一兆年の夜 第百十七話 君死にたまふことなかれ(一)

 ICイマジナリーセンチュリー二百六十九年四月九十八日午後十一時二十三分五十一秒。

 場所は真古天神武西テオディダクトス海ダクトス村。
 其処にある二番目に小さな洞窟にて齢二十一にして六の月と十日目に成るダクトス海豚いるか族の女性は第一子を儲ける。喜ぶ女性の夫である齢二十七にして一の月と四日目に成るダクトス海豚族の青年。
「見事な雄の子です」
 本当だ。本当に雄の子だ--尚、息遣いが荒いがエラ会話もあって其れは目立たない。
「名前は何と付けよう、アキ!」
「そうね、テツさん。此の子は--

 ICイマジナリーセンチュリー二百七十年四月百五日午前十時二分四十三秒。

 場所は真古天神武西テオディダクトス海ダクトス村南側。
 齢二十五にして六の月と十七日目に成った女性アキは齢四にして七日目に成る第一子と共に海を泳ぐ。
「ママー、ママー」
「おいで、おいで、おいでよ」
 当時のアキには既に夫であるテツは居ない。第一子を産んで一日目に召集を受けて召集から三の日より後に戦死した。其の為、アキは親類の協力もあるとはいえども身一つで第一子を育て上げる。
「しょうらいはママにちからをかすんだ」
「そうかい、お前は其れが夢なのだね。頑張るのだね、お前さん」
 アキは幸せで一杯だった。

 ICイマジナリーセンチュリー二百七十三年四月百十二日午後十時四十八分十八秒。

 場所は真古天神武西テオディダクトス海ダクトス町。
 三の年より前に現町長が町宣言をした事を受けて正式に町と成った旧ダクトス村。町の変化と共にアキ親子の変化も起こる。
「又遅く迄……夜遊びはいけないって言ってるでしょ!」
 齢三十七にして六の月と二十四日目に成る老婆と成ったアキ。叱り付けられるのは齢十六にして十四日目に成る第一子。彼は次のように言い訳をする。
「お袋、喜べよ。今日は銀河連合を七体も倒したんだ。凄いだろ、俺の歯は!」
「又倒す事を正当化するような……そんな子供に私は育てた覚えがありません!」
 右鰭で器用に第一子の左頬を叩くアキ。
「ババアな上に水圧極まるこんな所で俺を……痛くねえから余計に腹立たしい。何で銀河連合をたくさん倒すのに褒めてくれないんだよ!」
「銀河連合が世を乱すのはわかりますわ。でもお前のやる事は銀河連合と何ら変わりがありません。意味もなく、銀河連合を倒す事がどれ程罪深い事かを理解しないと……私は、私は!」
「意味あるんだよ。銀河連合は一般生命に牙を向けて来たんだ。散々、こっちは譲歩したのにあいつらと来たら……そんな事もわからない位にババアに成ったか。もうお袋なんて知らん!」
「ああ、待っておくれや!」
 どの世界に行こうとも一定の年齢に達した子供は親離れとの境目に入る。境目に入るとやがて親が心底愛苦おしい。
(ああ、ハナレテユク。私のあの子が、ナア。ああ、アナタヨ。あの子は、ハナレテユク……私の鰭元からどんどん離れて行く気がするのや。苦しいよ、ウレシクオモワナクテハイケナイノニ。苦しいよ、ワタシノココロガ!)

 ICイマジナリーセンチュリー二百七十四年四月百十九日午後三時四十三分四十四秒。

 場所は真古天神武西テオディダクトス海ダクトス町。
 齢四十一にして七の月に成ったばかりのアキは齢二十にして二十一日目に成る第一子が齢十九にして六の月と九日目に成るダクトス海豚族の恋者を洞窟内に連れて来た事を受けて複雑な心境と成る。
「まさかあんたが私の息子を連れて行くの?」
「認めてくれませんか、お母様」
「あんたにお母様呼ばわりされないね。両の親は如何した?」
「お袋、チヨの親は既に居ないんだ。お袋以上の年齢で既に亡くなった後なんだ」
「じゃあ認めないね。内の倅が取られるのは我慢出来ないね!」
「何て強情なんだ。何時もそうだ……そんなに俺を放したくないのか!」
「放したくば、私が死んでからにしなさい!」
「え?」意外な返答に驚く第一子の恋者であるチヨ。「じゃあ、此の方との関係を認めるの!」
「其の代わり、私の方針には従って貰うから覚悟しなさいよね!」
 アキはチヨを認めない。だが、第一子が惚れる雌がどんな生命なのかを信じたい一心から関係を認めるしかない。
(親は子の自由を制限出来る筈もない。だから、チヨサンノリョウノオヤハハヤクニシンデヨカッタ。比べて私は生き永らえてしまった。だったらせめて私は、ワタシハ!)
 結婚予定日は其れから二十八の日に決定した……が!

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Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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