの額は血で染まる物の……梶木鮪型の方は下顎の骨を折られて前後左右に大きく揺れ始める!
「如何だい。痛いわ。痛いけど、私でも格上に食い下がる事が出来るわよ!」
「こっちは何とか、倒した」第一子は右鰭の上半分を失いながらもアキの前に姿を現した。「お袋め、銀河連合の脳を揺らしやがったな!」
「そうゆうお前は、親の心配をかけやがって!」
 だな--そう伝えた第一子は揺れ動く梶木鮪型が正常に成る前に背後より頸動脈に向かって噛み付いて仕留めた。
(生き残ったのは奇跡なのか、ソレトモハハノツヨサナノカ。私には息子の評価を少々下に見ていたのかも知れないし、ウエニミスギテイタノカモシレナイ。
 死んで欲しくないという気持ちはあの子を下に評価していた表れなのかも知れない。けれども、オヤナラダレダッテタタカイデムスコガシンダリ……ミウチガシヌノヲコノマナイモノサ。特に戦いでテツさんを失った私にとっては戦いなんて悔しくて悔しくて仕方がないようにしか見えないのだからね!
 上に評価していた点とすればやはり自分の息子はテツさんに似ていて戦い好きであった事。後は両親思いの如何しようもない親離れの出来ない息子であった事。私が子供離れ出来ない事を上に評価していると考えれば其れで間違いがあるのかいな。
 だが、ソノドチラモコノヒヲモッテオワリヲムカエルノダカラサ。何故なら息子はもう、ワタシノヒレカラハナレテシマッタカラサ!)
 そして明くる日はたった一名の老婆としての始まりである……

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Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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