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一兆年の夜 第百十七話 君死にたまふことなかれ(二)

 五月二十八日午後三時十二分三十三秒。
 場所は西物部大陸応神海東南側。
 結婚式は学者が集う仁徳島付近にある巨大な洞窟で行われる。毎の年に日当たり平均二とコンマ五もの海中種族の新婚が依頼する中堅の結婚式場。だが、華やかな式ばかりではなく葬儀の仕事も行う。そう、冠婚葬祭を専門とした式場。故に喜びには盛大に喜び、悲しい時は静かに佇む。そんな式場である。其処にアキの第一子とチエは結婚する事を決め、盛大に行われた。尚、どれくらいに盛大なのかは敢えて省く。
 アキは喜びと寂しさでさぞ涙が多いと思われた。ところが--
「何でまだ銀河連合を倒す事に執着するんだい!」
「新シャーク傭兵団に入る事に成ったんだ」
「他にも稼ぎが出る所があるというのに何という事をするんだい!」
「お袋、わかってくれ。傭兵団が只単なる戦いだけの集団だったら稼ぎは安定しない。傭兵団は遊戯を提供し、汚れた海を清浄にし、更には海中宅配事業にも鰭を伸ばす慈善集団なんだ!」
「でも戦うのでしょ!」
「勿論、戦わなければ成らない……チエの為にも俺は銀河連合に食らいつかないといけないんだ!」
「いけません、死にます!」
「お袋は如何して戦いを認めないんだ!」
「お前さんに言わなくとも其の理由は承知していると思って出さないんだよ!」
「何時迄も親父の事を引き摺っていてさあ。もう知らん!」
「ああ、お前さんよお!」
 アキの伸ばした右鰭は第一子に届かない。
(わかっているよ、オマエサン。戦いを止められないのは仕方のない話だってなあ。でもなあ、ワタシハタタカイデオマエサンガイナクナルノガコワイノダヨ!
 テツさんが私の前から突然居なくなった寂しさを、アア--)
 お母様--入れ替わるように傍にやって来るは第一子の妻に成ったばかりの花嫁姿が綺麗なチエ。
「何だい、チエさんは何か言いたいのか?」
「お母様が私達の関係を認めないのは、お母様自身がリュウさんを女鰭一つで育てたからですよね!」
「ああ、そうだ。戦いは何時も雄が出るもんだ。そして、戦いが終わると雄は雌の元に戻って来る。そんなのわかっている!」
「ですが--」
「ブウウウオオオアアアアキイイ。わかっているから私に話をさせてくれないか」
 はい--少し間隔を空けてからそう答えたチエ。
「戦いでは必ず誰かが想念の海に旅立つ物さ。其れは決して逃れられないさ。何せ、銀河連合との戦いはテツさん曰く集団戦に落ち着くってね。集団戦だから必ず誰かが命を落とす役割を担わないといけないんだ。そんなのが私の夫だとしたら、何時迄も胸が張り裂ける思いだよ!」
「わかります、お母様。でも」
「何だい、チエさん」
 でも、私は少しお母様と異なる考えを持ちます--チエは真っ直ぐ背筋を伸ばしてアキを見つめる。
「如何してだい、チエさん。夫が死ねば妻が悲しみに打ち拉がれるのは当たり前じゃないか。夫を行かせるんじゃなかったと死なせた事への悔いが残るじゃないか!」
「わかっています。私だってお母様の気持ちはわかっております。でもお母様。リュウ君はきっと逃げる事が恐いから戦いを選ぶのではありません。何時もあの方は言っておりました」
「何だい、子供の隠し事を吐き出すのかい」
「其れはですね--」
 いやだいやだ、其れ以上はもう聞きたくない--アキは子供の隠し事を尊重する性格なのか、逃げるようにチエの前から泳ぎ去るのだった。
(わかっているさ、ソンナコトハ。あの子はきっと戦いを軽々しく思っていた時期の事を今でも引き摺っている事位はな。だが、ソウユウハナシヲシラナイフリヲスルノガオヤッテモンダ。でないと子供の立つ瀬がない。だからそうゆう話は聞かない事にしているのだよ!
 聞いてしまったらあの子は甲斐が無くなってしまう。甲斐がある内に私が寿命で果てるだけで良いのに!)
 アキは式場を後にし、帰りの便に向かって直泳する……

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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