一兆年の夜 第百十七話 君死にたまふことなかれ(四)

 午後七時五十九分四十二秒。
 場所は式場第三区画。
 親族専用の泊まり部屋であり、何時でも新婚が居る第二区画へと向かえる場所。其の区画に言葉を発しない何かが侵入を果たしてゆく。ちょうど其れを目撃した齢二十四にして七の月と八日目に成る仁徳蟹族の女性で式場職員は大声で叫ぼうとした時……其れに喰われてしまった--そう、銀河連合だった!
 其の銀河連合は涙を流し続けるアキの部屋に直泳し、部屋に入ると直ぐに襲い掛かる!
「何だ、銀河連合が!」海豚族のアキは尻尾で鮫型に反撃する。「鮫の姿をしているって訳かい、こんな美味しくなさそうな老婆に襲い掛かるのがあんた達らしいわね!」
 だが、アキも己を理解するだけあって鮫型とやり合っても年齢も体力の面でも勝ち目がないと既に気付いた後。其の為、部屋から逃げ出して鮫型に勝てそうな種族の職員に助けを求める事を考える。
 しかし、鮫型は一度襲い掛かって以降は出入り口前から一歩も動かない。動いても水の流れを何とか御して留まるばかり。アキは抜け出す隙が無い事に次のような考えを浮かべてしまう。
(テツさんを死なせた銀河連合だと想像したい。でも、ハナシニヨルトテツサンハアイウツカタチデシナレテシマッタ。だから其の可能性は無いに等しい!
 じゃなくて戦いの事が好きじゃない私でも少しはいけない事は考える訳だよ。此の銀河連合はたったの一体だけで来ているのではないってなあ。後ろから一般生命が飛び掛かる事を考えないなんて銀河連合の頭にない事を願いたいね。でも、ネガッタッテコイツラハワタシタチヨリモズルイホドカシコイッテナア。だからこそ私はあの子とチヨさんの身に何があったのかって心配に成るのよ。私は先に死んでも構わない。其れが生命という種の流れなのだから……でも、セッカクシアワセイッパイノアノコタチガサキニシヌノハオヤノシアワセニアラズッテネ!)
 誰よりも子供を心配しない親は居ない。そして子供が親より先に死ぬのは一番の親の幸せに在らずである事も然り。だが、年寄りは意味もなく先に死ぬ事を好まない。何よりも歳を摂る内に又、新しい関心事があれば飛びついて長生きしたく成るのが長生きの辛い所。其れ故にアキは次の事も浮かぶ。
(いけない、ワタシ。死ぬ事が恐い。死んでしまったら折角の、シンエイグウゾウデアルカレラノブタイニイクトイウタノシミガハタセナイ。新鋭偶像四名組の『蟹かに挟み組』の色雄兼歌い手の蟹江カニ仁君が良く見える最前列の席が空白に成ってしまう。其れだけを楽しみにした後なら死んだって……いいえ、マダホカニモタノシミゴトガイッパイアルワ。
 ああ、ゴメンナサイテツサン。私ったら未練垂らしい雌だわ。長生きするせいで何でも楽しみを持ってしまったわ。楽しみの数は数えた事がないけど、トクニヤッテオカナイトイケナイタノシミガアルワヨ!
 其れが雄略梶木鮪族の雌で雌運動家の平塚カジチョウ三世の主張したい雌の権利とやらが腹立たしくて思わず議論を申し込んだ訳よ。あの雌に本来あるべき雌雄の在り方を徹底的に言ってやらないと気が済まないのが雌の良くない所なのよ。私はあんなに怒り狂う雌は初めてだもの。絶対に叩き潰しておかないと……言っておくけど、チカラデタタキツブスノデハナイノヨ。言葉の力であの雌の主張する雌の権利とやらを叩き潰してやりたい訳なのよ!
 だからこそ、マダマダミレンタラシイワ!)
 其れは正に死の恐怖を何とか逸らす為のアキならではの精一杯ならざる負えない抵抗でもあった。そう考える事で何とか震える肉体を精一杯御す事が果たせる。アキはそう考え始める。
(ああ、イケナイワ。そろそろ震え始めたわ。私は銀河連合に恐怖しないなんて有り得ないわ。生きたいという気持ちが死ぬという気持ちへの抵抗をする。そうすると生きたい気持ちの反動で恐怖が体全体に震えを齎すわ。恐怖って生きたいと本能が願うから起こる物よ。死ぬ為だったら恐怖なんて起こらない。我が身を投げ出すように死を受け入れるのが死にたいと願う心よ。死にたいと思った時に恐怖なんて起こるかしら? 起こらないわよ、ホントウニ。
 だから、ダダダダ、ガガガガ……フルエガトマママママラナナナナイイイ!)
 震え出すアキを眺める鮫型。其れは好機だと考えて静かにそして気付かぬ内に接近を始める。其れは更にアキの震えを齎す。銀河連合は好機と捉える事はアキには気付いていた。
(まだまだ長生きしたい気持ちがある。けれども、イキタイタメニニゲルノハオイボレノスルコトデハナイ。精一杯の抵抗をしてこそ、コソソソ。いけないわね、フルエエエガガガ。ふふふふはははあはは、アフフフハハハフフフアフハウア……オトナシク、オトナシク!
 今度は未練たらしい事が一切なくなり、シニタイキモチガウワマワリハジメタワネ。此れだから生命の心ってのは御し難いのよね。雄に生まれていたら私は、タタカイバッカリスキナショウブンニナッタカシラ。恐怖しなくて済むのかしら? 最後迄テツさんの生き様を尊重しても雄心をわかり切る事は叶わなかったわ。勿論、アノコノオスゴコロモオナジナノヨ!
 私は雌として、ハハトシテノキョウジヲツラヌイテヤッチャルワ!)
 アキは決死の覚悟で尻尾を前後に大きく揺らして真っ直ぐ突き進む--

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Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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