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一兆年の夜 第百十五話 少年よ、大志を抱くんだ(明)

『--二回目の授業から私は生徒一名一名を覚え始めた。然も明くる日に持ち越すの
ではなく、今の日の中で全て覚えて於く。此れは生徒との付き合いで最も必要な事。他者
と仲良くなるには名前を覚えないといけない。名前を覚えないと生徒の事を知る事も
気持ちに応えてあげる事も出来ない。名前を覚える事は掴み所を見付ける事にも繋がる。
 とはいえ、二回目からは従来通りではいけないと思った私。だが、「恩師」は従来通り
でやれと助言した。理由は簡単で変に格好を付けた事をすれば相手への礼を失する。
歩く時に足を下にして歩くように逆さにして歩くのは誰にも出来ない。四足歩行種族に
逆さまにして歩かせると見えるように此れは自然的ではない。寧ろ、背骨への重荷と
成る。勿論、翼を持った種族でも同じだ。地上に於いて翼で体を支えるなんて出来る訳
がない。「恩師」のわかりやすい例えのお陰で私は二の日も従来通りの授業を続けた。
勿論、名前を今の日の中で全て覚えて於く事は守った。此れだけは「恩師」ではなく、己
の判断だからな。
 二の日、三の日、そして四の日に五の日……普段と変わらない一の日が何時までも
続くと私達は思った。其れは突如として終わりを迎えるとは思わなかった。本物の
「先生」を喰らった銀河連合には既に子供が居た。いや、正確には其の銀河連合は
子供を作るというよりも自らの複製、そう細胞分裂が引き起こす同位体を生み出す
ように全く同じ形をした銀河連合を作り出す事が出来るように。
 そいつ等は八の日より後に突如として私の教室にやって来て生徒達を食べようと
した。其れを止める気が私にはなかった。其の為、私は生徒達に怪我をさせるばかりか
「恩師」を死なせる事に繋がった。私は何も出来なかった。私には立ち向かう勇猛な心
が無かった。あの銀河連合は御器被型で然も死んでも体内にある卵を散布する事で
自らの複製を散らばらせる事が出来る。そんな光景を見て私は初めて「先生」を演じ
切れなくて、生徒達を放っておいて逃げようとしたんだ。私には御器被型と戦う勇猛な心
は無かった。だから逃げようとした。
 そんな私の背後に「恩師」は立つ。私の事を怒鳴った。生徒達が居る前で逃げるような
奴が誰かどころか自分さえも守れない、と。そして「恩師」は私に理想の先生像
見せる為に空気を蓄えて巨大化をした御器被型の複製計二十三体と戦い、そして
果ててしまった。
 私は力が無かった。もう少し私に「先生」を本気で演じようと思えば逃げ出さないだけ
でなく、「恩師」を死なせずに済んだ。もっと演じようと思わなければ生徒の一名を
傷付ける事もなかった。私は軍者達が駆け付けた頃に其の場を逃げ出して行った。
 私には演じる事にまだ遊びを求めてしまったのかも知れない。現実に耐え切れずに
私は--』

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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